思春期ではすまない変化
こしょ
第1話・第2話
1
中学生になってからのこと、体が急に変な成長をして、親友が距離を取ってくるようになった。オレが女子になったのはそんなに問題か? 姿は変わったかもしれないが、心は何一つ変わっていないのだから、今まで通り接してほしい。
「いや、そりゃ無理だろ……」
クラスメイトの男子モブAが言う。
「なんで!」
「だって女子と男子じゃ意識しちゃうだろ? しかも、ただの女子じゃないし」
「そうかなあ、じゃあ、お前は? 普通に話してるけど」
「おれは、どうせモブAとしか思われてないから」
彼は終始明後日の方向に頬杖つきながら答えている。オレは慌てて弁明した。
「そ、そんなことないよ。そんなこと言ってるのはオレじゃないし!」
オレの体は変わった。意味不明ながら謎の奇病で大人の女性に姿が変わってしまった。そんなことがあっていいのか? 自分の面影なんて全然ないし、家族の誰にも似ていない。先祖をさかのぼればもしかしたらだけど、たぶん調べる方法はない。
平均的身長のモブAと話していても彼が見上げるほどに背が高い、たぶん170センチ以上はあるかな。なのに胸が大きすぎて足元が見えなくて怖い。女子の制服なんて着れないし元々の男子の制服すらうまく着れないから、ただの私服で普通の白いシャツを着て紺のズボンを履いている。
「俺はさ、氷室、お前がそんなになっても普通に学校に来れてるのが不思議だよ」
「まあ……それは……オレはオレだから」
オレは気にしないつもりでいる。
だけど、気にしてるのは周りの方だ。特に親友がオレと目を合わせようとせず、顔より下の方ばかり見ている。あれだけ一緒に遊んでいたのに。
「氷室、姿勢をちゃんとしなさい」
授業中に先生からそう言われる。ちゃんと、というのは足を開くなというのだ。背が高いから一番後ろの席だというのに、それでも気になって仕方がないらしい。まず椅子が小さいのはどうにかしてほしいって思うけどこれが一番大きい らしいし……。
「別に今何がどうなったというわけじゃないぞ」と先生は付け加える。「ただ、今の状態を自覚して、学校の外でその……あまり隙のある行動をしないようにしないとだからな」
生徒から、先生エッチ!とでも言われるかと思いきや、みんな神妙に聞いている。オレに対してそういう、配慮してあげようねというのが行き渡っていて、「茶化したらだめだ」となっているみたい。それはそれでなんだか腫れ物扱いで面白くない。
お昼になったので親友と一緒にご飯を食べようと声をかけた。
「トモキ! 屋上行こうよ」
今までよくそうしていたし、同じようにしたつもりだったが、トモキの方が同じように答えてくれない。
「悪いんですけど……僕は友達と食べるんで……」
ビクビクしたように彼は答えた。
「オレも友達だろ!」
そう言ったが、振り向かせることはできずに彼は行ってしまった。
多少落ち込んだ気持ちもありつつ、仕方がないので自分の席で弁当を広げて食べる。元々は男の頃から体がでかかったのだが、教室の椅子は自分には小さくて居心地が良くない。
女子が集まってきた。
「氷室くん、振られちゃったね」
「振られた、って何言ってんだよ、気持ち悪いな、あっちも友達との約束があったんだろうから仕方ないよ」
「うんうんそうだね、わかるよ」
わかってなさそうに女子は答える。オレは弁当を口に運びながら、左右の女子を見た。
「なんでずっとそこにいるの」
「氷室くん、なんで振られたと思う」
「さあ、わからないよ」オレは首をかしげて答えた。「というかもういいから、どっか行ってよ。邪魔だよ」
「あなたは中途半端なのよ!」
「なんだとぉ……?」
それを言った女子を睨むと目が合った。女子と目が合うとちょっと照れる。なんていったっけこいつは、アラキさんだったか。
