狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
マーラッシュ【書籍化作品あり】
第1話 狙って追放される
「貴様のような役立たずは勇者パーティーに必要ない!」
グラスランドの街にある中央広場で、突如怒りの声が発せられた。
俺の名前はユート。女神の力で日本から来た異世界転生者で、目の前で喚き散らしているのは、勇者であるギアベルだ。
ギアベルは世界は自分を中心に回っているという考えの持ち主で、手柄を立てれば自分のおかげ、失敗したら俺のせいにするどうしょもない奴である。
だが生まれ持った才能と帝国の皇子という特権があるせいで、諌める者もおらず、我が儘に育ってしまった。
「街の噂では、こいつがいないと勇者パーティーは何にも出来ないとか言われているけど、そんなことないしぃ」
「むしろ邪魔なのはユートでしょ? 何の役にも立ってない」
「ギアベル様の判断は正しいと思います」
パーティーメンバーである魔法使いのファラ、アーチャーのマリー、騎士のディアンヌが口を揃えて、ギアベルの言葉を肯定する。
この三人はギアベルの恋人でもあるので、俺への擁護などは一切なかった。本来なら断罪されて絶望に落とされる所だが、周囲に噂を流し、この状況を狙って作り出した者としては、ほくそ笑むしかない。
だが表に出すと、勇者パーティーを抜け出す計画に支障を来すかもしれないので、神妙な顔をする。
「そ、そんな⋯⋯俺は一生懸命パーティーのために尽くしてたのに⋯⋯」
「あれで? 雑用すら満足に出来ないお前は俺のパーティーには不要だ! 今すぐパーティーから出ていけ!」
「わ、わかった⋯⋯」
よし! 全て作戦通り!
公衆の面前で宣言したんだ。もう取り消すことは出来ないだろう。
「何だよ。噂は間違ってたのか」
「そうだよな。勇者であるギアベル様が役立たずのはずがない」
「役立たずはあのユートだったのか」
ギアベルが周囲の人達の声を聞き、満足そうに笑みを浮かべる。
後はギアベル達の元から去るだけだ。
だけどこの時、予想外のことが起こった。
「勇者パーティーだけではない⋯⋯お前は帝国からも追放だ! 二度と俺達の前に現れるな!」
予定していないことを口にされ、ギアベル達は去っていく。
ま、まじか⋯⋯まさか帝国から追放されると思わなかった。ギアベルの憎悪の感情を舐めてたな。俺がいなきゃ何も出来ないと言われたことが、予想以上にプライドを刺激したようだ。
帝国の皇子に逆らったらそれこそ面倒なことになる。ここは大人しく従うしかない。
俺は少しだけ落ち込みながら、帝国から去る準備をするため、自宅がある山奥へと向かうのであった。
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