rab_0609

@rabbit090

第1話

 but you know that,that is...that is

 目を開けるたび、絶望が湧き起こる。

 「おはよう。」

 「おはよー、あ、ねえ。今日朝ごはんちょっと焦げちゃったんだけど、大丈夫?」

 「うん、全然平気。」

 「よかったー。」

 「お姉ちゃん、私のヘアゴム、使っちゃったんじゃない?」

 「ごめん、昨日バイトでさ、イベントがあって化粧しなきゃならなかったんだけど、あたし何も持ってないから、ヘアゴムだけ借りちゃった。」

 「そうなの?分かったー。」

 こんな感じ、いつもと変わらない。

 けれどあたしは、この違和感を拭えるわけがない。

 「行ってきます。」

 「行ってらっしゃい。」

 普通の一軒家、何気ない日常。

 あたしは、自転車に乗って町を駆けた。

 「はあ…はあっ。」

 間に合わない、どうやっても。いつ頃からだったけ、それも次第に分からなくなる。

 やっと着いたのに、

 「お前、最近たるんでるよな。夜更かしか?早く来いよ、大目に見るのももう無理だぜ。」

 「はい、すみません。」

 謝ることだけが上手くなった、女だから、男の担任はあたしのことを甘く見ているらしい。

 同じように遅刻ばかり繰り返す男子生徒は、退学になったいうのに。

 

 「秋夢しゅうむどうしちゃったの?遅刻なんて、似合ってないよ。」

 「うん、そうなんだけど。何か起きれなくて。」

 「えぇー、病気じゃない?ちゃんと、病院行った方がよくない?」

 「そうなんだけどね…なんも無いって。」

 「はあ?そんなわけないじゃん。」

 「だよねぇ。」

 そうだ、あたしだってそう思う。けど、病気ではない、らしい。

 てか、あたしは起きれないわけじゃなくて、本当は学校に辿り着けなくなってしまったのだ。

 事故に遭って感覚がおかしくなった、とか理由が明確ならいいけど、そんな覚えも一切ない。

 だから、何も言えなかった。

 けれどこのままの状態が続けばいずれ、あたしは退学になるのだ、そして、家族にもバレて、きっと家庭に不穏な空気を持ち込むのだ。

 はあ、どこかに逃げようかな…。

 そう思ったら、全てがどうでもよくなってしまった。

 あたしは、とっとと学校を出て、自転車で行けるところまで行こう、と決めた。

 決められた囲いの中から出ることは簡単だ、誰も引き留めないし、だけど、その先にあるものが恐ろしくて、あたしは何もできなかった。

 「着いた。」

 着いた、ここは、昔遊んだ公園だった。今はあまり手入れがされていなくて、うっそうとしている。

 あたしは、それを利用しよう、と思った。

 誰からも見られないで、この世界の空気を吸える。

 なんて、幸せなんだろう。

 

 ベンチに座り、途中で買ったお茶を飲む、なんか、思ったのと違う。走ってる間は、全てに許されているような快感を覚えたのに、こうやってま立ち止まると、何をすれば正しいのかが分からなくなる。

 一人で、途方に暮れていた。

 でもきっとこれは、一生続くことなのかもしれない、と感じまた、ふとよぎる暗さに飲まれそうだった。

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