第26話 迷惑かけたくない
「真木さん、あの、ちょっといいですか?」
年末進行の仕事の準備や指示で忙しい真木さんが席に戻ってきたタイミングでコーヒーと一緒に声をかけた。
「ありがと~どうした?なんかあった?」
「ここだと…」
「わかった」
話しづらそうにしてる私に気づいて、だしたコーヒーを持って会議室に移動してくれた。
「ここなら大丈夫でしょ、何でも話して」
会議室の椅子に座って、コーヒーを飲む真木さんが優しく話しかける。
「この間から、少し様子がおかしかったから、心配してたんだ」
「…」
「岩名くんも気にしてたけど、莉緒ちゃんが話してくれるのを待とうって2人で決めてね」
「はい」
「話せそう?」
小さく深呼吸して頷いた。
「神原様と西園様の結婚式の担当を外れたいんです」
真木さんが驚いた顔で私を見た。
「もしかして知ってるの?」
「はい」
「神原様?西園様?」
「神原様です」
「そう…」
真木さんが今の部署に引き上げてくれた時、私の経歴に違和感を感じて、何があったかを聞かれたことがあった。詳しく話したわけではないけれど、付き合っていた人の父親に交際を反対されて、いろいろあって、会社をやめて別れたと言ってあった。
「深いとこ聞いてもいい?」
「…はい」
「前に言ってた人…が神原様ってことであってる?」
「…はい」
「わかった、一旦預かるね」
「…」
「まぁ、まだ日取りも決まってないし、神原様に至っては結婚するつもりもないみたいだし、今すぐ外れることないよ」
「でも…」
「何が心配?神原様の気持ち?莉緒ちゃんの気持ち?」
「それは…私のせいで真木さんに迷惑をかけないか…それが心配です」
「迷惑って、何かされるってこと?」
「…」
「うん、わかった。とりあえずこのままで何かあったら、その時考えよう」
「はい」
会議室をでて、すぐ仕事のために外に出た真木さんは退社の時間が過ぎても戻って来なかった。岩名さんが先に帰っていいというので部屋から出ようとした時電話がなった。
急いで電話を取ると、西園様だった。明日どうしても話したいので時間をとってほしいと言う。岩名さんに確認を取ると大丈夫と言うので時間を伝えて電話を切った。
「急になんだろうな?」
首をかしげる岩名さんの横で、私は不安を隠しきれなかった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます