第6話

日本に戻った真紀は、日常の中でガンジス川での経験を思い出しながら生活を続けていた。彼女は仕事に復帰し、友人や家族と再び時間を過ごし、以前とは異なる視点で日々を送っていた。彼女の中には、過去の悲しみを乗り越えた強さと、ガンジス川で得た新たな希望が根付いていた。


ある晴れた朝、真紀は早起きをし、家の近くの川沿いを散歩することにした。朝の静けさの中で、川の流れが心を落ち着かせてくれた。ガンジス川と同じように、この川の流れもまた永遠に続くものであり、その穏やかな音が真紀の心に響いた。


「ここでも、同じように祈りを捧げることができる。」真紀はそう思い、川のほとりに立ち、深呼吸をした。彼女は目を閉じ、心の中でガンジス川での出来事を振り返った。


その後、真紀は家に戻り、両親と朝食を共にした。久しぶりに家族と過ごす時間は、彼女にとって大切なひとときだった。母親は微笑みながら、「元気そうね。ガンジス川での経験が良い影響を与えてくれたみたいね。」と言った。


真紀は頷き、「そうだね。あの場所で多くのことを学び、感じたことが、今の私を支えてくれているんだ。」と答えた。


その後、幼馴染の美咲と再会することにした。カフェで向かい合い、コーヒーを飲みながら、二人はしばらくぶりの再会を喜んだ。美咲は真紀の変化に気づき、興味深そうに尋ねた。「ガンジス川での旅、どうだったの?何か特別なことがあったの?」


真紀は微笑みながら答えた。「特別なことばかりだったよ。あの場所で、多くの人々と出会い、祈りを捧げ、過去の自分と向き合った。あの経験が、私を強くしてくれたんだ。」


美咲は感心したように頷き、「それは素敵な話ね。私もそんな場所に行ってみたいな。」と言った。


真紀はその言葉に励まされ、自分が経験したことを他の人にも共有し、同じように新たな希望を見つけてもらえるような活動を始めたいと思うようになった。


真紀は日常の中で、ガンジス川で学んだことを生かすよう心がけた。仕事では、同僚との関係をより深め、チームワークを大切にするようになった。彼女は自分の経験を通じて、他人の悩みや苦しみにも敏感になり、助けになれるよう心がけた。


また、彼女は瞑想や祈りを日常の一部として取り入れ、自分の心と向き合う時間を大切にするようになった。彼女は自分の家の一角に小さな瞑想スペースを作り、そこで毎朝、静かな時間を過ごすようにしていた。


真紀は自分の経験を地域社会にも還元しようと決意し、心の癒しを求める人々をサポートする活動を始めた。彼女は地域のコミュニティセンターで、瞑想や祈りのワークショップを開催することにした。そこでは、ガンジス川で学んだ祈りの方法や、内面的な旅の重要性を伝えることを目指した。


ある日のワークショップで、真紀は参加者たちにガンジス川での経験を語り始めた。「ガンジス川は、私にとって再生の場所でした。そこで感じたこと、学んだことを皆さんと共有したいと思います。」


参加者たちは真紀の話に耳を傾け、それぞれの心の中で共鳴するものを感じた。ある女性が手を挙げ、「私も最近、大切な人を失いました。あなたの話を聞いて、私も少しずつ前に進む勇気をもらいました」と涙ながらに語った。


その言葉に、真紀は心からの感謝の気持ちを抱き、「私も同じような経験をしました。一緒に乗り越えていきましょう」と優しく応えた。


真紀の活動は次第に広がり、彼女の元には多くの人々が訪れるようになった。彼女はその一人一人の話を聞き、共感し、励まし合いながら、コミュニティを築いていった。


タナカさんやアミットとも連絡を取り合い、時折ガンジス川での経験を共有し合うこともあった。彼らとの絆は、真紀にとって大きな支えとなり、遠く離れた場所でも心の繋がりを感じていた。


真紀の心には、遠藤周作の『深い河』と宇多田ヒカルの『Deep River』が響き続け、その旋律が彼女の新たな一歩を支えてくれるのだった。真紀のガンジス川での旅は、過去の痛みを乗り越え、新たな希望と共に未来へと歩むための永遠の旅であった。

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深い河の旋律 @minatomachi @minatomachi

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