怪物令嬢 〜貴族令嬢に転生した元魔法少女、筋肉や物理攻撃の力技に興味を持つ!〜

麻莉

第1話 魔法少女を卒業しました

人生に絶対はない。


幸運な人生もあれば、不運な人生も存在する。


私はどうなのか。自分自身では恵まれていたと思う。


ごく普通で、引っ込み思案な性格。成績も少し上の普通人。


転校した中学校で、初めての友達ができた。


家でネコを飼い始めた。


初めて友達の家にお泊まりをした。


時にはケンカもした。


老若男女、多くの人たちに出会えた。


恋はまだ、知らない。


初めてだらけの人生。


そんな私、天美あまみしおりの人生の中で、一番と言ってもいい出来事。


人間界にやってきた、どデカい本を持った変な生き物に魔法少女にさせられたこと。


謎のマスコットは、『君には素質がある』と強引に魔法少女の力を与えられた。


偉そうなぬいぐるみ、シーショからバラバラになった書物を全て回収して欲しいとお願いされた。殴りたい気持ちはあったが、困っている人? を見過ごせない。


もしかしたら、何か変わるかもしれない。


私は『ミスティックピンク』として敵組織『デジィタルブク』と戦うようになった。


この日も、仲間と一緒に『デジィタルブク』と戦闘していた。


敵組織の力でバラバラになっている書物は怪物になる。


私達の力で怪物を浄化し、書物を回収。これが毎度の展開。


今、戦っているのはモグラの書から産まれた怪物。

手をドリルに出来る能力を持っていた。飛ばすことも可能なのは戦闘してわかった。


今回の怪物は手強かった。コスチュームを維持できる魔力しかない。


街中での戦闘。


人々は既に避難していると思った。


逃げ遅れた女の子がいた。


モグラ怪物は『ミスティックブルー』と『ミスティックイエロー』に任せ、私は女の子のもとへ移動した。二人は私より魔力が残っているから怪物を浄化できる。


「大丈夫?」


私の言葉に反応する女の子。


落ち着かせるためにお話をたくさんした。


女の子は泣き止み、笑顔になった。


安全な場所に誘導している時、背中に激痛が走った。


前を歩く女の子の肩に手を置いた。


「お姉ちゃん」


振り向かないようにした。


「ごめんね。お姉ちゃん、怪物を戦わないといけないの。もう少ししたら、お母さんに会えると思うから!」


「わかった!! ありがとう!」


私の方を見ず、女の子は元気に走り出した。


見えなくなってから自分のお腹に触れた。


怪物が放ったドリルがお腹に突き刺さっていた。


ドリルは消えていった。


コスチュームも解除された。


二人が怪物を浄化したのだろう。


お腹から大量の血が噴き出す。


痛みは全身へ回った。


後ろから足音が聞こえた。


振り向くと、呆然としている『ミスティックブルー』と『ミスティックイエロー』がいた。二人は私と同じ中学校のクラスメイト。


『ミスティックブルー』はさざなみなぎさ。初めての親友。

『ミスティックイエロー』は陸奥りくおくれん。生徒会長をやっている親友。


口から血を吐き出した。


路面へ膝をつき、その場で倒れた。


「「「栞ッ!!」」


私は抱き抱えられた。


「汚れるよ」


激痛がなくなってきた。

どっちかが、私を治しているのかな......


「泣かない......でよ」


泣きじゃくる二人。

私の顔に二人の涙が落ちた。


「少し......疲れた.........よ」


あれ? 体がおかしい。


視界が霞む。


眠くなってきた。今日の戦闘も激しかったからな〜


「私...が......起き...たら、部活の......出し物.........決めようね!」


もうすぐ学園祭がある。楽しみだな〜


「............今日も楽しかった............」


その言葉を最後に、天美あまみしおりの記憶がなくなった。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


うん?


揺れている?


見知らぬ天井?


目が覚めた私。


明らかに異常事態が発生している。


私の顔を見るのは、金髪イケメン男性と銀色で髪の長い美しい女性。


「泣かないな」


爽やかな声のイケメンはオドオドしていた。


私を心配してる?


でも、知らない人?


シーショの関係者かな?


日本人じゃないし...


「貴方の顔が怖いかもね」


綺麗な女性に言われ、四つんばいになる男性。


ドンマイ、見知らぬイケメンさん。

強く生きてください。


「ねぇ、アリサ! パパ、怖い人だよね!」


美貌と高貴さな雰囲気の美女さん。

笑顔も完璧だった。自然と笑みが出ていた。


うん?


今、この美女さん。


なんて言った?


聞きたいことがある。


あれ?


言葉が出ない。


なら、行動だ!


美女さんへ手を伸ばす。


小さくて可愛い手。赤ちゃんの手だね。


まさか......私ッ?!


「ギャァァアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!!」


絶叫に似た泣き声が響き渡る。


どうやら、私は死んで、別の世界に転生してしまったようだ。



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