「今照れたでしょ? あなたが感じたのと同じ思いをトモキくんも感じたのだわ。男子は女子と目が合うと照れる!」得意げに自説を披露する。
「! それは盲点だった」感心してしまったが、しかし大きな問題点もある。「じゃあどうしろっていうんだよ、もう親友には戻れないのか……」
「安心して! 私たちはみんなあなたのこと好きだから!」
「え?」
女子からストレートにそう言われるとドキドキしてしまうが、相手も昂奮して頬が紅潮している。つか周りの女子がペタペタ体を触ってくるのも気になる。
「あなたを最高の女性にしてあげるわ!」
「ん? え、なんだって? 気が散ってて良く聞こえなかった」
正しくは聞こえてはいたが、頭に入らない。
「逆にどんな男子も目を離せなくなるくらいにキラキラ輝かせてあげたいって言ってんのよ!」
「……??」
混乱していると、後ろにいる別の女子の声が聞こえる。
「まあ、要はあなたにお化粧したりおしゃれしてあげたいの、だって氷室くんったら理想の女性なんだもん」
「いや、あの……」
「いいでしょ、お願い~」
そういう甘え声が聞こえたり、体をわざとらしく押し付けてきたりする。さすがにドキドキするしおだてられたりするのに負けて、了承してしまった。
「あの、あんまり胸とか触るのやめてもらえますか。くすぐったいので」
「必要なのよ!(強弁)」
なすがままの時間が過ぎて、ずいぶんと化粧をされたりまつげをいじられたり。そのうちにいいよと声が聞こえたから目を開けてみると、なんとも厚化粧のやりすぎたギャルの姿が鏡に写っている。
「なんだこれは……」
アラキさんを始め女子の顔を見ようとするとみんな目をそらす。
「あたしたち……そんなにお化粧が上手じゃないから……だって普段からたくさんやってるわけじゃないし……でも、やってみたかったの!」
「やってみたかったじゃねえよ、どうするのこれ、先生に怒られるだろ、早く元に戻して」
「もったいない! ちょっとやりすぎたけど、でもかわいいよ、まず素材がいいし、私は好きだし。使った道具だって高かったんだから! 先生なんて氷室くんには何も言わないよ!」
かわいいかわいいと押し切られてまた言うがままになってしまった。これでいいのかオレは?
休憩が終わるので戻ってきたクラスメイトたちが、オレを見ると一瞬ぎょっとして、すぐ見なかったことにして席に戻っていく。トモキも同じだったので切なかった。オレははずかしくて顔から火が出るかと思った。アラキの方を見ると、にやにや笑っていて、やっぱり騙されたんだと思った。先生も同じように何も言わなかったが……。
「もうやらない! 早く戻して! 家に帰れないから!」
待ちに待った放課後になって、またおもちゃにされる前にさすがに怒った。
「ごめん、ごめん」とアラキたちは謝った。
「ちょっと調子に乗っちゃった、つい嬉しくなっちゃって。今度はうまくやるから」
「今度とか言うな!」
やっとのことですっぴんに戻ることができた。まったくたまらないよ。トモキは逃げるように帰ってるし。オレももう帰ろう。
帰り道に商店街をとぼとぼと歩いていると声をかけられた。またナンパだ。また。男から声をかけられるのはよくあるのだが、高校生とかでも怖いし、大人も怖い。しかも、相手は相手でこちらのことを「お姉さん」なんて呼んでくる。オレはお姉さんではない。視線が、オレの顔の下なのもムカつく。トモキと同じだ。だからいつも走って逃げる。足は速い方なのだ。
しかしその日の相手は大人の女性だったのでとりあえず様子見で即座に逃げるのは思いとどまった。
「オレ……じゃなくてボクに何の用ですか?」
「ボク!? あいえ……よかったら……お名前を教えてもらえませんか」
「氷室雪ですけど」
「かわいい!」
やっぱりちょっとコワい。なんなの?
