第95話 勢いでしてしまうことってあるよね
「ふう⋯⋯何とかなったな」
漆黒の爪や漆黒の咆哮など予想外のことはあったけど、無事に討伐することが出来た。
後はレーベンの実を取りに行くだけだ。
だけどその前にまずは左肩の傷を治さないと。
かなり深く抉られたな。大量の血が地面に滴り落ちている。
このままだと出血多量で意識を失ってしまいそうだ。
「ユートォォォッ!」
治療をするため、魔力を集め始めようとしたら、フィーナが猛スピードで駆け寄って来た。
「フィーナ。作戦が上手く⋯⋯」
俺が言葉を言い終える前に、フィーナはこちらに向かって突進してきた。
そのため、俺はフィーナを抱き止める。
ぐはっ!
勢いが強すぎて傷が⋯⋯
「
こんなにはしゃいでいるフィーナは初めて見る。それだけ
そのようなフィーナが見れて俺も嬉しい。
「これでレーベンの実を手に入れて、みんなを助けることが出来るわ! ありがとうユート⋯⋯ん⋯⋯」
突然頬に少し湿った感触が伝わってきた。
えっ? 今のって⋯⋯キスされた!
どちらかと言えばクールなフィーナが、頬とはいえキスしてくるなんて驚きだ。
「フィ、フィーナ!」
俺はその行動に茫然としてしてしまう。
「あっ、いえ、その⋯⋯べべべ、別にただのお礼よ! ふ、深い意味はないんだからね! 勘違いしないでよ!」
「あ~うん⋯⋯わかってるよ」
「そ、そう⋯⋯わかっているならいいのよ。わかっているなら」
勢いでキスをしてしまったのか、フィーナの顔は真っ赤だ。我に返って恥ずかしくなってきたのか?
「ちょっといくら
「イチャイチャなんてしてないわ! マシロは何を言ってるのよ!」
「はいはいそうですね。でもそろそろ抱きつくのやめたらどうですか?」
「「えっ?」」
俺とフィーナは至近距離で顔を見合わす。そして抱きついたままだと気づき、慌てて離れる。
「ご、ごめんなさい!」
フィーナは狼狽えながら頭を下げる。
「嫌だったよね⋯⋯」
「いや、そんなことはないよ」
「そうなの?」
フィーナのような美少女に抱きつかれて、喜ばない男などいないだろう。
それに上目遣いで首を傾げているため、その魅力はさらにアップしていた。
「もうラブコメはいいですから」
「ラブコメ何かじゃないわ!」
「それよりさっさとその傷を治したらどうですか?」
「あっ! ごめんなさい!」
真っ赤な顔をしていたフィーナだったが、マシロの指摘で申し訳なさそうな顔をする。
「私⋯⋯自分のことばかりで⋯⋯ユートは怪我をしているのに⋯⋯」
そして終いに目が潤んできて、今にも涙を溢しそうだった。
そんな顔を見たら男として言うことは一つしかない。
「血がいっぱい出ているように見えるけど、全然痛くないから大丈夫」
「本当に?」
「嘘じゃないよ」
本当は滅茶苦茶痛いけど、男として女の子を悲しませる訳にいかない。
「それにこんな傷、すぐに俺の魔法で⋯⋯
自分自身に回復魔法をかけると身体が光輝き始め、
「ほら、これで元通り」
「うん⋯⋯でもごめんなさい」
フィーナに再度謝られたが、さっきよりは表情は明るい。傷が治ったことで少しは罪悪感が消えたかな?
「それにしても全てユートの作戦通りだったわね」
「演技がバレなくて良かったよ」
そう。俺は
「いつから咳をしたり、苦しそうな顔をしてたの?」
「初めて会った時からかな。神聖魔法で倒せるならそれで良かったけど、万が一のことを考えて⋯⋯魔物にしては頭が良さそうに見えたから、もしかしたら演技に引っ掛かってくれるかなあって」
「神聖魔法も凄いけど、先を見据えた戦い方には脱帽だわ」
「ユートさんのことを尊敬してしまいます」
おいおい。みんな褒め過ぎじゃないか。照れてしまうぞ。
「そうですね。私も最初は騙されました。ユートは他者を騙す天才ですね」
「言い方! それだと俺が凄く悪い奴みたいじゃないか」
「そうですか? 人族の言葉は難しいですね」
せっかくフィーナとノアが褒めてくれたのに、マシロが台無しにしてくれた。
まあ褒められ過ぎると少し恥ずかしくなってしまうので、助かったと言えば助かったが。
だけどこれで俺達を遮るものをはない。
俺は
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