17:終わりかけの椿 感想

お話

https://kakuyomu.jp/works/16818093078124332759/episodes/16818093078811449301


 ●●●●よ!

 なにゆえもがき生きるのか?

 滅びこそわが喜び

 死にゆくものこそ美しい

 さあわが腕のなかで息絶えるがよい!


 とは昔から語り継がれる、知ってる人は知っている……知らない人は覚え(ry な名言ですが、この主人公も死にゆく命の美しさに魅せられてしまったのかも知れません。冬の終わりに見る終わりかけの彼女の姿は、きっと独特の情緒をもって少年時代の主人公の心を掴んだのでしょうね……。最近では尊いものを見たときやとんでもないものを見たとき、おらワクワクすっぞ!なものを見たときなどに気軽に喀血かっけつする姿が見られますが、きっと当時では洒落にならないものであったに違いありません。

 それほどまでに辛い状態であった彼女が主人公くんに声をかけてくれたのは、きっと病ゆえに人と触れあうことなく隔離されていた(というか安静にされていた)彼女自身の孤独が、主人公の孤独と呼応したからなのかも知れませんね。孤独な魂が焔あげ惹かれ合ったということなのかも知れません……優しい彼女の《焔》と引き換えに。


 この回顧録全体を流れる、静かな雰囲気がたまりませんよね。筆者はこういう雰囲気も大好きです。


 その後の彼女がどうなったのか、描写的には恐らく彼女の焔は尽きてしまったと思われるのですが、よいものですね……。密やかな優しい時間を止めたのは、まぁもちろん主人公のお迎えもきっかけのひとつなのですが、きっと主人公の心のなかでは、彼女との思い出を欲するあまり庭先まで連れ出してしまった自分自身が──という罪悪感がずっと占めていたのでしょう。

 もちろん書き散らした程度で胸を燃やす罪悪感が消えることなどないと思うのですが、それでもこの主人公の心にほんのささやかであっても安寧が訪れることを願って、『終わりかけの椿』の感想とさせていただきます。

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