「あの、ごめんなさい、帰りますんで。さようなら」
走って逃げた。本当に嫌な毎日だ。
家に帰ったらお母さんがいるが、オレが帰るといつもびっくりされる。まあそれは気にせず、自分の部屋でネットゲームを起動する。
対戦ゲームでもあり協力ゲームでもあるのだが、トモキもフレンドでいる。
「や! 今日はどうする?」
チャットで話すと、これをやろうあれをやろうと返ってくる。トモキは当然リア友だが、あとの二人はどこの誰かも知らない。でも大事な友達だ。
「トモキ(正確にはハンドルネーム)がね、学校で話してくれないんだよ最近、ほんとに腹立つよね」
そういうと、いつも大人っぽい感じのサヤ師さんが答えた。
「なに? トモキとユキ喧嘩中なの? それは良くないなあ、でも今は普通に話してるじゃん」
するとトモキはムキになったような感じで言い返してきた。
「別に喧嘩なんてしてないよ! ただちょっと……事情があるんです! 仕方なく!」
「複雑なんだね……」
「思春期かな?」
もう一人のフリスタさんが口を挟んだ。
「違うから! まず俺はホモじゃないし!」
そう言われるとオレの方はさすがに不愉快になった。学校でもネットでもこんな感じなんて……。それで、しばらく喋りもせずにゲームをした。
すると、見かねたサヤ師さんが「もう、仲直りしようよ」と言った。「私は事情を知らないから、どっちが悪いのかなんて全然わからないけど、今はゲームして楽しんでる時間なんだから、仲良くしましょう?」
……こうなると、仲良くしないとゲームが進まない。でも、オレはなんにも悪くないと思うんだ。だからこちらから謝ったりしたくない。
気まずい気まずい時間が続いた。トモキはついに耐えかねて「もういいよ!」と文字を打つと、ゲームを切断した。
「なんなんだろうね、あれ」
フリスタがぽそっとつぶやいた。
「どういったらいいのかな、おかしいんですあいつ」
「心当たりはあるの?」
「はい、ああ、まあ……オレの体が女になったからっていうのはあるかな……」
そう言うと、「!?」「!?」と二人が同時に文字を出した。
「なにそれ? なにそれ、興味津々なんですけど」
サヤ師が身を乗り出すみたいに積極的になってきた。
「急にそうなっちゃったんだ。結構私たち近所だったよね? もしよかったら、今度会わない? フリスタさんも。女子会ってことで」
「二人は女子だったんですか?」
「自分は違います」とフリスタが否定した。
「ああ、まあ、女子会はともかく、どう?」
仲のいい人たちと会ってみたさはもちろんあるので、オレもすぐ乗り気になった。フリスタさんもそのようだ。
「でも、トモキは……」
「まあまあ、今回はとりあえずこの三人にしましょうよ。また次の機会に誘ったらいいし。今回は、ちょっとユキくんが心配だからそのために会いたいってことで。でも三人で会うってことは伝えておくね」
「その方がいいのかなあ、なら隠したままでいいような気もするんだけど」
「それは……ユキくんは隠したままにできるの?」
「ちょっと無理かも」
「じゃあ、私がうまく説明しておくからね」
心配はあったけど仲良しのサヤ師を信じているので、とりあえず任せていいかな。週末に会うということで、明々後日、その間は学校でもトモキに会うしなんならその時に話せばいいかと思った。
2
「聞いたか? 今度土曜日にあの人たちと会おうってことになったんだけど」
そう学校で話すと、トモキはちょっと嫌そうな顔をする。
「別に、勝手にすれば」
そう言ってまたオレから離れて自分の友達と合流していった。なんだよ、あれ。あっちに行ったら行ったでトモキたち、こっちを見ながらひそひそ話をしている。トモキの周りの友達たちは興味津々って感じの表情だ。嫌な顔をしたいのはこっちだ。
すぐに週末は来た。それまでの間、トモキもネットでなら、チャットでなら多少は話してくれるんだが、結局こないだのこと謝るとかはなくて、そういうことならこっちだって、別にいいけどって感じ。……ほんとは良くないんだけどトモキたち近づくの迷惑みたいだし……。
オレは気が小さくもないのに傷心の心持ちで、駅の待ち合わせ場所で待っていた。もうすぐ着くよ!とメッセージが来た。慌てて周りを見たが、あくまでもうすぐなんで、まだ着いてない。気持ちがソワソワしてるから、念の為にトイレに行った。ギリギリになる前に行った方がいいみたいなので。戻ったらちょうど二人が来ていた。同時に来たのかな?
