第43話 意外な人物は?
「真木さん!莉緒は?」
「さっき電話があって、しばらく休ませてほしいと…」
仕事が好きで責任感の強い莉緒が言ったとは思えないセリフに驚いて、言葉を失ってしまった。
「実は神原様、お父様の方から白波を辞めさせろとお電話がありました。ですが、このような時代ですので理由もなしに辞めさせるのはおかしいと言うことになって白波には伝えてはいません」
「そんなことを…すみません親父が無茶なことを」
「ただ、神原様とのお付き合い上、少しほとぼりが冷めるまで業務からはずしたほうがいいと言う声もあったので、いいタイミングなので休暇として許可しました」
「でもなんで休みを…」
「詳しくは聞いてないですが、有給もほとんど使わないような子なので気が済むまでゆっくり休んでいいと伝えました」
真木さんの電話を終えるともう一度莉緒の電話にかける。電源が入ってないのか機械的なアナウンスの声が聞こえてくる。就業時間が終わって、莉緒のマンション前で待ってみたけれど会えることはなかった。
勇太のプレゼントを買おうと電車に乗ると週刊誌の中吊り公告に見慣れた名前が並んでいる。結婚か?の見出しに驚いたけれど、勇太の気持ちを聞いた後だけに不思議と焦ったり、気持ちが揺らぐことはなかった。プレゼントを選ぼうとお店に入ろうとした時、かかってきた電話の人物の誘いでお宅におじゃますることになった。
「悪かったね、わざわざ来てもらって」
「いえ、この間泊まらせていただいたのにお礼もできてなくて…落ち着いたら一度ご挨拶に伺おうと話してたんです」
「勇太とかい?」
「はい」
「勇太とは…うまくいってるのな?」
「…どうでしょう。でも勇太さんの気持ちはちゃんと伝えてもらいました」
「あとは莉緒ちゃんの気持ち次第かな?」
「……はい」
私の返事を聞いて、勇太のおじいちゃんが優しく笑った。
「今日来てもらったのは、うちのバカ息子がまた無茶をして、莉緒ちゃんを困らせようとしてるから、被害にあわないように保護しようと思ってな」
「保護…ですか?」
「それといろいろ準備もあってな、仕事は休めるかい?」
「えーと…」
「休みたくないとは思うがどうやら息子がホテルに連絡して莉緒ちゃんを辞めさせようとしたみたいでね。事態が落ち着くまで休んだほうがいいと思うんだ」
「わかりました、上司に聞いてみます」
真木さんに休みたいと伝えると、いい機会だからゆっくり休んでいいと言われた。真木さんがあえて、何も触れないところを見ると問題が起きてるのは確かだろう。
「休んで大丈夫みたいです」
「そうか、それは良かった。じゃあ、まずは食事をしよう。腹が減ってはなんとやらだ。」
おばあちゃんが作ってくれた美味しいお昼を食べて、準備のためだからと言うおじいちゃんとおばあちゃんと私の3人で出かけることになった。
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