【クイズ】に答えて『スキル』をゲット!?ハイパーサイメシア(超記憶症候群)の私にクイズは朝飯前!

kutiburu

序章

プロローグ

 私、桜庭さくらば 静菊しずひは『ハイパーサイメシア』である。

 

 自他共に誰が自分静菊を語るとしても、これは外せないだろう。


 ハイパーサイメシア ―― 『超記憶症候群』とも呼ばれ、見たもの全てを詳細に記憶し、過去の些細なことまで細かく覚えているという圧倒的な記憶力のことである。



 

 誰もが羨み、その能力を手にしたいという願いは、国民的たぬき型ロボットアニメに登場するひみつ道具からも計り知ることができるだろう。

 

 例えば、クイズや問題を出題されたなら、その答えはすぐに出すことができるだろう。

 

 答えを知らなくても、圧倒的知識から解を導き出すことは容易いことである。

 

 

 

 しかし、私にしてみればこの記憶力はそれほど良いものだとは思えない。

 

 むしろ、いらない。

 

 大切な、大切な両親が亡くなったその瞬間の光景が、音が、匂いが、表情が――

 

 今でも脳裏に焼き付いて離れない。



 

 そうして私は現実から逃げた。


 不登校になり漫画や小説、ゲームに没頭した。


 自分が自分ではなくなるこの瞬間だけが安心できた。



 そんな私をいつも気にかけてくれる親友の花音かのんから電話が届いた。


 花音は私が唯一心を開いて話せる人である。


「ねぇ静菊しずひ!私、『アナザーファンタジー』本体機器付き・ダブルセット当たっちゃったの!!!」


「え・・・すごい!」


「でね、こ、これがカップル用のものらしくて・・・本体が2人分繋がってるの・・・私、静菊しずひとこのゲームやりたいんだけど・・・」



Anotherアナザー Fantasyファンタジー』 


「フルダイブ型VRMMORPG !AI管理により無限に広がる役職・スキルで自分だけの冒険をしてみよう!」


 今や全てのSNSから広告で流れてくるこの文言。


 1年前にサービスが開始され、世界中にプレイヤーが存在し、現在最も話題になっているゲームである。


 面白そうだけど・・・これは自分が主人公だし・・・・


 漫画や他のゲームみたいに他人の人生だけを見ていたい。


 そう考えていた私はこのゲームをプレイしなかった。


 でも花音かのんが言うなら別である。



「じゃあやってみよっかな・・・」


「本当!?嬉しいわ!」


「どっちの家に置く?」


「じゃあ静菊しずひの家に持ってくわね」




 こうして私の家には2つ繋がった本体機器が設置させた。


 本体機器は、大まかにふかふかのマッサージチェアのようなものとゴーグルで構成されている。


 私は機体に座り、ゴーグルを被り電源を入れる。

 


 目を開けると真っ白い空間にぽつんと立っていた。


 ここはソフトライブラリのようなものかな?


 この機体には『アナザーファンタジー』しか入ってないみたい。


 

 私は目の前で浮遊している『アナザーファンタジー』のアイコンをポチッと押す。


 するとオープニングが壮大な音楽と共に始まった。


 へ〜色んな所があるんだな〜、と流れる景色を見ながら考えていると、オープニングが終わったようだ。



『アナザーファンタジーの世界へようこそ!』


 ちっちゃいてるてる坊主みたいなのが飛んできた。


 オープニングムービーにもいた子だ!か、可愛い!


『今から、あなたの名前を教えてね!』


「シ、シズ」


『シズちゃんだね!』


『じゃあ次は僕の名前を決めてね!』


 え?オープニングムービーでは名札に変な名前あったけど、あれじゃないの?


「きくけぬまるさえたねひよしもつれ」


『え、え!?』


「え?」


『じゃ、じゃあオープニングムービーで花が登場した回数は?』


「え?え〜と18回かな」


『え、えええええぇぇEEEEE』


 てるてる坊主が驚いた声を上げたと思ったら、色が黒くなってツノが生えた。


『キャハ!面白いやつだな!カーシー様がお前の職業を決められた!』


 黒いてるてる坊主がそう言うと、『見た目設定』『職業選択』ボタンにバッテンマークが現れた。


 え!職業決められたってこと?


 見た目もリアルと全く同じままだ・・・


『キャハ!期待しているぞ!』




 てるてる坊主がそう言うと同時に景色が変わった。


 ここは・・森?


 一本道だ、これに沿って歩いてみよう。


 私は歩きながらステータスを見てみた。



 シズ Lv1


 【職業】解答者


 【装備】なし


 【スキル】

 ・クイズ 攻撃

 ・クイズ 防御

 ・クイズ その他



 な、何これ。


 職業『解答者』って何!?


 スキル欄にあるクイズに関係あるのかなぁ。



「ヴァン!」

 

 すると、ステータスを見て動揺している私の前に1匹の狼が出てきた。


 瞬きする間もなく突進してくる。


「くっ!」


 すんでのところで回避したが、何度もできる自信はない。


 何もわからないが私はスキルを使ってみる。


『クイズ 攻撃』


 すると私の頭に声が聞こえる。


 《弓道において、4本の矢の全てが的に中たった事を表す言葉をなんという?》


 やっぱりクイズじゃん!!でも答えは簡単だ!


 多分左下ら辺にあるウィンドウにもクイズの文字が表示されてるんだろうけど、見てる暇ないし!


 そんなことを考えていると狼が爪で引っ掻いてくる。


『ハジマールウルフ(Lv4)からダメージを喰らいました』


 ログと同時に、左上に表示されている緑のゲージが半分以上減った。


 何なのその名前!!ええい考えてる暇なんてない!


皆中かいちゅう!!」


「キャウン!?」


『「皆中かいちゅう矢」 を発動しました』

 

『ハジマールウルフ(Lv4)にダメージを与えました』


 クイズに答えると同時に4本の矢がハジマー・・狼に飛んで行った。


 相手のゲージが1/3ほど減った。


 クイズに答えながら戦うってこと?どんな攻撃になるかわかんないじゃん!



 またもや狼が突っ込んでくる。


「ふっ!」


 ぎ、ぎりぎりだ・・・・。



「もう一回!クイズ 攻撃!」


 《代表的なものとしてC-4があり、粘土のような柔軟な可塑性があり、青みを帯びたオレンジ色の閃光を放つことが特徴の爆弾をなんという?》


 やっぱりクイズは簡単だ!


「プ、プラスチック爆弾!」


『「プラスチックボンバー」を発動しました』


「ギャウウゥ!」


 答えると同時に狼の足元に爆弾が設置され、爆発した。


『ハジマールウルフ(Lv4)を撃破しました』

『レベル2に上昇しました!』

『レベル3に上昇しました!』


『「プラスチックボンバー」を獲得しました!』



 わ、私の初陣が終わった・・・・


 こ、これきついかもおおおお!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る