第38話 フレスヴェルグ討伐戦(3)
「なんだあのバカでかい光は!」
グラザムの言うとおり
「だがしょせんは見かけ倒しの魔法だ! そのような脆弱な光を振り払い、私を認めないこの国の奴らを始末しろ!」
空間の裂け目はほとんど拡がり、フレスヴェルグはこの世界に侵入しようとしていた。
だが
聖なる光球がフレスヴェルグが激突すると、激しい爆発が起こった。
俺はその光景を見届けた瞬間、魔力の消費が激しく、思わず膝をついてしまう。
これ以上は魔法を使うことは出来ないな。後は
俺は爆発が起きた場所に目を向ける。
「くっ! 何をしている! 早くこいつらを皆殺しにしろ!」
グラザムは喚き散らし、フレスヴェルグに命令していた。だが爆煙が晴れた後、そこにはフレスヴェルグはおろか空間の裂け目すら消えていた。
「はっ? はぁぁぁぁっ!?」
グラザムが突然
「ちょ、ちょっと待て! どこに隠れているんだ? 遊びはいらないぞ」
グラザムは周辺に目を向けるが、フレスヴェルグの姿はどこにもいない。
「私の命令が聞けないのか! は、早く出てこい! そして高貴な私を守れ!」
だがその声は周囲に木霊するだけで、反応するものは誰もいなかった。
「ふざけるな⋯⋯ふざけるなふざけるなふざけるなふざけるなぁぁっ!」
グラザムはフレスヴェルグの姿が見つからず、発狂し始める。そして俺は立ち上がり、ゆっくりとグラザムの元へと向かった。
「驚いたり狼狽えたり発狂したりと、忙しい奴だな」
「き、貴様ぁっ! フレスヴェルグをどこにやった!」
「さあ? 地獄にでもいるんじゃないか? 過去にたくさんの人間を殺した罪で」
「 これは何かの間違いだろ? フレスヴェルグはSランクの魔物だぞ? やられる訳がないじゃないか」
「Sランクの魔物とかそういうのはわからないけど、俺の魔法で死んだのは間違いないな」
「と、ということは⋯⋯お前は一人でSランクの勇者パーティーの実力があるということか⋯⋯ひぃぃぃっ!」
グラザムは悲鳴を上げながら尻餅をつく。
「さて、覚えているか? フレスヴェルグを倒したら次はお前だって言ったことを」
「お、覚えていません」
「いや、俺は覚えているぞ。覚悟しろよ」
「ぎゃぁぁっ! だ、誰か助けてくれ!」
グラザムは恐怖からか叫び始める。その姿は威厳の欠片もなく、これが王族だとはとても思えない。
「お前は私欲のために国家を乱し、国民を苦しめた。そしてリズを無理矢理嫁にしようとしたことは絶対に許さん」
「ユート様⋯⋯」
俺は右手に力を入れて拳を握る。
「ま、まて! そうだ。私の味方をしてくれるならお前を侯爵に取り立ててやろう。どうだ? 女には不自由しないし、一生遊んで暮らせるぞ」
「見下げた奴だな。悪いことをしても反省する気が全くないな。お前によって人生を狂わされた者の痛みを味わうがいい!」
俺はグラザムの顔面に拳を放つ。
するとグラザムは後方にぶっ飛び、地面を転がり回る。
「い、いひゃい⋯⋯」
くっ! 魔力が空っぽで力が入らなかったため、威力が弱まってしまったか。だがとどめは俺より相応しい人がいるから任せよう。
グラザムが吹き飛んだ先には、俺より怒りに震えるリズがいた。
「リ、リズリット⋯⋯このままでは殺される。助けてくれ⋯⋯私達は同じ王族じゃないか」
グラザムは恥も外聞も捨てて、リズリットの助けを求める。
「同じ王族ですか⋯⋯それは心外ですね。国民を苦しめたあなたと同じにしないでほしいです」
「そんなこと言わないでくれ。昔の優しいリズリットはどこにいったんだ」
グラザムが情に訴えてきた。
さすがに昔からの知り合いだからわかってるな。リズは優しいから情に訴え続ければ、もしかしたら許してくれるかもしれないと考えているのだろう。
だがその行動を許さない者達がいた。
「ちょっと離れて下さい。リズが汚れてしまいます」
「もしリズさんに何かしたら僕が許しませんよ」
二匹の頼もしき護衛、マシロとノアがグラザムの前に立つ。
「ね、猫と犬が喋っただと!」
「うるさいですね。そんな些細なことはどうでもいいです」
些細なことではないけどな。いきなり動物が喋ったら普通は驚くぞ。
だがどうやらさっき魔法を使った時、マシロとノアが喋ることにグラザムは気づかなかったようだ。
「それでリズ、どうするの? この男のことを許すつもり?」
全員の視線がリズへと注がれる。
そしてリズが出した答えは⋯⋯
「女神セレスティア様は仰いました。悪に染まった愚か者に天罰を与えよと」
「えっ? えっ?」
リズは右手を振りかぶり、グラザムの頬に向かって、おもいっきり平手打ちを放った。
「ぶげっ!」
グラザムはリズの平手打ちをまともに食らい、その場に崩れ落ちる。そして意識を失い、そのまま地面に倒れるのであった。
「それでいいわ」
「リズさんの一撃にスカッとしました」
こうして俺達はフレスヴェルグを倒し、反逆者であるグラザムを捕らえることに成功するのであった。
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