「驚いたよ! あなたがユキくん?」
「そうですけど、サヤ師さんですか?」
「は、はい。初めまして。あ、サヤでいいです……」
「ずっと一緒に遊んでたのに、緊張しますね」
「ええ、そうですね。緊張したのはそれだけじゃないけど……」
サヤ師は大学生らしく、身体はオレの方が全然大きいけど、やっぱり本物の大人の感じがする。
もう一人のフリスタは自分が女ってのを否定してたけど、普通に女に見える。でも服装がちょっと男っぽい。美少年だと言われたら信じてしまいそうだけど。たぶん、歳はオレと同じくらいだろうと思うが自信はない。
「どうも……」とフリスタは頭を軽く下げた。声は低めだった。
ネットではクールなイメージだったけど、実際会うとやはり言葉少なで表情が硬いように見える。
オレは若干戸惑った。初めてこうして会ってみると、色々とやはりイメージの相違がある。相手も戸惑っているみたいだ。
「まさか、こんな大人の女性だったとは思いませんでした」サヤ師が見惚れたように言ってきた。
「え? オレのことですか? オレは中学生ですよ」
「いや、どう見ても……えっ、中学生が本当にそんな姿になっちゃったんですか? あっ、あの、聞いてはいましたけど、そこまでとは……」
と、言ったところでサヤ師はオレがちょっと落ち込んでいるのに気がついて、謝った。
「ごめんなさい、つい余計なことを言ってしまって……」
「いいですよ。まあみんな同じように驚くので」
そうオレが答えると彼女はますますすまなそうな様子になった。その間にフリスタが口を挟んだ。
「まあ、話はどっか入ってからゆっくりしましょうよ」
身体は小さいけど落ち着いた大人の態度で話すので、かっこいい……!ってオレたちは尊敬の目で見た。でもどこ行くか誰も何も考えていなかった。天気は良くて暖かいから、適当に歩いた。駅の近くはネットカフェがあるからあそこでもいいけど……。
フリスタが提案したので、ファミレスに入った。それで落ち着いて、自分たちのことやあれこれを話すことができた。
「ああ、なるほど、それはトモキくんが悪い」
「そうでしょ?」
サヤさんが言ってくれて、やっぱりそうだと思った。急にああいう態度なんだもん。
「でも、彼も戸惑ってるのよ、さっきの私みたいに。外見にびっくりしちゃったのね」
「……それは……まあ……そうかもしれませんが。でも、いつまで戸惑ってるんだって話ですよ!」
「……トモキくんは男の子なんでしょう?」
「そうだよ、あんな男らしくないやつでもね!」
「それじゃ普通はしょうがないかもね~……」
オレは不満で口を閉じた。サヤさんがそれを見てまたあわあわした。この人は、大学生なんだそうだけど、ネットのいつも落ち着いた大人な印象と違って意外と子供っぽくてかわいい、とは思う。でも今はこれじゃ頼りないな……。
一心不乱にデザートを食べてたフリスタが、喋るには重そうな口を開いた。
「君が大人で美人すぎるからいけないのよ」
「えっ」
「中学生男子なんて性欲しかない動物なんだから、そりゃ変なことばかり考えてるのよ、普通は……ね。だから」
オレはその言葉が疑問に思った。
「オレだって中学生だし、フリスタさんもそのくらいじゃないの?」
「私は男子じゃないし! あ……いや……」
自白というか自爆して、フリスタも黙ってしまった。サヤは笑った。
「フリスタちゃんは女の子だよね」
フリスタはぷりぷり怒った。
「もう、余計なこと言わないでよ! お姉ちゃん!」
「二人は姉妹だったんですか?」
彼女たちは笑った。
「そういうわけじゃないよ、ただ仲良しだからお姉ちゃんって呼んでくれてるのよね。ユキくんよりは少し前にネットで知り合ったのよ」
なるほど、二人は前からよく会っていたのだな。女同士だから、話が合ったのだろう。なるほどなあ。と思いつつちょっとそれは疎外感があった。だっていつも四人で遊んでたのになあ。
でもそれは、今オレがトモキにしてるのと同じだ……こういう、仲間外れみたいなのってなぜか嫌なんだ。
「なんで落ち込んでるの?」
フリスタが聞いてきた。
「やっぱりトモキも連れてくればよかったと思って」
「だめだめ、今日は女子会だから。男なんて混ぜちゃ」
「なんでだよ」オレは少しムッとして言い返した。「オレだって男だし、フリスタだって男みたいな格好してるじゃん」
「ばっ、バカ、こういうのは……中性的っていうのよ。あんたはガッツリ男物着てるけど」
「そうなの?」
サヤさんに向かって聞いてみると、まあそうかもねと曖昧に答えられた。
「それはともかく……本題に戻るけど、本当にユキくんって男の子だったの?」
「そうだよ」
「中学生だったよね」
「うん」
「さっきもフリスタちゃんが言ったけど、それは中学生には毒よね……言いづらいけど、はっきりいうと、あなたの姿を見ると……中学生はえっちなことしか考えられなくなるのよ!」
「なっ、なんだって!」
なんだって……。そんなことある? オレは男だぞ。
「まあ男性みたいな格好してるけど、なんか逆にスーパーモデルかなってなるし。谷間ちらちら見えちゃってるし、揺れてるし」
胸に関しては、下着は一応つけているんだが、確かに大きさが隠しきれないし、暑苦しくて服装もゆるくしてしまう。そのせいで興奮するのか?
「顔もすごい美人だし。メイクもしてないのに……。こんなん……学校行ってるより今すぐアイドルかモデルに専業してほしいくらいだよ!」
「いやオレ……男だし……中学生だし……」
うーん、とサヤが唸った。「そう……なのよね……中学生だなんてとても信じられないけど……。でも、ずっとネットで一緒にいたから、間違いなくそのユキくんだってことはわかる。ともかくまずは現状を認めた上で、そこからどうするべきか考えないといけないわね……」
「どうしたらいいの?」
「とりあえず露出を可能な限り少なくするか……」
「ええ? これから夏が来るんだよ!」
「せめて胸元だけは……こう……」
サヤがボタンを止めたら逆に弾け飛んだ。
「あ、あはは……もうちょっと大きい服を着ないとだめみたいね……」
「いっそ扇風機がついてる服にしたら?」
横から見てたフリスタが言った。
「……それだ! ……それかも?」
「いいね! かっこいいし」
やっぱりフリスタさんなんだよなあってふたりは思った。
その後はカラオケに行った。声変わりのせいで声が違いすぎて、歌うのに今はちょっと苦手意識ができている。それもあって、途中からは一緒にゲームをしていたけど楽しかった。
なので途中でトモキを呼ぼうとしたが、トモキには断られてしまった。
「やっぱり避けられてる……」
「まあまあ、あちらはあちらの用事があっただろうから」
サヤさんが慰めてくれた。でも、もしかしたら、オレは女子側につくかかトモキ側かを選ばないといけないのかなと悲しく思った。
「なんでよ、別にいいじゃない、こっちは誘ってあっちが断ったんだから。選んだのはトモキくんでユキくんがそれ以上何かする必要なんてないし」
フリスタが強い口調で言った。
「そうなのかなあ」
「そうよ……」
楽しい時間が終わって一人家に帰ると、またお母さんが驚いた。いつまでもぼくの姿に見慣れない。
後でフリスタから電話がかかってきた。
「どうしたの? こんな遅くに」
今日会った二人とは連絡先を交換していた。
「あのね……」とフリスタが歯切れ悪く喋る。「今日は楽しかった……。私、あんまりリアルで仲のいい人いないから……また遊んでくれる?」
ぼくはドキドキしてしまった。フリスタは不思議な感じの人で、考えてることがよくわからなくて、ある意味では話しにくい。普段もそうだが、サヤさんがいなかったらどうしていいかわからなかったかもしれない。そのフリスタがこんなに素直な気持ちを話してくれるとは思わなかった。
「うん、いいよ! いつでも声をかけてよ!」
ぼくはそう返したのだった。
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