無自覚で周囲を幸せにする自称悪徳貴族が起こるはずのないクーデターに怯える話
げんゆー
もしかして…今の俺ってやばいのでは…?
「──ふむ」
軋んでぐらつく半壊した椅子に座り、表面がところどころ抉れたボロい机の上に本を置く。いくら俺が魔法学園に通う学生とはいえ、こんな貧乏人が住むような部屋に貴族であるこの俺を充てがうとは中々舐めた真似をしてくれたものだ。
だが、それでみっともなく部屋を変えろというのは幼すぎる。貴族たるもの、どのような環境でも適応するべきだろう。……それに、文句を言ったら学園長が怖いし。
まあ、そんなことは一旦置いて置こう。今回は目の前の"これ"のほうが大切だ。
「ほう……これが大衆小説、というものか」
表紙にはなにやら金髪の女と赤髪の男。そしてそれらの後ろで貴族服の男が
どうやら平民どもがこぞって読んでいる名書らしい。俺も小説は読んだことがあるが、それは貴族向けに作られたものがほとんど。最近になって印刷魔術が開発されるまで、本は高級品だったのだ。
俺はもともと興味がなかったのだが、俺の
「さて、さっそく読んでみるか……」
――――――――――――――――――――
『ぐははは! どうだ! この俺様に命令されて幸せだろう!』
『し、しあわせ、です……っ!』
――――――――――――――――――――
「……お?」
最初は、表紙にいた金髪の女が貴族が男に虐げられているシーンだ。
「くくく……っ! なるほど……!平民どもが好むと聞いて侮っていたが、なかなかどうしてやるではないか!!」
そうだ、貴族は偉い。富、名声、力……すべてを持った奴が強い! それらを持たぬものは、持つものに虐げられて当たり前なのだ! つまりこの公爵家の次男である俺、エルト・ランテイル様が格下のゴミ貴族共から搾取し、平民をこき使い、従者に飽きたら捨てるのは当然のこと! この本はそれをよく分かっているようだな!!
なんだか名前も似ているし、もはやこの主人公は俺の化身と言っても差し支えないだろう!!
──だが。
――――――――――――――――――――
『お願い、アラン……! 私を助けて……!』
『まかせろ、エリカ。君は、僕が守る』
――――――――――――――――――――
「…………ん?」
おいちょっと待て。なにしてくれてんの?? この本は貴族であるエラット・ナンテールが主人公で、クズどもから搾取し蹂躙する痛快ストーリーではないのか??? もしかして主人公はこの赤髪の平民なのか? というかこのアランとエリカとかいう平民、どこかで……?
い、いや……そんなはずは……!
――――――――――――――――――――
『貴様がエラット・ナンテールだな! エリカを返してもらう!』
『なんだ、この赤髪は……! エリカはすでに俺のものだ! 平民のクズごときが公爵家である俺様に歯向かうつもりか!?』
――――――――――――――――――――
お、おい……。ここで主人公であるエラットが不敬なアランとかいうガキを殺して領民搾取永久繁栄ハッピーエンドを迎えるんだよな……!? くくくっ……! 上げて落とす、なかなか読みごたえのある作品よ……!
――――――――――――――――――――
『ぐぁぁぁぁぁぁぁっ!? なぜだっ!? 俺がこんな平民のクズに負けるわけがああああああああっ!?』
『エリカっ! 僕たちの勝ちだ!』
『アランっ! 無事で良かった……!』
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おいバカ筆止めろ。なにしてくれんだお前。
そこは俺が勝つべきだろうが! 俺が勝ってアランは死亡、エリカは金と権力の前にひれ伏し奴隷堕ち! 素晴らしいエラットのバラ色人生が続く! ってなるところだろう!!
しかも思い出したぞ!? このアランとエリカとかいう平民、俺の学校にいるアレンとエリスにそっくりじゃねえか!!?!
