第34話 救出
リズを苦しめたリスティヒとグラザムに一発食らわしてやりたい所だが、俺には早急にやらなくてはならないことがあった。
「ユート様! お父様とお母様は!」
遮るものが無くなったリズは、両親の元へと駆け寄ってきた。
「かなり状態が悪いな」
「そんな!」
先程までは辛うじて話すことができ、意識もあったが今は瞳も閉じられている。
「大丈夫。俺が治すから離れていてくれ」
「お願い致します!」
特に国王陛下の方が衰弱が激しいように見えるな。
俺は国王陛下に向かって左手の掌を向け、魔力を溜める。
「
そして魔法を解き放つと、国王陛下の身体が光輝き始めた。
目立った傷はなかったけど、衰弱しているだけなら
そして俺は続けて王妃様にも
「これで大丈夫なはずだけど⋯⋯」
しかし俺の予想とは裏腹に、二人の目は閉じられたままだ。
意識が戻らないのは何か他に要因があるのか?
「うぅ⋯⋯」
「リズ⋯⋯」
しかし俺の心配は杞憂に終わり、二人はゆっくりと目を開き始めた。
「お父様⋯⋯お母様リズです。わかりますか⋯⋯」
「おお⋯⋯リズ⋯⋯心配かけたな」
「リズ⋯⋯またあなたに会えるなんて⋯⋯うれしいわ⋯⋯」
ふう⋯⋯何とかなったようだな。二人とも顔色は良くないが、話しが出来るようになっている。
「私もお父様とお母様に会いたかったです⋯⋯もう二度と自分を犠牲にして私を助けるようなことをしないで下さい。私がどれだけ心配したか⋯⋯」
「それは約束出来ないな⋯⋯可愛い娘のためなら⋯⋯この命など惜しくはない」
「そうよ⋯⋯あなたは私達の宝だもの」
「でもリズは⋯⋯お父様とお母様を失いたくないです⋯⋯うぅ⋯⋯」
リズは我慢出来なくなったのか、瞳に溜めていた涙が地面に零れ落ちていく。
「大人になったと思ったが⋯⋯リズはまだ子供だな」
「あらあら⋯⋯泣き虫な所は変わらないのね」
「お父様とお母様と一緒にいられるなら⋯⋯リズは子供でいいです」
この光景を見て、リズはとても愛されていることがわかる。そしてリズも両親のことが大好きだということがわかった。
俺も異世界転生前の家族のことを少し思い出してしまった。
「本当はこのままお父様とお母様の側にいたいです。ですが今はやるべきことがあるので私は行きます」
「わかった」
「気をつけてね」
やるべきこととはリスティヒとグラザムのことだろう。確かにあの二人がいる限り、本当の平穏は訪れない。
「すみません。お父様とお母様を安全な所へお願いします」
「はっ! 承知しました」
数人のレジスタンスのメンバーが、国王陛下と王妃様を城へと連れていった。
「ユート様。もう少しだけ私に力を貸して下さい」
「わかった。俺の剣はリズのために」
「ニャ~」
「ワン」
どうやらマシロとノアも着いていきたいと言ってるようだ。
「ふふ⋯⋯マシロちゃんとノアちゃんもありがとう」
リズは二人の行動が嬉しいのか可愛らしく笑った。
やはりリズには笑顔が似合う。
リスティヒやグラザムと対峙していた時のように凛とした姿も素敵だったが、俺はリズの笑った顔の方が好きだ。
よし! リズが笑顔でいられる世界を作るためにも、最後の詰めと行きますか。
「それじゃあ行こうか」
「はい」
「ニャ~」
「ワン」
俺達はリスティヒ達が逃げた方角へと向かう。
すると突然、レッケさんから声が上がる。
「リスティヒを捕らえたぞ! 後はグラザムだけだ!」
どうやらレッケさん達がリスティヒを捕らえたようだ。
まあ千人近くの人間に追われているんだ。逃げ
もしかしたらグラザムが捕まるのも時間の問題か?
俺の手で捕らえてやりたい気持ちもあるけど、誰かが捕まえてくれるならそれでもいい。
だが俺の思惑は外れることになってしまう。
「グラザムがいない!」
「こちらの通りに追い込んだはずなのに」
「忽然と姿を消してしまったぞ」
どうやらグラザムを見失ってしまったようだ。
まさかこれだけの人数がいて逃げられてしまうなんて⋯⋯
だが絶対にお前は逃がさん!
「マシロ、ノア。グラザムの居場所はわからないか?」
「微かに風が教えてくれますけど、周りに人数が多すぎて探知しずらいですね」
「僕も同じです」
「それなら兵士達は連れずに、俺達だけで追うか」
「わかりました」
ここまで来て逃がすなんてあり得ない。ここは人数より確実に追える手段を取るべきだろう。
「とりあえずどっちの方角かわかるか?」
「う~ん⋯⋯西側の方に向かっていると思います」
「よし。じゃあ急ごう」
俺達は兵士達から離れ西側に向かう。
するとレッケさんが俺達の行動に違和感を持ったのか、近づいてきた。
「リズリット様どちらへ!」
「私達だけでグラザムを捕まえに行ってきます」
「グラザムの居場所がわかるのですか! でしたら兵もお供に⋯⋯」
「いえ、人が多くなるとグラザムの居場所がわからなくなってしまうのです」
「⋯⋯わかりました。では私だけでもお供させて下さい」
こうして俺達はレッケさんも連れて、逃亡したグラザムを捕らえるために街の西側へと向かうのであった。
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