理不尽嫌いの理不尽

霞玉兎

界越の渦

 ああ……なんて世界とは理不尽なのだろう。


 弱きを助け、強きを挫く。


 ……そんなものは幻想だった。


 弱きモノは強きモノに一方的に喰われるだけ。


 理不尽だ。


 父は事故で死に、母は目の前の強盗クソに殺され、私は今、その強盗クソに犯されようとしている。


 ああなんて……


 

「……理不尽だ」



 そんなとき、私の胸にひとつの感情が芽生えた。


 

 それは、私を



 それは、世界を



 私は迫り来る強盗クソに対し、体を進め、拳を握り、振り上げ、


 

 だが、はそれを許さなかった。


 強盗クソと私の間に突然現れた


 強盗クソに向かっていた私の身体はに触れ、沈むように呑まれていった。


 私の体はそれに触れた途端に力が入らなくなり、抵抗のひとつもできない。



 やがて私の全てが呑まれたとき、私は、



 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る