おっと、俺としたことが素の口調になってしまった……。まだ慌てるような時間じゃない……。貴族たるもの、平常心、平常心……。
――――――――――――――――――――
『ありがとうアラン……! 大好き……!』
『僕もだよ、エリカ……!』
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冷静に考えろエルト・ランテイル……。俺があんな、俺に騙されて搾取されているとも知らずに馴れ馴れしく「エルト、今度夜の店行ってみねぇか……?」とか、「エルト、その、お、お弁当……作ってきたんだけど……」なんて接してくる平民風情のアレンやエリスに負けるはずがないだろう……!
あ、いや、まあ小説の話だから現実の俺やアレンとエリスとは関係ないのだが……
ともかく! この俺の化身であるエラットがこの程度でくたばるはずがないだろう!!
俺の予想通り、最後の方のページでは再びエラットが登場した。やはりな! 間違いない、ここからエラットが逆襲するための物語が──!!
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謀反 呪い 奴隷 不死化 復讐 血 臓物 脳 燃焼 串刺 斬首 生き埋め。
(※あまりに不適切な内容と挿絵なため断片的な文字でお伝えしています)
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「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃッッ!!?!!!?! ふ、フレイムっ!! ヘルフレイムッッ!!」
俺は本を思い切り投げ飛ばして空中で炎魔法をぶつけまくって燃やした。
「な、なっ……! なんだ、なんなのだ……っ! これは……!!」
こ、この俺の化身であるエラットが……! 今まで虐げてきた平民や平民の肩を持つクズ貴族どもに謀反を起こされ、不死の呪いを掛けられて死ねないままありとあらゆる拷問を受け、最後には生き埋めだと!!?! あ、ありえん! こんなことは間違っている!! 俺たちはこれからもクズどもを搾取し続けなければならないというのに!!
しかも最後にエラットを燃やして生き埋めにしたあの奴隷……! どう見ても……!!
「──ご主人様っ!? 悲鳴が聞こえましたが大丈夫ですかっ!?」
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!?!」
俺の│
「ふーっ、ふーっ、ふぅーっ……」
「ご主人様……?」
死にたくない、死にたくない、死にたくない。死ぬにしてもあんな死に方は嫌だ。死にたくない。パパママ助けて。
……はっ!? 危ない危ない、危うく自我が崩壊するところだった……。
「い、いや、なんでもない。なんでもないぞ、マナ……」
「で、でも……」
……マナ。こいつは俺の従者だ。もうずっと小さい頃からの付き合いだが、俺がマナにしたことといえば……オシャレか知らないが身体にめちゃくちゃ格好いい紋様を浮かび上がらせてたから嫌がらせでそれを消したり、家族と引き剥がしたり、飲み物や食べ物を目の前で奪って捨ててやったり、一緒に駆け落ちしようとしていた男を強制労働所送りにしたり……。
……もしかして、やばいことしかしてないのでは?
「あの…本当に大丈夫でしょうか……?」
「もももももちろん! だだだ大丈夫だって言ってんだろ!!」
「……?」
しまった、動揺してつい素の口調がまた出てしまった……!
いや、そんなことより俺はマナからこの本を取った。ということは、間違いなくこの内容はマナも知っている。そんなものを俺の前で読んでいたということは、マナもこの俺の命を密かに狙っているというのか……!? それならばこの本を読んでいたときのマナの不愉快そうな顔にも説明がつく……! きっと俺に復讐する機会を伺っているに違いない……!!
「……私には、ご主人様に一生かかっても返しきれない恩があります」
「ひっ……!?」
もう確定じゃん! その恩ってあれじゃん! "た〜ぷりお礼してやるぜ?"みたいなやつじゃん!!
「私にはご主人様のすべてを支えることはできません……。それでも、どうか少しだけでも、私にご主人様の支えになることはできませんか……?」
支えってあれでしょ? エラットを串刺しにしたときに言ってたよな? 『心配なさらないでくださいよ。これからは私の代わりに"これ"がご主人様をず〜っと支えてくれますから……この槍が』って(自主規制)して空中ぷらぷらさせてたやつでしょ??
