鉄錆の魔境【後編】

暗黒星雲

第1話 生き残っていた兵器

 毎晩深夜帯に外出する月城大尉。彼の行動を不審に思った兵士が月城を追跡したのだが行方不明となった。ある晩、装甲車と歩兵一個小隊が後を追うも装甲車は破壊され兵士の半数が行方不明となった。生き残った兵士は心神喪失状態で発見された。


 事件解決に手を焼いた司令部は私と駆逐戦車、そして二体の自動人形オートマタを派遣した。深夜、月城を追った私たちは月城と共に異界へと飲み込まれた。


 そこはかつて疑似霊魂をCPUとして使用していた時代の古戦場であり、生き残っていた疑似霊魂らが生きた人間の精を貪っていたのだ。


「戦車が三両。人型機動兵器が二体。接近してきます」


 ポーラの報告だ。私のモニター画面もそれを捉え、既にロックオンしている。


「対戦車誘導弾発射準備」

「了解……おや? 疑似霊魂は女ばかりだと思っていましたが、男が混じっているようです」

「男もいたのか……」


 先ほど戦車を離れたベルタが女の疑似霊魂にまとわりつかれ押し倒されていたのだが、その中に男が三名いた。ベルタは既に男性器を挿入されており、他の男二人は彼女の顔に起立した一物をこすり付けていた。


「救出しますか?」

「後回しだ。お楽しみのようだしな」


 そう、ベルタは男三人に身を任せつつ自らも腰を振って性行為を楽しんでいたのだ。


「対戦車誘導弾発射!」

「てー!」


 駆逐戦車の背に搭載されたラックから五本の対戦車誘導弾が弧を描きながらそれぞれの目標に対して飛翔していく。


「全弾命中」

「よし」


 三両の戦車と二体の人型機動兵器は誘導弾が命中し沈黙した。


「燃えませんね」

「油脂や火薬を積んでいないのだろう。主砲発射準備、弾種はAPFSDS装弾筒付翼安定徹甲弾。目標はあの女だ」

「了解……蜘蛛の白い触手が車体に巻き付いてきます」

「構うな。女を撃て。発射!」

「てー!」


 150ミリ砲から発射された運動エネルギー弾。それは細長い銛に尾翼が付いた形状をしている。その砲弾が女の胸を貫き、大蜘蛛の胴体も貫通した。


 大蜘蛛は八本の脚をバタバタち動かしながら痙攣している。胸元を貫かれた女は首から上がボトリと落下した。戦車に絡みついていた白い触手は痙攣しつつまだ蠢いていた。


「ポーラ。後は任せた。私は月城とザーラを救出する」

「了解」


 私は光剣を掴んで上部ハッチから外へ出た。そして光剣を抜き、まだ車体に絡みついている白い触手を光剣を使って切断していく。


「ポーラ、一旦下がれ。接近してくる機動兵器は容赦なく破壊しろ」

「了解しました」


 砂埃を巻き上げながらマルズバーンが後退していく。マルズバーンに巻き付いていた白い触手は私にもまとわりつくのだが、光剣で切断していく。この白い触手は例の大蜘蛛の腹部から伸びてきているのだがまだ蠢いている。どうも生体のようで、光剣が発する高熱をあからさまに嫌がっていた。


「先にザーラを助ける……か」


 ザーラは大蜘蛛から伸びる白い触手に絡まれて身動きが取れない状態にあった。しかも、彼女の戦闘服は殆どが破かれており、その白い触手はザーラの褐色の肌の上をうねうねと這いまわっていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る