第14話:こんにちは、おナベちゃん。
圭介が交通事故に遭遇したにも関わらず、学校どころかクラスの連中は誰も
見舞いに来なかった。
何人もの生徒が見舞いになんか来られたら、それは瀕死の息子が可哀想と、
啓介の母親が学校にも誰にも報告してなかったからだった。
まあ、圭介からしたらそのほうがありがたかったんだけど・・・。
元気になってからもリボンちゃんといられたし。
学校を休んでる理由はよくある一身上の都合ってやつ。
父親は出張で家を留守にしていたので忙しかったらしく結局病院へ
見舞いに一度も来なかったけど出張から帰ったあと圭介のアパートに尋ねて
きて元気そうな圭介の顔を見て安心して帰って行った。
男の父親なんてそんなもん・・・気持ちの上では心配してくれているんだろう。
さて圭介のことはクラスの生徒には知られないで済んだが、それでも圭介が
学校を休んでるっていうんで、若干一名、様子を見に彼のアパートにやってくる
物好きもいたりする。
「水炊 鍋夫 《みずたき なべお》」って牛乳瓶の底みたいなメガネをかけた
圭介とは正反対でひょろ〜っとした頼りなさそうな男だった。
それでも圭介とはなにかと気が合って仲がいいほうの友人のひとりだった。
わざわざ来なくていいのに迷惑にも彼はやってきた。
玄関のドアホンなんか丁寧に鳴らすわけがない。
勝手知ったる他人の家、水炊君は、声すらかけずにズケズケと家の中に
上がってきた。
「圭介・・・いる?」
そう言って水炊君は図々しくリビングにやってきた。
「いや〜、おまえがさ、ずっと学校休んでるからさ・・・どうしてる・・・」
そこで水炊君が見たもの・・・いや人物、いや女性、しかもふたりも・・・
「え?・・・あ、ごめんなさい」
水炊君は目に前の状況を把握できず、ちょっとパニクった。
「これは・・え〜と、マズかったですかね」
「どちら様?」
リボンちゃんが言った。
バレッタは私は関係ないよねって顔をしていた。
「あのバカな質問って思うかもしれませんけど、ここ藤井 圭介の家ですよね」
「そうだよ・・・もしかして圭ちゃんのお友達?」
「はあ・・・あの僕、
「みずた・・・なべ?」
「まあ・・・こんにちは、おナベちゃん」
「はい、え?おナベちゃん?・・・あはは、よろしくです、おネエさん・・・」
「おナベちゃんは圭ちゃんのお見舞いにいらっしゃったの?」
「お見舞い?・・・お見舞いって圭介なんかあったんですか?」
「ああ・・・本人のクチからお聞きになって?、今呼ん来るから」
「どうぞ、ソファにでもお掛けになって、おナベちゃん」
「あ、私、天使やってるリボン・ヘブンドールって言うの、よろしく」
「ついでに言うと圭ちゃんのセックスフレンド・・・」
「セ、セックスフレンド・・・まじで?・・・セフレ?」
「まだエッチしてないけどね・・・ちょっと待ってね」
そう言ってリボンちゃんは圭介の部屋に彼を呼びに行った。
「今、天使って言った?」
二人だけ取り残されたバレッタと水炊は気まずい空気に、どうしたらいいもの
か戸惑っていた。
「あの・・・水炊です、どうも」
「どうも、私バレッタ・・・よろしくね、おナベちゃん」
「おナベちゃんって、あなたもですか?・・・まあ、いいですけど・・・
間違ってないから・・・」
「あたなも天使さんなんですか?」
「そうだよ、おナ〜ベちゃん」
バレッタは満面の笑顔を芳香剤みたいにそこらじゅうに振りました。
(わお〜〜〜〜〜天使ってメッチャ可愛い・・・って)
「けいちゃ〜ん、おナベちゃんって人が来てるって?」
大きな声で呼ばなきゃならないほど広くないし・・・。
トイレに入っていた圭介はリボンちゃんと一緒にリビングにやって来た。
「あ、圭介・・・よかった・・・おまえが学校休んでるから・・・」
「それで様子を見に来たのか、ナベ」
圭介は水炊君を見たら、鍋料理が食べたくなった。
「悪い悪い・・・それよりなんで俺の家に可愛げな女の子がふたりもいる
んだって、おまえの顔に書いてあるぞ」
「おお〜それだよ、このさいおまえのことはどうでもいいわ」
「ここにいる、可愛い女の子たちは誰?・・・おまえとどう言う関係・・
従兄弟とか?家政婦さんとか・・・メイドさん雇ったってのはなしでな」
「従兄弟は使えるけど家政婦雇う金なんかないよ」
「言っても信じないだろうけど・・・話してやるよ」
そこで圭介は今までの一切を水炊に話してやった。
水炊君はしばらく何も言わんかった・・・一生懸命ありえないようなことを
理解しようとしていた。
「よくできた話だな・・・圭介・・・ファンタジーが書けるぞ、おまえ」
「ほらな、信じないだろ?」
「まあ、俺も最初はリボンちゃんを見たとき信じられなかったけどな」
「天使って・・・まじでいるんだ?、それもこんなアイドルみたに可愛い
天使が・・・」
「もしかして天使って、みんなこんなに可愛いのか?」
「いや〜、俺はリボンちゃんとバレッタちゃんしか知らないからな・・・」
「お鍋ちゃん、あなたの目の前にいるのは紛れもなく天使だよ」
「そして私は圭介さんの完全無欠の彼女で〜す」
「え?セフレじゃないの?」
リボンちゃんはお鍋ちゃんに向かってピースサインをした。
つづく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます