五十にして天命を知る(白麗と荘興)
明千香
第1話 序章
はるか悠久の昔々。
天上界に住まわれる神々は、あまりにも長いご自分たちの無聊の日々を慰めるために、見下ろす下界に箱庭を造ることを思いつかれた。皆で見下ろして、あれこれとお喋りのネタにすれば、さぞ楽しいことだろう。
まずは、広大な箱庭の東西南北の四方を閉ざす。
東は果てのない大海原。
西は屏風のごとく連なる山脈。
南は灼熱の砂漠。
北はすべてが凍りつく氷原。
中華大陸と名づけたその真ん中に、神々は天上界と同じく山と草原と河を造り、木々と花々を植え獣と鳥と魚を放った。緑豊かで季節の花々が咲き乱れ、生き物が命を輝かす楽園だ。そして最後にひとりの神が気まぐれに思いついた。この楽園に、自らの姿を真似た<人>を住まわせたら、さぞおもしろいことだろう。
再び、悠久の時が流れ去った。
移り気な神々は自分たちの造った箱庭の存在を忘れ、<人>もまた創造主である神々の存在を忘れた。中華大陸に溢れた<人>は多くの国を造り、その中で愛し合い殺し合い、神々の瞬きほどの短い一生を終える。
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