第二回短歌・俳句コンテスト/二十首連作部門/『さよなら、ウェンディ』

草村

さよなら、ウェンディ

玄関に花を飾ろうそれだけの決意が必要だった午後の日


風向きは気にしないから教えてね太平洋に船を出したら


祝福と呪いと明日と詰めました好きでしょう君たっぷりどうぞ


明日には大人になってしまうからティンカーベルの最期は知らず


いつの日か叶えたかった夢だけど誰かのそれを模倣していた


いつだって君がいいと言われたい願ったままで大人になった


似ていると謗られるなら最初からふたごのように似ていたかった


ありふれた言葉ばっかり使う日々何も伝えず大人と呼ばれ


今もなお少女であって悪いだろうか男はずっと少年なのに


似通った言葉ばかりが並んでるショーケースから慰め探す


おめでとう選ばれましたあなたですその祝砲に耳を塞いだ


永遠に大人でないといけないと絶望した日大人になった


六月の花嫁になる君がいて招待状は届かないまま


甲高いはしゃいだ声に足を止めそちら側ではないことを知る


あの星を目印として進むこと どこへ向かうか知ってる証


アナベルへ 今日も明日もこの花と二人揃って庭で待ってる


花を摘む指先につく青臭さ忘れた君は花の匂いだ


五時がきて別れを告げた友がいて零時を過ぎて会う友がいて


置いていくそれを罪とは言わないで誰でも背負う傷痕だから


さようなら 向こう側から手を振って笑う唇形で読んだ


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第二回短歌・俳句コンテスト/二十首連作部門/『さよなら、ウェンディ』 草村 @ksmr155

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