10_礼儀知らず

 その日、妙に胸が痛い気がしたが、なんとか私は起きて、外出した。


「おはよう」


 近所に住む若者に挨拶をするが、無視された。お隣さんの奥さんまで、私を無視する。


 なんて礼儀知らずだ。挨拶を無視するなんて。


 イライラしたので散歩をする。少し先では、近所の主婦たちが立ち話をしている。


「大変だったそうね、あのお宅。心臓発作で、突然亡くなったそうよ」


 私はハッとして立ち止まった。


 あぁ、思い出した。


 私は昨日、死んだのだ。

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