第103話 Win-Winな関係?
「ごめんなさい!」
フェリに治療薬をもらった俺達は、フィーナの両親達をフォラン病から治すために、エルフの里の北東部に向かっていた。
そのような中、フィーナが俺の前で深々と頭を下げる。
「リズに聞いたわ。私がその⋯⋯ユートの手を離さなかったって。そして一晩中椅子に座らせて⋯⋯」
フィーナはうつむき、凄く申し訳なさそうな顔をしていた。
そんな顔をさせたくて一緒にいた訳じゃないけど、話しても伝わるだろうか。それなら⋯⋯
「いや、自分で望んでいただけだから気にしないでいい」
「でも⋯⋯」
「フィーナの白くて綺麗な手を堪能出来たし、寝顔も好きなだけ見ることが出来だからな」
「なっ! やっぱり不純な動機で私のことを見てたのね!」
やっぱりってひどくね。
フィーナは俺のことをそんな風に思ってたのか。まあでも作戦通りだから別にいいけど。
「だからフィーナが気にやむ必要はない。お互いWin-Winだったからな」
「私が一方的に損しているだけよ!」
フィーナが追いかけ来たので、俺は逃げる。
捕まったら、さっき短剣を投げつけられたように、何をされるかわからない。
「やれやれ。あの二人は何をしているのですか」
「喧嘩する程仲が良いってことですね」
「仲が良くても羨ましいです」
俺とフィーナは、マシロ達に生暖かい目で見られながら、エルフの城へと向かう。
そして一時間程歩くと、俺達は城の城門の側まで来ることが出来た。
「綺麗なお城ですね」
洋風な真っ白な城を見て、リズが感激していた、
ここがフィーナの育った場所か。
リズの時も思ったけど、王族という権力がある立場なのに、フィーナは偉ぶる所がほとんどない。余程両親の教育が良かったのだろうか。
そのような素晴らしい人達を病気で亡くす訳にはいかないな。
俺達は城に近づくと門番と思われる兵士がこちらに近寄ってきた。
「フィーナ様! よくぞ戻られました」
「お父さんとお母さんの容態はどう?」
「⋯⋯危篤状態となっていまして、一兵士の私には詳しい所まではわかりません」
「他の人達は? まだ死者は出てないのよね?」
「はい⋯⋯ですがそれは時間の問題かと。私の姉もフォラン病のステージ四になってしまいもう長くは⋯⋯」
「そうなの? だったらこれをフォラン病の人に配ってくれない?」
俺は異空間から黄色い液体が入った小瓶をを取り出し、フィーナに渡す。
「こ、これはもしや⋯⋯」
「ええ、フォラン病の治療薬よ」
「おお! ついにレーベンの実を手に入れられたのですね! すると
「その話は後よ。里の西部と南部の人達には治療薬を渡してあるから、あなた達は北部と東部をお願い」
フィーナの言う通り最長老様の命令で、里の南と西のエルフ達には治療薬が行き渡っている。後はこの城と東、北にいるエルフ達に治療薬が渡れば、フォラン病で苦しむ人はいなくなるはずだ。
「承知しました! すぐにフォラン病の方々にこの治療薬を配って参ります」
二人の門番は治療薬を受け取ると、急ぎこの場から立ち去っていく。
「さあ、私達も行きましょう」
俺達はフィーナを先頭に、早足で城の中へと入る。
そして長い廊下を進んでいると、前から数人のエルフ達が向かってきた。
エルフ達はこちらをジロジロと見てきた。何だかその視線に悪意を感じるのは気のせいか?
何事もなく終わればいいなと思っていたが、残念ながらそうは行かないようだ。
「なるほど。どうも城の中がゴミ臭いと思っていたが、人族がいたのか」
話しかけてきたのは集団の先頭にいた中年のエルフだ。
問題を起こしたら、フィーナの両親の元へ行く時間が遅くなる。
ここは無視するに限るな。
俺は目を合わせたないようにしていたが、今の言葉に我慢出来ない者がいた。
「ハウアー! ユートやリズに何てことを言うの!」
「これはこれは傾国の姫ではありませんか。城を出ていったあなたが何のために戻ってきたのですか? ああ、そういうことですか。兄上の死に目に会いに来たと」
「不吉なことを言わないで! いくらお父さんの弟だからといって許せないわ」
弟? よく見るとこのエルフ、ジグベルトに似ているな。まさかジグベルトの父親なのか?
俺達はフィーナの両親の元へと向かおうとしたが、ジグベルトに似たエルフに足を止められてしまうのであった。
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