第21話 カラオケボックスにカップル入店、何も起きないはずもなく



言われた通りカラオケボックスに来た。


「二人、フリーで」

「かしこまりました、

二十一番の部屋をお使いください」

「行こ」


この急ぎように、少し怖さすら感じる。

階段で二階に上がり、

手前にある二十一番の部屋に即座に入る。


「死角は…」


なんだが物騒なことを呟いた。


『ギュ』

「す、すみれさん?」


両手を恋人繋ぎにして、隅に追いやられる。


「普段私がストッパーしてるんだから、

今日くらいいいよね」

『チュ』


流れるようにキス。


「霊美ちゃん…」


ダメだ、目が据わっている。


『グググ』


押される。

壁に追い込んでいるのかと思ったが少し違う。

その傍の椅子に追い込まれている。


『チュ』


黙らせるようにキスしてくる。

足が椅子に到達し、膝を折られる。

座る。

まだ押される。

倒れ込む。


「あの…すみれさん」

「ん〜?」

「こういうところでそういうことをするのって、

いけないことじゃないかしら…?」


水を差すようで悪いけれど、

こればかりは指摘しないといけない。


「んー…」


少し考えている様子。


「あー!」


唐突に机の下を覗いた。


「いる…」


いるとはまさか、幽霊?。

やはり私には見えない。


「床一面にいたから気づかなかった」


それくらい大きいのか。


「こりゃ除霊しなきゃだねえ」


トントン拍子で進んでいく。


「本当に…いるの?」

「信じて…くれないの?」


これだ。

これに弱いんだ。


「信じるわ…だって彼女だもの」

「うん、ありがとう」


実際のところどうか分からない。

でも信じるという行為に、

報いがあることを信じるしかない。


『キュ』


彼女はリップを取り出した。


『ぬり』


私の唇から塗り始める。

私よりも上手い。

そして同じリップを、今度は自分に。

整ってしまった。


「ん…」


なるようになれだ。


『む』


…。

長い。


『ちゅ』

「フーッ、フーッ」


鼻息が大分荒くなっているようだ。


「う〜」

『ギュ』


抱きしめられる。

全体重の半分ほどが

のしかかっているのだろうか、

かなり圧迫感がある。

それほど強くすみれさんと

密着していると考えると、頭が熱くなる。


『はむ』

「!?」


左耳を、食べられた。


『れろ』

「す、すみれさん!?」

『ちゅぴ』

「んまんま」


ためだ、話が通用しない。


「んれ…」

『つぷ』


奥の穴に侵入してきた。

温かく湿っている肉の塊が、水音を立てる。


『ぐちゅ』

「っ!?」


反射的に頭を退けてしまった。


「動かないで」

『ガシッ』

「う」


頭を両手で固定される。

もう逃げられない。


『ぐっちゅ』

「ッ────!」


背筋がピンと張る。

これ以上はヤバい、逃げろという肉体の反応。

それを無理やり押さえつけられながら、さらに、

さらに。


『ぐりゅぐりゅ』


奥へ。

脳みそが舐められているのかと錯覚するほど、

感覚が鋭敏なところをなぞられる。


『ガタッ』


空いた右耳から、何か物音を拾った。


『ぴゅぼ』

「ンッ」


舌が引き抜かれる。

すみれさんは即座に入口を確認したが、

誰かの気配は無い。


『ガタガタ』


どうやら机の、

マイクやメニューが入っている

カゴが揺れているようだ。


「マジじゃんマジじゃん!」


幽霊は本当にいたらしい。

だがこの反応、すみれさんは嘘をついていた。


「すみれさん…」

「え!?いや、もちろん最初から気づいてたよ?」

「本当に?」

「ほんとほんと」

『チュ』


いつの間にか左目に溜めていた涙を吸われる。


「じゃ、次反対側いくよ」

「え、ええ」

『じゅ』


今度は遠慮なく中へ。


『れろれろ』

「ッ」


だが奥へは入らず、浅い所を回している。

背筋がゾクゾクして、不安になる。


『ギュ』


服の裾を掴んでいた手を、

すみれさんの手が覆う。

そんなことをされたら。

幸せになってしまう。


『ちゅぽ』

「ッ」


引き抜かれる。


「好き」


もっと幸せになる。


「わ、私も好『じゅぽ』ッ〜〜」


されるがまま。

唯一できる抵抗は、抱きしめるくらいのこと。

それは更にすみれさんの興奮を加速させる。

なぜこうなったのか。

私が開示した情報の順番が、

いわゆる誘っていることになった。

私が彼女をなだめられればベストなのだけれど、

いい方法が思いつかない。

そもそも、なだめる必要なんてあるのか?。

今やっているのは除霊で、義はある。

それに気持ちがいい。

止める理由…はある。

もし店員さんにバレたら、

学校に連絡されるかもしれない。

それは流石にまずい。

今冷静な私が、歯止めとなる番。


「んー!」


力の限り起き上がろうとしたが、

やはり力では勝てない。


『ガシ』


動いたせいで頭を強く固定される。


「うあ…あむ」


大きな声を出したせいで

手のひらを噛ませてくる。

更に詰みに近くなった。


『ぐちゅぐちゅ』


頭が艶かしい音に埋められ、思考が鈍ってくる。

限界に近いが、

痛みに訴える手段は取りたくない。

もう…だめかもしれない。



数十分後。


「はぁ…はぁ…」


や、やってしまった。

興奮が抑えきれず、

霊美ちゃんを好き放題してしまった。


「う…あ…」


目の焦点が合っていない。

口からよだれを垂らして、

耳から私のよだれを垂らしている。


「れ、霊美ちゃん…?」


返事は無い。

とりあえずよだれを拭こう。


「終わったかしら…?」

「あ、起きた?」

「なんというか…気絶はしていないけれど、

起きてもいない、そんな状態だったわ」

「ご、ごめんね、やりすぎちゃった」

「いいのよ、私もそういう時があるし。

それより、幽霊は?」

「あ、うん、もうすっかり消えてるよ!」


今見て確認する。

いなくなってくれていた。

途中から本物が出てきた時はびっくりした。

霊美ちゃんの良心につけ込む行為なので、

今後は控えよう。


「うう…」


霊美ちゃんが起き上がり髪を纏めた。

そして耳の中のよだれを出そうとして、

それがどろりと垂れる。


『ドキ』


流石に我慢しないと。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る