陰と陽を持つ男

由比ヶ浜崇子

第1話愚者

 「大丈夫。」


 そう涙を流すと女性の姿に変化した独りの男が居た。涙を流している間だけ、女性になってしまうのだ。


 天界から地上界へ落とされた男は自由の身になったのだが、それと引き換えに涙を流すと女性に変わってしまう魔法をかけられてしまったのだ。


 (さぁ~これからどうする。俺は自由だ。しかし何故俺は地上界に来たんだ。)


 どうやら男は記憶も消されたらしい。唯一の手がかりは1通の手紙だけだった。その手紙にはとある女性の名前と居所が書いてあった。


 (とりあえず、この女性を探そう。)


 男は目を閉じてこの女性を強く念じた。

 そうこの男は人間の姿に代えられた大天使ガブリエルである。

 ガブリエルは大神ゼウスに逆らい地上界に落とされたのである。


 強く手紙の女性を念ずると、名も無いアパートの玄関の前に瞬間移動した。

 チャイムを鳴らすと、独りの女性がドアを開けた。


 「あら、英之じゃない。どうしたの?」

 

 女性に「英之。」そう言われてガブリエルは戸惑いながら天界から落とされた一部始終を話した。


 「そう。何も覚えてないのね。私の名前は日香里。貴方は良く天界から地上界へ来ては人探しをしてたの。」


 「何故俺は人探しをしてたんだ。全く身に覚えがない。」


 「貴方が探している男性は大神ゼウスに貴方の命を救う事と引き換えに地上界に落ちたのよ。でも大神ゼウスはそれでは飽き足らず貴方も地上界へ落としたのよ。」


 そう女性は話すと部屋の中へ英之を通した。


 「日香里。その男の居所はわかるか?会ってみたい。」


 「私も一緒に探していたんだけど、手がかりがこの羽根だけなのよ。」


 日香里がタンスの引き出しから、布にくるまった真っ白い羽根を取り出し英之に見せた。

 

 「これは・・・・・・」


 英之は大天使の羽根だと気づいたが、それが誰かはわからなかった。


 「まぁ〜大神ゼウスの機嫌が良くならない限り天界へは戻れそうに無いから、ここでゆっくりしていきなさいよ。私もこの羽根の持ち主探しに協力するわ。」


 こうしてガブリエルこと英之の人探しが始まった。

 


 


 




 

 

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