第3話:もうひとりの藤井 圭介。
そしたらリボンさんは後ろを向いてスマホらしきもので誰かと話をしていた。
「少し待ってね〜・・・新しいデータ送ってもらって再確認するから」
「あの、あなたを救済に来た理由なんだけど私、上から指定された人を救済
しないとエボンリルに帰れないのね、それが授業の課題のひとつで救済が
必須科目になってるの」
「え?・・・授業って?・・・君も学生かなんか?」
「そうだよ・・・私、まだ二級天使だから・・・」
「二級天使?・・・〜で? なんで救済対象が俺だったわけ?」
「うん、毎回いろんな場所に救済に行くんだけど、今回はこの地球が選ばれたの」
「コンピューターが不幸リストから対象を選出することになってて、そこから
私の救済者をひとり絞るの」
「ふ〜ん、で?なんでそんなことするの?」
「これは私が一級天使になるための試験だし善行はいいこととされてるからね」
「は〜試験ね・・・国家試験みたいなもんかな?」
「国家試験?・・・あ、来た来た」
「あら・・・なるほど〜・・・藤井 圭介さんって・・・ごめん、なんかね・・・
別の方だったみたい」
「そうでしょ、おかしいと思ったんだ・・・でもそんなに簡単に人違いして
いいの?」
「ですよね〜」
「同姓同名だったみたい・・・あ、生年月日、1日違ってるぅ」
「ごめんね・・・こういうことって、よくあるの」
「よくあるって・・・
「あなたじゃなかったみたい」
「じゃ〜私、もう一人の藤井さんを救済に行かなきゃ」
人違いだったと分かってホッとしたけど、間違ってなかったほうがよかったような、
だってこんなバリ可愛い天使さんが頑張って僕を救済してくれるんだろ?
美味しいし楽しいじゃん・・・もう一人の藤井さんのところへ行っちゃうなんて
つくずく、もったいないし残念だよな・・・。
「あら、こっちの藤井さん、もうとっくにお亡くなりになってる・・・」
「救済不可能だよぉ・・・どうしよう?」
「私この人救済しないとエボンリルにも帰れないし一級天使なんてなれないよ」
「亡くなってるって?」
「藤井さん、どうしたらいいでしょう、私・・・」
「なこと言われても・・・って言うか俺、大学遅れるんだけど・・・」
「大学なんか遅れても藤井さんが先生に怒られるだけでしょ?」
「救済できないと私が困るの・・・」
「私はエボンリルに帰れないんだよ」
(素直そうで愛くるしい顔してるくせに案外、自己中なんだな・・・)
「どうしよう、もうひとりの藤井さん亡くなっちゃってるし・・・・」
「救済もできなくなっちゃったし・・」
「被験体が亡くなってるから救済できませんってなんとかリルに報告すりゃ
いいじゃん」
「エボンリルだよ・・・これから時々出てくる名前だから、ちゃんと覚えててね」
(覚えててねって・・・あんたが帰っちゃったら二度と言わないワードだろ)
「いいじゃん、そんな小さなこと」
「ダメだよ・・・そんなふうに思ってるから私のことなんか考えてくれないんだよ」
(わがままな天使だな・・・)
「いちいち、絡んでくるね・・・言いがかりだよ?リボンちゃん」
「君、ここになにしに来たの?」
つづく。
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