第126話 予想外の褒賞
「ユートへの褒賞⋯⋯それはガーディアンフォレスト王国の領地だ」
「りょ、領地? もしかして俺にガーディアンフォレストの貴族になれってことですか!」
「いや、さすがに人族を我が国の貴族にすることは出来ない。だがユートは多大な功績を残した。そのため、長老達とも話し合ったのだが、ガーディアンフォレスト王国の西側の領地を授与することで決定した」
西側って
「まさかガーディアンフォレストから独立した領地ってことなの?」
「独立した領地? それって⋯⋯」
「簡単に言えば公国のようなものだ」
公国? 確か王国よりも規模が小さい国で、公爵が統治する国だ。それを俺が?
「まあ将来本当に公国になる可能性もあるがな」
「お、お父さん!」
えっ? それってどういう意味だ?
だけど今は突然王になれと言われて、考えがまとまらない。
それに出来れば断りたい案件だ。
「その話、ちょっと待って下さい」
エルウッドさんの言葉に待ったをかける人物がいた。
それはアリーセさんだ。
そうだよな。いきなり新しい国が出来るなんて、隣国の王妃として黙っている訳ないよな。
だけどその展開は望む所だ。俺が王にならないためにもここはアリーセさんに頑張ってほしい。
「そんなことさせる訳にはいかないわ」
「そ、そうですよね。いきなり平民が王だなんて」
俺は透かさずアリーセさんに援護射撃を行う。
しかしアリーセさんは、俺の予想を反する言葉を放つ。
「ユートくんには、ムーンガーデン王国の東側を任せようと思っていたのよ」
「えっ?」
「エルフの方々とも友好関係を結べているしね」
確かに自分で言うのも何だけど、他の人間よりエルフとのコミュニケーションは取れていると思う。でもだからと言って領地を任されるのはちょっと⋯⋯
「何だと! ユートを王にするのは我がガーディアンフォレストだ!」
「いえ、その役目はムーンガーデン王国が行います⋯⋯と言いたいですけど、ここは両国の領地を合わせて国を作ったらどうでしょうか?」
アリーセさんがとんでもない提案をしてくる。
いやいや、そんなこと許されないでしょ。
でもこの人達、何故か知らないけど目が輝いているし、意見を曲げそうにないな。
ここは味方になってくれそうな人を⋯⋯
「フィー⋯⋯」
「それは素晴らしい考えね」
ダメだ。フィーナもそっち側の人間だった。
もうここには俺の味方はいないのか? いや、一人だけいた。娘と一緒に旅をしていた俺のことを気にくわない人が。
俺はゲオルク国王に視線を向ける。すると予想通り、この事態を良く思っていないのか、険しい顔をしていた。
「くっ! ユートに領地を⋯⋯だが⋯⋯」
「あなた⋯⋯もう決めたことですよ。文句は言わないで下さいね」
「だが、国にするなど聞いてないぞ」
今のゲオルクさんの言葉からムーンガーデン王国は、領主として東側の土地を治めさせようとしていたことがわかる。
正直俺としてはそれもノーサンキューだ。
だからここはゲオルクさんに頑張ってもらいたい。他の王族の意見を変えてほしい所だが⋯⋯
アリーセさんがゲオルクさんに耳元で何かをささやく。
「あなた。よく考えてみて下さい。このままですとムーンガーデン王国はガーディアンフォレストと比べてけちな国だと思われてしまいますよ」
「だ、だが⋯⋯」
「それにユートくんをこのまま取られてしまったら、リズになんて言われるかわかりませんよ。もしかしたら一生口を聞いてくれないかもしれません」
「それは困る!」
「でしたら何をするべきかわかりますね?」
「うむ」
アリーセさんがゲオルクさんから離れる。どうやら密談は終わったようだ。
何を言われたかわからないけど、ゲオルクさんの言葉に俺は注視する。
「我が国も両国の領地を使い、ユートが王になることを進言する」
「えっ!」
俺の思惑は外れ、ゲオルクさんはアリーセさんに説得されてしまったようだ。やはり夫婦間のパワーバランスは奥さんの方が強いというのか。
「では、後一国認めれてくれれば、ユートの国が誕生するという訳か」
ん? それはどういうことだ? 両国の領地だけど好き勝手に国を作ることは出来ないということか?
「この場合はアルト王国、イシリス公国、ジルク商業国、そしてバルトフェル帝国のことよ。この世界では周辺諸国の三ヶ国以上が認めないと、新しく国を作ることは出来ないの」
俺が疑問に思っていると、フィーナが教えてくれた。
ということは、現状ムーンガーデン王国とガーディアンフォレスト王国が国を作ることを賛成しているから、後一国認めなければ国を作ることは出来ないということか。
普通に考えたら新しく国が出来ることを賛成する国はないように思える。
まあもしムーンガーデン王国とガーディアンフォレスト王国の発言権が強ければ、それもあり得そうだけど、残念ながら俺が知る限り、両国にそのような力はないように思える。
そう考えると助かったと考えていいのかな?
俺は心の中で安堵のため息をつくのだった。
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