電飾廻廊

松露

序幕

「『呪い』ってさ、俺らには認識出来ない霊やら超常的な存在がもたらしてくる災いなんだと」

「まあ一口に呪いと言っても、その掛けられ方は様々だろ?昔から語られる『ワラニンギョウ』もそうだし」


異常通知を受けた時刻は、丑三つ時を指している。

2人は大通りの路地裏を駆け抜けていた。


「なあバイマン、一ついいか」

「俺たちは今、科学に支えられた社会に生きてる。それがどうしたってそんな旧時代のオカルティックな話に繋がるんだ」


ここ数十年の開発が招いた酸性雨がネオン灯を打ち付け、明滅する光が2人を浮かび上がらせる。


「それはな、今から見せるもんが」

「どうあがいても科学じゃ説明できないもんだからだよ」


路地裏を抜けて、人の気が感じられない広場におどり出る。

それはすぐに目に飛び込んできた。


四散した赤黒い肉塊が壁にすりこまれ、無残に打ち付けられている。

電飾の煌びやかな明かりの中では、鮮烈な赤色すらよく馴染んでいた。


「なんだ、この程度の異常殺人はよくある事だろう。何をそんなに焦って」


目線を下にずらした時、ようやく事態を把握した。


「待て、おい、こいつは」


「言っただろうハル」

「これはもう、人の仕業じゃねえ」


損壊し尽くした身体を包み込むように

蓮華が、咲き誇っていた。



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