冤罪で「犯罪者は要らない」と家から追放され、高校からは理不尽に退学されられました。転校先では理解のある美少女たちに囲まれながら、クズな人間を全員ざまぁしていきます。
第15話 金堂 エリナから見た新木 守。
第15話 金堂 エリナから見た新木 守。
アタシ――金堂 エリナは新木と新聞部で一通りの話を聞き終えてから、いつものルーティンである病院へと向かった。
いつも通り受付で手続きを済ませ、いつもの病室に入ると、母親のエリーは眠っているところだった。
アタシの母親は日本生まれじゃない。父が日本人。だからハーフってことになる。名前がカタカナなのもそのためだ。
けど、決して嫌なんかじゃない。むしろ大切に思ってる。母さんが自分の名前の面影も残しつつ、日本でも浮かないようにと考えて日本人っぽくつけてくれた名前だから。
てか今日、勢いで新木に名前で呼んで欲しいとかいっちまった……なんか照れる。
逆に苗字の方は好きではない。あの、クズな父親の性だから。
アタシの父親は酒癖が悪く、毎日酒を飲んでは暴れて、物を破壊したり、アタシや母さんにすぐ暴力を振るった。酒癖だけじゃない、女癖も悪く、毎日キャバクラに金をつぎ込んで借金を作りまくっていた。
今では離婚して、母さんもアタシもアイツとは完全に縁を切っている。けど、その頃の影響で母親は精神を病み、身体も弱くなって入院してしまった。
アタシは今、バイトでお金を稼いで1人暮らしをしている。貧乏で苦しい日々ではあるけど、クソ親父が居た頃と比べたらよっぽどマシだった。
毎日学校が終われば病院に来て母さんと話す。バイト先でもいい人たちに恵まれて、楽しく続けられている。
学校だっていい友達が周りにいて、毎日が充実していた……1年生の頃までは。
2年になって担任が変わった。油婆 美和子という中年の女性教師だ。コイツは正真正銘のクズだった。生まれて初めてクソ親父に匹敵する悪人を見た。
油婆は初めて教室にやって来た日、アタシに言った。
『なんですかその髪色は! 不愉快なんだよおまえ! 今すぐ黒染めして来いクソ不良の阿婆擦れが!!!』
けど、アタシはその後も髪を染めることはなかった。
アタシの金髪は、染めているわけではない。母の血を受け継いでいる地毛だ。だからこそ大切に思ってたし、貶されたことが許せなかった。そもそも生活するのがギリギリで、髪染めを買うのだって苦しい状況だったし、規則を破っているわけでもない。
それから油婆に目を付けられたアタシは、不良だとか売春をやっているだとか根も葉もない噂を立てられて孤立した。
同じクラスの水無月と静原だけは話しかけてくれていたが……こんな思いをするのはアタシだけでいいと思ってわざと遠ざけていた。
きっと卒業するまでずっと、アタシは不良の烙印を押されて生きることになる。油婆の暴言に耐えながら、心を無にしてやり過ごせばいい。そう思ってたけど――
「エリナ……来てたの? ごめんね、寝ちゃってたみたい」
「母さん……! いいんだよ、ゆっくり休んで」
母さんが目を覚ましたようだった。アタシは母親の手を両手で握りしめる。
「エリナ、なにかいいことでもあった? なんか、嬉しそう」
「へっ?」
母さんに言われ、放課後に新聞部の部室で部長を待ってる間に新木に言われたことを思い出す。
――髪、染めるの? せっかく綺麗な色なのに……。
「あっ、いや……」
「おっ、エリナちゃん顔真っ赤だぞ~。もしかしてもしかして~」
「ちょっ、母さん! 違うから! そんなんじゃ……」
たっ、確かにめっちゃいいやつだし、顔だって結構タイプだし、アタシが困ってるときいつも助けてくれるし……。きっ、気になってはいるけど……別にそんなんじゃ!
「とっ、友達が……友達がね! 髪色を褒めてくれたんだよ。母さんと同じこの髪色を、綺麗だって――」
#
その帰り、アタシは学校に戻ると職員室に入り、油婆から強引に手渡された髪染めの箱を突き返した。
「アタシ、髪染めませんから」
「なっ……!」
油婆は呆気にとられたような表情を浮かべ、その後もグチグチと嫌味をまくし立てていたが、無視をして職員室を出た。
これが、反撃の第一歩だ。
学校を出ると、新木から連絡が入っていた。以前、彼の住んでるマンションにお邪魔したとき、メンバー全員でチャットアプリのアカウントをそれぞれ登録したんだ。
≪新木 守≫今日の夜、新聞部で聞いた話をグループ通話でみんなに共有しようとおもってるんだけど、もし時間があったらエリナさんにも協力してほしい!!
アタシは気付くと笑みを浮かべていた。
新木と一緒なら、アタシはもう一度……失ったものを取り戻して、やり直せるかもしれない。
≪エリナ≫もちろん! これからもずっと新木に協力するぞ!
そんなことを考えながら、アタシは彼にメッセージを返信した。
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