第13話 偶然から知る真実

「柴崎教授とはどんな関係なんですか?」

「中高の同級生でな、数少ない気の合う友人だよ。こっちで学会があるから、顔見に寄ったんだ。講義が終わったら、飲みに行く約束で時間つぶしてたとこだ」

「こんな偶然あるんですね」

「ああ、お前の顔見た時、脳がバグったのかと思ったよ」

豪快に笑う教授は、昔と少しも変わらない。

「それより白波は元気か?相変わらず仲いいんだろ?」

「えっ…」

 ゼミの送別会の時の、付き合い出したことを教授に報告すると "くっつくのが遅すぎだ、こっちがイライラするわ“ とからかわれた。でも "お前らはお似合いだよ、感覚も感性も“ なんて嬉しいことを言ってくれた。

「まぁ、会社のことは、運がなかったとしか言いようがないよ。辞めさせられたって聞いた時は、腹が立ったけどな」

「やめさせられたって…?」

「あれ、お前詳しく聞いてないの?」

「自分でやめたとしか」

「そうかー、あいつも言いにくかったんだろ。社長から一方的に言われて、会社が潰れかねないって言われたらな」

「…」

「言い返すほどの力があるわけでもないし、俺に相談してくれたら対応できたんだが俺が知ったのはだいぶ後で、社長もよく知ってるから、怒って電話かけたんだ」

「…」

「申し訳ないの一点張りでな。大口の会社で、グループ関連の仕事全部引き受けてるから、その会社に手を引かれたら、あいつの会社なんて一発で吹っ飛ぶよ。だから白波に頭下げて辞めてもらったって言うのも仕方ないんだろうけど…」

「…けど…なんですか?」

「なんでその大きい会社が白波をやめさせることに固執したのかが謎でな。社長も、仕事で関わったことのない白波を名指しだから、不思議がってたよ」

「教授…その大きな会社…どこか聞きましたか?」

「あー、聞いたけど、言えないって。会社側から口止めされてるんだろ」

 嫌な想像が頭をよぎる、そうである証拠はないけれど、そうでない証拠もない。

「神原?大丈夫か?顔青いぞ」

「…大丈夫です」

取り繕うように答えるしかなかった。

 

 その後、柴崎教授と会うことができ、仕事の話も白川教授の口利きもあってOKをもらえた。2日目に思わぬ成果も出て、本当なら大喜びなのに、彼女の話を聞いて、晴れることのない気持ちに行き場はなかった。

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