第99話 恥ずかしい称号

 俺はフィーナの肩に手を置いたまま、その目を真っ直ぐに見据える。


「大地の恵みのスキルを持っているのはフィーナだよ」

「えっ?」


 フィーナは俺の言葉を聞いて呆然としていた。


「な、何をバカなことを言ってるの? 頭大丈夫?」

「至って正常だから安心してくれ」

「私がそんなに凄いスキルを持っている訳ないじゃない。そもそもユートはどうやって⋯⋯私すら知らないことを知ってるの?」


 いきなり突拍子もないことを言われ、フィーナは動揺しているように見える。どうすれば信じてもらえるのか。

 するとフェリから、助言の言葉が上がった。


「ユートよ。フィーナと接触しながら真実の目を使うのじゃ」

「それって何か意味があるのか?」

「なんじゃ。やはり知らなかったのか。誰かと接触しながら真実の目を使うと、接触した者も能力を見ることが出来るのじゃ」

「そんなこと初めて知ったよ。フィーナ、手を握るよ」

「あっ!」

「ん?」

「ううん、突然だったから驚いただけ」


 女の子に対して、許可を得る前に触れたのが不味かったか。

 と、とにかく能力を確認してみよう。


真実の目ヴァールハイト


 俺はスキルを口にすると、立体映像となってフィーナの能力が見えてきた。


 名前:フィーナ・フォン・ガーディアンフォレスト

 性別:女

 種族:エルフ

 レベル:35/120

 好感度:A-

 力:91

 素早さ:329

 防御力:95

 魔力:701

 HP:193

 MP:400

 スキル:魔力強化D・弓技B 大地の恵み

 魔法:水魔法ランク5

 称号:ガーディアンフォレスト王国王女・森に愛されし者・ツンデレ


「わわっ! 何か出てきた! これが私の能力? って! み、見ないで!」


 フィーナは狼狽えながら自分の能力を隠し始める。

 隠しているのは称号の部分だな。

 チラリと見たが新たにツンデレの称号が追加されてた。

 確かにこれは恥ずかしい。フィーナが隠したくなる気持ちもわかる。


「どれどれ、我にも見せてくれ」


 フェリが後ろから俺の肩に触れる。


「なるほど。これはおもしろい称号を持っておるな。それに大地の恵みのスキルもあるではないか」

「ちょ、ちょっと! 勝手に見ないで! ユートももうやめてぇぇ!」


 フィーナの悲痛の叫びが周囲に鳴り響く。

 さすがに可哀想なので、真実の目ヴァールハイトを解除する。


「はあ⋯⋯はあ⋯⋯」


 フィーナは叫んだせいか肩で息をしている。

 そして深呼吸をするとこちらを振り向き、満面の笑みを浮かべて話しかけてきた。


「大地の恵みのスキルがあることは確認出来たわ。これは使うにはどうすればいいの?」


 どうやら称号のことはなかったことにするようだ。笑みを浮かべているが、称号のことには絶対に触れるなと言っているように感じた。


「私にも、フィーナさんにどのような称号があるのか教えて下さい」


 だが天然が入っているリズにはその意図が読めなかったのか、称号の話を蒸し返す。


「ユート、フェリ⋯⋯絶対に言ったらダメよ」


 俺とフェリはフィーナの圧に負けて、思わず頷いてしまう。


「リズ⋯⋯いくら友達でも踏み込んではいけないことがあるのよ。友達だから言えないことってあるでしょ?」


 フィーナは真剣な表情で語りかける。

 すると何故かリズは俺の所に来て、手を握ってきた。

 

「ユート様! 私やりました!」

「な、何が?」


 リズが興奮気味に語りかけてくる。


「フィーナさんが私のことをお友達と認めて下さいました」

「良かったね」

「はい! え~と⋯⋯以前マシロさんに教わったのですが、懐いてくれなかった方が、突然懐いてくれることをツンデレって言うんですよね?」

「「プッ!」」


 俺とフェリは、リズの狙ったかのような指摘に、思わず吹いてしまった。


「くくっ⋯⋯リズリットは面白いのう」

「フェリ⋯⋯笑ったらダメだろ」

「ユートこそ声には出してはおらんが、笑っているではないか」


 自分で言っておいてなんだけど、この状況面白すぎるだろ。

 俺とフェリの笑いは止まらない。


「も、もうこの話は終わり! それより早くレーベンの実を復活させる方法を教えてよ!」


 フィーナの言葉に一理あるため、俺達は笑いを堪えることにする。そしてフェリの口から大地の恵みについて語られるのであった。



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