「あ、ああ、でも大丈夫だ、マナ。大丈夫だから……」
ど、動揺を悟られるなエルト・ランテイル……! 隙を見せたらやられる……!! 自慢じゃないが俺の戦闘能力は中の下……! 学園一強いとまで言われている天才のマナに勝てるわけがない……!!
「……大丈夫じゃありません。ご主人様はもっと、私を頼るべきです」
ギュッと俺の手を掴むマナ。やめてくれ。腕を伸ばされたときにマジで死ぬかと思った。頭が握りつぶされた果物みたく破裂するかと思ったから!
し、しかし、ここは動揺を隠すためにもいつも通りに振る舞わねば……!
「マナ……ありがとう」
いつも通りマナを抱きしめる。昔から……マナが俺専用の従者となったころから、こうやればなんだかんだでマナを誤魔化せるのだ。
「ふぁ……っ!? ご、ご主人様……っ!」
マナからも抱きしめられて、大きすぎず小さすぎない胸が押しつけられる。柔らかくて、甘い香り。正直ずっとこうしてたい。
……いや、待て。こんなことをしているから謀反を起こされたのでは? 本当はマナは嫌がってるんじゃないか? 冷静に考えれば、
「…………は、離すぞ?」
「…………ぁ」
マナから離れると寂しそうな、惜しそうな声が聞こえた。
……大丈夫だよな? 惜しかった、もうちょっとで殺せたのに。とかじゃないよな?
ま、まあいい。とにかく俺は死なないために急いで軌道修正せねばならん! あんな死に方はごめんだからな!!
「今まですまなかったな、マナ」
「っ! や、やっと分かってくれて──!」
「好きでもない男にこんなことされて、今まで嫌だっただろう」
「…………えっ」
えっ、何その目。信じられないものを見るような……もしかして、今更かよって思われてるのか? ごもっともですすみませんでした殺さないでください。
「マナ、お前との主従契約を正式に解除しようと思う。お前はもっと自由になるべきだ。自分のためにその力を使い、将来は好いた男と幸せになれ」
「…………………」
く、屈辱だ……! この俺がこんなことを言わなければならないなど……! 俺の従者の分際で、幸せになろうなどと思うな……! いつか絶対に、お前が知らないところでお前から搾取し続けてやるからな……!! だが、だが今は自分の命が最優先だっ! いつかマナすらも超える力を手に入れて、一方的に酷使してやる……!! だから一旦ここはマナとの縁を切って──!!
「…………いやです」
「ほわいっ???」
あの、マナ……様? どうしてそのような目をしておられるのでしょうか……? そんな暗黒魔法みたいな光のない瞳で私を見つめないでいただけないでしょうか……?
「絶対、絶対離れません。ご主人様の命令でもそれだけは聞けません。私の幸せは、ご主人様ただ一つだけです」
「で、でも従者から開放されたら自由だぞ? 俺の付き人なんかしなくても休日は遊びたい放題だし、なんならこんな学園だって辞められ……」
「ご主人様」
その顔は、その瞳は、絶望し濁り執着するようなその様は、まさしく本の中で見たあの奴隷の挿絵にそっくりで──。
「どうしてそのようなことをおっしゃるのですか? 私にはご主人様しかいないというのに。ご主人様を失えば私には何も残らないというのに。ああそうか、ご主人様は騙されているんですね。また私とご主人様について口出しするゴミクズどもが現れたのですね。心配しないでくださいご主人様。私をご主人様から解放しろなどとほざく有象無象のことなど放っておけばいいと申し上げたではありませんか。何があっても私は絶対にご主人様から離れませんから。あの忌々しい呪いから私を救ってくださったご主人様は私の生きる意味になったんです。私はあの日あの時からご主人様のために生き、ご主人様のために死ぬと誓ったのです。それからこれを期に申し上げておきたいことがあるのですが、エリス様たちともあまり仲良くなさないでください。あの方たちはご主人様のことを卑しくも狙っている害獣そのものです。ご主人様のようなお方があんなゴミ共の近くにいるというだけで吐き気が止まらないんです。私のご主人様を汚すなって殺したくなってしまいます。ああ申し訳ありません。私のご主人様などと思い上がった発言をしておりました。でも、ご主人様も悪いんですよ? あの日に私が一番大切だと言ってくださったのに手を出してくださらないのですから。ご主人様の趣味嗜好はすべて把握しておりますから、必ずや満足させてみせます。ただ初めてはご主人様に捧げたいと思っているので、最初は優しくしていただけると嬉しいです、あとそれから──」
