第27話 奏功 零戦増強
「翔鶴」と「瑞鶴」それに「雲鶴」からそれぞれ零戦一二機に九九艦爆一八機、それに九七艦攻一二機。
「龍驤」と「瑞鳳」それに「祥鳳」からそれぞれ零戦一二機。
合わせて一六二機から成る戦爆雷連合は米機動部隊を視認する前から敵戦闘機の迎撃を受けた。
それぞれ二〇機余りの編隊が三つ。
そのいずれもがマーシャル沖海戦で干戈を交えたF4Fワイルドキャット戦闘機だった。
この動きに対し、「龍驤」隊と「瑞鳳」隊それに「祥鳳」隊の零戦が真っ向から立ち向かう。
「翔鶴」隊と「瑞鶴」隊それに「雲鶴」隊は九九艦爆や九七艦攻の至近にとどまり、絶対防衛の構えを崩さない。
二倍の数の敵に対して正面から戦いを挑んだ三六機の零戦だが、すべてのF4Fを抑え込むには至らない。
二〇機ほどのF4Fが零戦の阻止線を突破して本隊へと迫ってくる。
やむなしとばかりに「瑞鶴」隊それに「雲鶴」隊が九九艦爆や九七艦攻のそばを離れ、F4Fの前に立ちはだかる。
一方、「翔鶴」隊は最終防衛線の務めを果たすべく、九九艦爆や九七艦攻に同道、米機動部隊を目指した。
攻撃隊指揮官兼「瑞鶴」艦攻隊長の嶋崎少佐は、零戦隊がF4Fを完封してくれたことに感謝を捧げる一方で、自身が嫌な汗をかいていることを自覚する。
もし、四航戦が二航艦に編入されておらず、仮に五航戦のみで米機動部隊を攻撃することになっていたとしたら、零戦の数もまた半分になっていたはずだ。
そうであれば、九九艦爆や九七艦攻がF4Fにまとわりつかれ、場合によっては敵機動部隊に取り付く前に壊滅的打撃を被っていたかもしれない。
そのようなことを考えながら飛行することしばし、嶋崎少佐の目に三つの輪形陣が映り込んでくる。
嶋崎少佐は知らなかったが、それらは一七任務部隊と第一八任務部隊、それに第一九任務部隊の三つの機動部隊だった。
第一七任務部隊は「ヨークタウン」を、第一八任務部隊は「ホーネット」を、それに第一九任務部隊は「ワスプ」をそれぞれ旗艦と定めている。
「『翔鶴』隊は前方、『雲鶴』隊は後方の空母群を叩け。中央は『瑞鶴』隊が受け持つ。攻撃方法については各隊の指揮官の指示に従え」
わずかに間を置き、嶋崎少佐は直率する「瑞鶴」隊にさらなる命令を下す。
「艦爆隊は中隊ごとに巡洋艦を叩け。艦攻隊は第一中隊が左舷、第二中隊は右舷から空母を狙う」
中央の輪形陣は、空母を中心としてその周囲を二隻の中型艦と六隻の小型艦が取り囲んでいた。
中型艦は巡洋艦、そして小型艦のほうは駆逐艦で間違いないだろう。
そして、対空火力が強力なのは巡洋艦だ。
これを放置したまま突っ込めば、空母を狙う艦攻隊はかなりの損害を覚悟しなければならない。
だからこそ、真っ先にこれら二隻の巡洋艦を叩く必要があった。
まず、坂本大尉率いる艦爆隊が中隊ごとに分かれ、空母の左右に展開する巡洋艦にその機首を向ける。
それら二個中隊は、敵巡洋艦に向けて降下を開始する。
敵の対空火力の分散を図るべく、小隊ごとに肉薄、次々に投弾していく。
それでも、敵の高角砲弾や機関砲弾、あるいは機銃弾に絡め取られる機体が続出し、全体の三割近い五機が投弾前かあるいは投弾後に撃墜されてしまった。
一方で、戦果も挙がった。
二隻の巡洋艦はそれぞれ三発を被弾し、少なくともそのうちの一発は機関室に飛び込んでいた。
主力艦に対しては威力不足が指摘される二五番だが、それでも重巡の主砲弾の二倍の重量を持つ。
これが艦内部、しかもエンジンルーム内で炸裂したとあっては防御力に定評のある米軍の巡洋艦もたまったものではない。
二隻の巡洋艦は大きく速力を衰えさせ、そのことで輪形陣が崩壊する。
そこへ、両舷から合わせて一二機の九七艦攻が挟撃を仕掛ける。
熟練が数多く含まれる「瑞鶴」艦攻隊に狙われた空母に回避の術は無かった。
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