私の幼馴染、朝倉瑠璃という少女は、一言で表すと、「お姫様」であった。私の知る限り全てにおいてこんなに完璧な人間は彼女以上に存在しない。そんな彼女との出会いは、私たちが3歳くらいだった頃だろうか。

バスで幼稚園に通っていた私は、彼女を初めて見た時、子供ながらにとても綺麗だと思った。ひとを見てあんなにゾクリとしたのは、あれが最初で最後だったと思う。そして私は傲慢にも、彼女と関わりたいと、あわよくば友達になりたいと、そう思ってしまったのだ。彼女は幼稚園内でも比較的大人しい子に分類されており、お喋りだった私が彼女に声を掛けるのにそう時間はかからなかった。あの子は物静かで目立つことをあまり好まなかったから、幼稚園の中でも彼女と仲が良かったのは私だけで、幼い私は少し得意になっていた。バスでも隣に座って、彼女の家と私の家とではあまり距離が離れていないことが分かった。家に帰っても、私が母に話していたのは大半彼女の話だったという。あの頃から私はもう、彼女に完全に魅了されていたのだろう。彼女と出会って1ヶ月も経った時には、もう私と彼女はお互いの家を行き来するほどの仲になっていた。あんなに美しい彼女の母親は、きっと女神のような人。勝手にそう思っていたが、彼女の母親は私の想像よりもずっと、普通の人だった。穏やかで優しそうな人だったが、失礼にも期待はずれだと、そう思ってしまった事も否定しないでおこう。

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