俺はいつの間にか気絶していた。あまりの恐怖に耐えきれなかったのだ。ただ最後に聞こえたマナの言葉は──
「──もしもご主人様が居なくなるようなことがあれば……私、どうなってしまうか分かりませんからね?」
……逃げたら草の根を分けてでも探し出して必ず殺すってこと??? 誰か助けてください。俺が死にそうなんです。
(マナ視点)
「……ご主人様?」
私がありったけの想いを語っていると、どうやらご主人様は寝てしまっていた。せっかく私の想いを伝えられるチャンスだったのに……。
「よいしょ、っと……」
ご主人様を抱き上げて、そっとベッドに寝かせて布団をかける。ほっぺたをツンツンと触るとくすぐったそうにうめいた。
「ふふっ……」
私の家族は昔から従者としてランテイル家で働いていました。ランテイル家の当主様も奥様も次期当主であるハセス様も、本当に良い方です。ご主人様も良い方なのですが、あの態度と口調で勘違いされることが多い方です。そんな中で、私も5歳のときからご主人様の従者として仕えさせていただきました。
ベッドの近くに立てかけられている鏡を通して、私は自分の身体を見ます。そこにはただの肌があります。あの忌々しい紋様のない普通の肌が。
──"魔王の呪い"。あの病はそう呼ばれていました。体中に黒い紋様が浮かび上がりやがて死に至るものです。
そして、これを発症した者は呪われたものとして処刑されます。それは当然、6歳で発症した私も例外ではなく。私はすぐに処刑されることが決まりました。ランテイル家の皆様はなんとか私を守ろうとしてくれましたが、国の決まりには逆らえません。周りの使用人からは虐められ、家族からも出来損ないと罵られました。あの時は何度死のうとしたのかわかりません。しかし、処刑されることが決まりの身には自死の道すら選べません。
全てがどうでもよくなり諦めかけたその時、ご主人様が私にあるものを飲ませました。名をエリクサー、全能の回復薬と呼ばれていた伝説の医薬品です。それをなんの躊躇もなく飲ませたのです。ただの一従者に、それ一つで国が傾くほどの力を持つ薬をです。
私が治ってすぐ、ご主人様は『俺の従者を出来損ないなどとコケにしたやつは許さん』と、私の家族を強制労働所に送りました。そして私を抱きしめながらこう言ったのです。
『もう大丈夫だ。"魔王の呪い"なんて最初からなかった。いいな?』
誰も逆らえません。なぜなら、彼は公爵であるランテイル家の人間だから。唯一の証拠であった私の体にあるはずの紋様も既になく、私の"魔王の呪い"は事実上なかったことにされました。
その後も他の従者たちから嫌がらせで虫の入った食べ物や泥水を飲まされそうになったときも目の前でそれを奪い取って床に投げ捨ててご主人様の食べ物を分けていただいたり、私を馬車に押し込んで誘拐しようとしてきた男を捕まえて裁いていただいたり……。本当に、多くのことをしていただきました。
だから私はある日、ご主人様に聞きました。
『どうして……私にこんなに優しくしてくれるのですか……?』
するとご主人様は言いました。いつものようで、ちょっと照れながら。
『ふんっ、マナは俺の一番大切な従者だからな! 勘違いするなよ? 俺の従者なのだから、お前が不幸になると俺まで不幸だと思われるではないか!』
それなら、エリクサーなんて飲まさずに従者を変えればいいだけなのに。
『それに、お前がいる場所は俺が与えた場所だ。せっかく俺が与えた場所をそう易々と空席にするものか。決して安売りせんぞ、俺の側という場所は』
