第46話 真相

「私は納得していないけど、父上は初めから国を収める気がなかったんだ」

「それでは何の目的でクーデターを起こしたのだ!」


 レッケさんが怒りの声を上げる。

 無理もない。国を収める以外の理由でクーデターを起こされたんだ。王国に忠誠を誓っているレッケさんとしては、納得いかないだろう。


「もしかして国を荒らすことが目的だったんじゃないの?」

「よくわかったな。その通りだ」


 やはりそうか。そう考えるとリスティヒの行動に説明がつく。


「父上はこのような小国の王になった所で、いつか必ず滅ぼされると言っていた。だから父上は帝国と――」


 グラザムはクーデターを起こした理由を語り始める。その内容はやはり俺の思った通りのものだった。


「これが私の知っていることの全てだ」

「本当のことかどうかは、リスティヒに同じことを聞いてから判断する」

「な、なあ⋯⋯素直に話したんだ。これで俺の命は助けてくれるよな?」

「さあ? 俺にそんな権限はないから」

「貴様! 騙したのか!」

「騙す? 俺は魔法を放つことを止めただけで、お前を助けるかどうかについては何も言ってないけど」

「くうぅぅぅっ!」


 グラザムはその場に崩れ落ちる。だけどグラザムの存在は俺にはもう関係ないので、背を向けてこの場を立ち去るのであった。

 そして俺達はグラザムから聞いたことを、リスティヒにも問いかけてみた。

 するとリスティヒは何も語らなかったが、真相の部分で目を見開いていたため、グラザムの話は信憑性が高いと判断した。

 リスティヒとグラザムに聞きたいことは聞いたため、俺達は地上に戻り現状確認をする。


「国境ってまだ封鎖したままですよね?」

「国王陛下からはそう聞いている。だが本日中にも解除する予定だと仰っていたぞ」

「国境は封鎖したままでいるよう国王陛下に伝えて下さい」

「わかった」

「それとリスティヒの屋敷の家宅捜査をすぐにしましょう」

「そちらは私が担当します」

「ノアがいれば役に立つと思うから、連れて行った方がいい」

「はい」


 俺達はグラザムから聞いた話を元に動き出す。

 だがこの時、ムーンガーデン王国のことで動いているのはユート達だけではなかった。


 ◇◇◇


 時は遡り、ユートが国境を越えてムーンガーデン王国に入った頃。バルトフェル帝国のカバチ村にて


 勇者パーティーであるギアベル一行は、ゴブリンキングと再戦するため、カバチ村へと向かっていた。


「俺様完全復活!」


 ギアベルは教会の枢機卿の力によって、ゴブリンキングにやられた傷は既に完治していた。


「油断をしなければゴブリンキングなど俺の相手ではない」

「私も今度は始めから全力で戦うしぃ」

「私達の力を見せつけてやりましょう」

「ギアベル様の剣として、必ずやゴブリンキングを討ち取ってみせます」


 ギアベルを初め、パーティーメンバーであるファラ、マリー、ディアンヌは今度こそはと気合いが入っていた。


「だがその前に鋭気を養うぞ。あの田舎の村でまた旨いものでも食わせてもらわないとな」

「こっちは魔物を倒してやるんだしぃ。私達に尽くすのは当然というか当たり前だしぃ」

「ファラの言うとおりだ。どうせあの田舎の村では俺達以外に頼れる奴などいないだろう。依頼料として、また金品を献上させるか」

「それは良い考えです」


 ギアベル達は再びハイエナのように、村の財産や食糧を奪おうとしていた。そして今のパーティーメンバーでは、そのことを指摘するものは誰もいない。

 しかしこれまでの人生を好き勝手生きてきたギアベルだが、ユートとの別れによって狂いが生じていることに、今はまだ気づいていない。

 ガバチ村へと到着したギアベル一行は、村長の自宅へと向かう。

 すると村長の自宅前で、数人の中年男性達が目に入った。


「おい村長。この俺様が来てやったぞ」

「え~とあなたは勇者様ですか」

「そうだ。前回は体調が悪くてな。今度こそゴブリンキングを退治してやるから安心しろ」

「だけどその前にぃ⋯⋯私達お腹が空いたっていうかあ」

「前回のように食糧を提供してくれますか?」

「私達が全力で戦うためだ」

「それと報酬だが最初に提示した二倍払ってもらう。お前達も村が滅びてしまったら困るだろ?」


 村長や村人達は突然現れたギアベル一行の無礼な振る舞いに、唖然としていた。


「どうした? 早く宴の準備をしないか。ゴブリンキングを討伐してやらんぞ」

「お言葉ですが勇者様。ゴブリン達は既に討伐されています」

「ん? 今何か言ったか? ゴブリンが討伐されたと聞こえたが幻聴か?」

「幻聴ではありません。我が村を襲撃したゴブリン達は既に討伐されています」


 ギアベルは思わず村長に聞き返してしまった。だが幻聴ではないと気づき、今度はギアベル達が唖然としてしまうのだった。


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