第29話 王都ローレリア
満天の星空を見た翌日。
俺達はローレリアへと辿り着くことが出来た。
ローレリアは帝国との国境と同じ様に、街が高い壁で囲まれていた。
まさか門から入る訳じゃないよな? そんなことをしたら一発で兵士に見つかってしまうだろう。
それならロープを使って壁を越えていくとか? だけどこれもリスクが高い。もし昇っている時に見つかったら無防備の状態で攻撃を食らうことになる。それともまさかジャンプで飛び越えるとか?
いやいや、それはないだろう。
俺はローレリアに入るための方法をいくつか考えてみたが、どれも間違っていた。
「壁の一部が隠し扉になってるのね」
一目見ただけではわからなかったが、壁を押すと扉が開き、簡単にローレリアに入ることが出来た。
「ここからは気をつけてくれ」
先を進むレッケさんから声をかけられる。
現在の時刻は昼過ぎ、多くの人が外出している時間だ。街の中に入れば人混みに紛れることができ、俺達の存在を隠してくれるだろう。
だからレッケさんの言葉が理解出来なかった。
だがその答えはローレリア側の扉を開けることでわかった。
通りにはほとんど人はおらず、いるのは兵士か数人の住民だけだった。
こんな所を外套を着た者が通れば、捕まえてくれと言っているようなものだ。
「王都っていつもこんなに人が少ないの?」
俺は気になって前にいるリズに話しかけてみる。
「以前はこの通りも人で溢れていました⋯⋯何故このようなことに⋯⋯」
「それはリスティヒが王位についたからです」
レッケさんが俺の質問に補足して答えてくれる。
「逆らう者は全て処分し、見目麗しい者は城に連れて行かれるため、住民は極力自宅から出ないようにしているようです」
「ひどいです⋯⋯叔父はムーンガーデン王国に住む人々を何だと思っているのですか」
「王族や貴族に仕える奴隷としか思っていないのでは。奴らの非道はとても許せるものではありません」
リスティヒは何を考えているんだ? 無理な税収をかけ、逆らう者は処分する。こんなことをしていては国が崩壊するのはバカでもわかる。もしかしたら他に狙いがあるんじゃないのか?
「それではリズリット様、ユート。こちらに着いてきてくれ」
レッケさんは表の通りを行かず、裏道をどんどん進んでいく。そして十分程歩くと一つの建物の前に到着した。
「ここが我らのアジトになります」
レッケさんが紹介した場所は路地裏にあり、昼間だというのに光が射し込んでいない。
なるほど。隠れ家として使うにはもってこいの場所だな。
「ではお入り下さい」
俺達はレッケさんの後に続いて建物の中に入る。
するとすぐに下に降りる階段が見えた。そして階段を下り切ると扉があり、レッケさんが開ける。
部屋の中は広い空間になっており、中には大勢の人の姿が見えた。
「リズリット様だ! リズリット様が戻られたぞ!」
「よくぞご無事で!」
「我らの希望リズリット様ばんざ~い!」
部屋にいた者達はリズに駆け寄ってくる。その光景にリズは驚き戸惑っていた。
すごい人気だな。
まあ可憐で優しい王女様なんて国民から慕われて当然だ。
今、この絶望した状況では本当に希望の光なんだろうな。
「お前達! リズリット様は旅で疲れているのだ! 離れろ!」
レッケさんの叱責により、ようやくレジスタンスのメンバーはリズから距離を取り始める。
やれやれ。人気者は大変だな。
「レッケさん、そこの青年は初めて見ますけど新しい仲間ですか?」
一人の男性が俺の方を見てレッケさんに問いかける。
「この子はユート⋯⋯リズリット様をここまで連れてきてくれた英雄だ」
「「「英雄!」」」
さっきまでリズに群がっていたレジスタンスのメンバーが、今度は俺の方に向かってきた。
「リズリット様を助けてくれてありがとう!」
「子供のクセにやるじゃねえか!」
「貴殿の勇気ある行動に感謝する!」
俺はガタイのいい男達によって揉みくちゃにされる。
その際、肩に乗っていたマシロはちゃっかり逃げ出していくのが見えた。
いたいいたい! この人達加減を知らないよ! どうせ囲まれるなら可愛い女の子の方が良かった。
「だからお前ら離れろ! ユートが嫌がっているだろ!」
「す、すみません」
レッケさんの命令で男達は俺から離れていく。
酷い目に遭った。何だか悪い夢に出てきそうな光景だったぞ。
そして悪夢から解放され少し落ち着いた頃。
リズがレッケさんに問いかけた。
「レッケ騎士団長。これからレジスタンスはどうするか決めているのですか?」
「このまま一気にリスティヒの首を取りたい所ですけど、まずは国王陛下と王妃様の居場所を見つける方が先ですね」
「お父様とお母様は何処に幽閉されているのでしょうか?」
「わかりません。ですが今各地に斥候を放っているので、近い内にわかると⋯⋯」
「た、大変です!」
レッケさんが言葉を言い終える前に、突如一人の青年が力強くドアを開けて部屋に入ってきた。
「ま、街で今これが⋯⋯」
青年は一枚の紙を持っていた。
「こ、これは!」
俺はその紙に記載している内容を見て、思わず驚きの声をあげてしまうのだった。
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