それなら、最初からそんな場所なんて与えなければいいのに。
でもご主人様は笑って、
『いいか? 肝に命じておけ。お前はこの俺に愛された幸運な女なのだと。俺から離れることなどできると思うなよ!』
『……はいっ!』
その時は『決まったぁ…』なんてニコニコしていたけれど、ご主人様の優しさに、笑顔に、私は救われたのです。
ああ、ご主人様。私のご主人様。あの日に私を抱きしめてくださったとき、私に降りかかる悪を払ってくださった時、私に居場所をくださった時、私のことが一番大切だとおっしゃってくださった時。私はあなたに恋をしてしまいました。
叶わなくても構いません。ご主人様が幸せになれるのであれば問題ありません。それでも、ご主人様がどなたと結ばれたとしても、お側にいるのは私です。ご主人様のお側が私の居場所です。ご主人様が与えてくださった、私だけの居場所です。
「ご主人様は、悪いお方です」
私は知っています。ご主人様は搾取だの平民だのと言って周囲と壁を作ってしまいますが、本当はとても優しいお方なのだということを。さっきだって私に抱きしめた時に性的に興奮しているのにも関わらず、私を安心させようとしてくださっていました。好きでもない男に……なんて勘違いをなさっているところは相変わらずですけどね。
私はいつでもいいのですよ? いつでもご主人様に使っていただけるように知識や技術を身に着けました。婚約者とする前に、最初は従者で練習しておくのが貴族社会の常識なんですよ? 私のことを大切にしていただけるのは嬉しいのですが、やっぱり寂しいです。
「……でも、大好きです」
そういえば、あの本はどうしたのでしょうか。私がオススメだからと貴族の人から押し付けれた小説だったのですが……とにかく不快な内容でした。当てつけのようにご主人様のような悪役を作って転落していく物語。あんなの、ご主人様に恨みがある人が書いたに決まっています。しかし、貴族からもらった以上は読まなければいけません。憂鬱な気分になっていたその時。「こんなモノ読まなくて良い。これは今から俺のものだ」と、私から本を取り上げて部屋に戻って行ってしまいました。
それが嬉しくて、悲しかった。
私を見ていてくださったことが嬉しかった。いくら貴族からいただいた本だといえど、ご主人様が取り上げたとなれば私の体裁は保たれるでしょう。しかし反面、ご主人様の評価はさらに地に落ちることになります。
ご主人様は、この学園でよく思われていません。何も知らないゴミ共はご主人様のことを、『私を奴隷契約で縛り付けてるクズ』だの、『金で学園に入っただけの公爵家の落ちこぼれ』だの、『公爵家のくせに成績もパッとしない、従者が凄いだけの男』……。でも私は知っています。幼い頃からご主人様の側で使えていた私だけは。ご主人様が血反吐を吐くかのような努力をして入学し、朝も放課後もたゆまぬ努力をしていることを。
たしかにご主人様は強くありません。筆記試験も並程度。それでもご主人様は最も強いんです。
だって、ご主人様は心が強いから。もちろん、心の強さは力の強さではありません。ですが、ご主人様のような方こそが真に王になるべき器だと思うのです。だってそうでしょう? 公爵家なのだから不正だってできる。悪口を言ったものを処刑することだってできる。でもご主人様はそれをしない。だって、優しいから。言動こそ尊大なものの、皆を愛しているから。
……まあ、そのせいでエリス様みたいな一部のゴミ……方々がご主人様を獣のように狙うようになってしまったのですが。
ですが、どうかご安心ください。私が、あなたの奴隷が、
「うぅ……助けてくれマナ……」
「大丈夫ですよご主人様……私はここにおりますから」
うなされているご主人様の手を握る。「ひぃっ」と、小さな悲鳴が聞こえた気がした。
無自覚で周囲を幸せにする自称悪徳貴族が起こるはずのないクーデターに怯える話 げんゆー @genyuu_self
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