読思余論

@bunwa

第1話 「偽書百撰」(文春文庫) 垣芝 折多 著 松山 巌 編


タイトルに惹かれて本を手にした際、想像とは違う内容にがっかりする事はままあると思いますが、時に内容が予想外でも想定以上に面白いものに出会える事もあったりします。この本などは、私にとってその好例でしょうか。

「偽書」と言う表題から、世を騒がした有名な偽書の紹介本あたりかなと思いきや… 著者が明治~昭和間に世に出た本を紹介する、という態で記した捏造本の書評集とは、流石に思いもよらず。 


全体的にダジャレや回文等のネタ要素も強めではありますが、実際にあった本のパロディ的なものから、小説・ハウツー本・実録・日記・詩・川柳・対談・グルメガイド等次々紹介される本の多彩さは実に圧巻。実際あったら是非読んでみたいような魅力的な本も少なく無く、著者の博覧強記ぶりと力量には恐れ入るばかりです。

例を挙げ出すとキリがないのですが、あえて幾つか挙げてみると… 実に面白そうな小説「珊瑚物捕帳」、驚くほど色々あるハウツー本でも流石にこれは無さそうな「例文多數 遺書の書き方」、脅威と言うより狂気すら感じる怪作「肉世國」辺りが特に印象深いです。


20年以上前に偶然図書館で出会い、読み終えて返しに行ったその足で本屋に寄り購入した、そんな入手の経緯まではっきり記憶している本書は、私にとって未だ時折ふと読み返したくなる、お気にいりの本の一つです。


何か変わった本を読みたい方などにはお勧めやも知れません。

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