第15話 赤い宝石の髪飾り
僕とアレクは剣を購入し、店主に挨拶をして店を後にした。
アレクはお腹が空いたと言うので、何処かご飯を食べれるお店を探し入ることなった。
入った店もまたアレクの行きつけらしい。テーブルの椅子に座り、メニュー表をじっくり見つめる……文字は読めるが何の料理なのか全くわからない……
「やっぱり肉だな。エーデル黒牛のステーキでいいか?」
「あ、はい」
助かった……僕が街に来ることがないからアレクは気を遣ってくれたのかもしれない。そしてこの国では黒牛は高級な動物で、うちのような平民の家のテーブルに並ぶ事は、まずない。クラウスとカルラも指で数える程しか食べたことはないと聞いた。
アレクが手を挙げ店員が僕達のテーブルまで来る、その店員に違和感を感じた。
……ん? しっぽ? 耳? 猫か? 狼? でも顔は人間のようだ。まさか、獣人族?!
アレクが注文する。
「黒牛ステーキとかぼちゃスープ、後パンもくれ、飲み物は私は酒を飲むがお前はどうする?」
……なんか頼むのおおくない!? 増えてるよね!? そんなに食べれないよ! しかも酒?! でもそうか、この世界では十三で成人だから十五のアレクもお酒が飲めるんだな。ということは僕も飲めるということ。
いったいどんな味がするのか気になるが、前世でもお酒を飲める年になる前に死んだから一度も飲んだことがない。
僕をいじめていた奴らは飲んでたな……僕は変に真面目だったというより、法を破ることが怖かったから未成年で飲酒をしようとは思わなかった。
正直この世界ではお酒を飲んでみたい。楽しく皆んなでお酒を飲むというのも僕の一つの夢だ! でもそれは特別な日に特別な人と飲もう。
「あ、林檎ジュースでお願いします」
「フッ」
笑われた! まあいい、アレクから見たら僕は子供だ。でもどうせすぐ大人になる。なんて言ったってら今は成長期なんだ、身長だって直ぐアレクを抜かすだろう。
食事を終え店を後にし外へ出た。
アレクは思ったより食べるようだ。男の僕よりも多く食べていた。そのおかげでアレクは強いのかもしれない、筋肉のつき方が違う。
僕ももっと食べられるようにならないとな、アレクを見習おう。
そして僕は先程見た獣人族のことが気になり、アレクに聞いた。
「アレク、さっきの店員さんて獣人族ですか?」
「ああ、見たのは初めてか?」
「はい、少し驚きました」
「そうか、学校に行けばもっと沢山会えるだろうな。家からでればそれはもう外だ。お前が知らない未知がまだまだ沢山あるぞ」
アレクが言うには、獣人族は獣人族の国があるらしい。
毎日宴会を開くような賑やかな人種だが、心を許していない者には一段と警戒心が強く、攻撃的になるらしい。
そして獣人族に生まれたにも関わらず、そこが合わずに他国に移住することも稀ではないという。そして僕の通う学校はそういう人たちも多く、色々な人種がいるらしい。そしてレベルの高い学校だから強い奴も集まるそうだ。
その後はアレクの買い物に僕は着いて行き、とにかくお金の使い方を見て学んだことがある――
アレクは防具を買っていた。その額は銀貨六枚、アレクは金貨一枚を出して銀貨四枚のお釣りを貰っていた。そしてご飯を食べたお店の会計が銅貨四枚。アレクは銀貨一枚を出して銅貨六枚のお釣りだった。
ということは一人一食分の食事が大体銅貨ニ枚
銅貨十枚で銀貨一枚ということ、そして銀貨十枚で金貨一枚になる。
僕の剣は金貨一枚だった
一食分を五十回食べると金貨一枚……
つまり……僕の剣は滅多に食べる事のできない黒牛を五十食分の価値になるというわけだ!
……本当にこんな高価そうな剣を頂いていいのだろうか? それにしても金貨の価値が高いことはわかったが、アレクは十五歳なのに何故金貨を沢山持っているのかは謎だ。うちは平民だから師匠に支払っている硬貨はそんなに高くはないはずだし、やっぱり高貴なお方なのか……アレクは自分のことをあまり話さない。彼女の謎は深まるばかりだ。
「そろそろ帰るか」
「はい。あ、アルのお土産見てきてもいいですか? アレクにも一緒に選んでもらいたかったんです」
「私はそっちに疎いぞ」
「それでも僕よりは疎くないでしょ?」
仕方ないという顔をして結局最後まで付き合ってくれた。
僕は赤い宝石のついた髪飾りを買った。アレクが選んでくれたのだ。
だが情けないことに僕はお金を持ってきていない為アレクに買ってもらった。アレクは自分が女だと家族に公表した後、アルメリアから避けられているのをわかっていた。だからこそお詫びとして渡したいと言ってくれたのだ。
「アルに似合いそうだな〜」
僕は髪飾りの入った袋を上に掲げて言った。
「喜んでくれるといいんだが……」
「きっと喜んでくれますよ」
家に着くと「おかえり」という声が飛び交う。
僕はそれに「ただいま」と答える。
直様アルメリアの元に向かい、僕と師匠は様飾りの入った土産袋を渡した。アルメリアは戸惑いを見せながら袋を開けて笑顔になった。
「うわ〜可愛い。ありがとうお兄ちゃん……お姉ちゃん」
アレクは少し照れるとアルメリアの頭を撫でて、宝石の話をしていた。僕はその光景に思わず微笑みが出た、とても嬉しかった。
後でアルメリアに聞くと、僕とアレクが仲良くしすぎていた事、アレクが女性だったと知って自分の兄が取られるかもしれないと勝手に嫌っていたらしい――つまりヤキモチだ。
(タイトルを妹が可愛すぎる件に変えようか?)
だが、そうも言っていられなくなる。なぜなら僕の学校入学が近付いてきたからだ――
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