第36話 女神イシュタス
エリクサールを手に入れて1週間俺達はいつものように遊んでいた。
「リヒト今日は海水浴に行かない?」
「それで、海の家で買い食いしよう!」
「私、イカ焼きが食べたい」
「良いね~それじゃ今日は海水浴に行くか?」
悲しい思い出は沢山ある。
憎しみだってまだ消化はされていない。
だけど、ソニア達の体は元に戻った。
まだ、ぎこちないけど最近は心から笑ってくれる事もある。
作り笑いじゃない、俺の知っている幼馴染の本当の笑顔だ。
復讐に生きるより四人で幸せになった方が良い。
もうライトなんて忘れよう。
それで良い……
あいつ等の事は今も許せないけど、関わらない。
それで良い……そう決めた。
◆◆◆
海の家で先に着替えを済ませ三人が着替えてくるのを待った。
「リヒトお待たせ~、どう?」
今日のソニアは白のビキニだ。
清楚なソニアに凄く似合っている。
「えへへ、リヒト僕は? なかなか凄いでしょう?」
確かに凄いな、凄い露出。
後ろ部分なんて紐だからお尻丸見えだし、前側もTバックで上もかろうじて乳首が隠れていて、最早紐に見える。
「ねぇねぇ私はどうかな?」
リタは可愛らしいフリルつきのピンクのワンピース。
胸が小さいリタに似合っていてこれはこれで可愛い。
「皆、似合っていて凄く可愛くて綺麗だよ!」
顔を赤くして見入ってしまう位三人は可愛くて綺麗だ。
「うふふっ、リヒトったらもう、さっきから何処見て顔赤くしてんのかな?」
「僕のお尻見ているけど? もう思う存分触ったのに、まだ足りないのかな?」
「リヒトお兄ちゃん、鼻の下が伸びているよ」
「仕方ないじゃん。俺は三人が大大大好きなんだから」
俺は三人が世界で一番好きなんだから仕方ないだろう。
「「「それじゃ、仕方ないね」」」
四人で泳いで、四人でビーチボールで遊んだ。
今は遊び疲れて、四人して浜辺にシートを敷いてドリンクを飲みながら日焼けをしている。
こんな楽しい日々がこれからも続く……そう思っていた……
空が突然輝きだし、明るくなった。
「眩しいわ!」
「なにこの光……」
「一体なにが起きたというの?」
あたり一面が更に光り輝き目が開けていられなくなった。
「皆、大丈夫かぁぁぁぁぁーーー」
「「「リヒト(くん)(お兄ちゃん)――」」」
三人の叫び声が聞こえる。
「ソニア――っ、ケイトーーっ、リタぁぁぁぁーー」
俺が叫び返すも返事の声が返ってこない。
『暴虐により私の奇跡を奪った背信者リヒト思い知るが良い! 奇跡回収』
三人の返事の代わりに強い光で姿は見えないが、澄んだ綺麗な女性の声が聞こえてきた。
誰だ……一体なにが起きている!
見当もつかない!
「お前は何者だ!」
クソっ油断した......これは多分攻撃だ。
こんな事なら剣を持っておくべきだった。
『お前!? この世で最も気高く美しい私に向かって……『神罰』』
「だれだ!お前は!」
『私の名前はイシュタス……この世界の唯一絶対の女神よ! 良くもまぁ、私の可愛い信者を殺して『私がこの世界の為に神力を注ぎ作った奇跡の秘薬エリクサール』を奪った物ね……だから、回収に来たのよ』
回収だと……まさか!
『言葉にしなくても解るわ……リヒト貴方が私の信者から奪って、あの汚らわしい娘に与えた奇跡の力『エリクサール』の効果を取り返しました……また神罰として殺しました』
取り返した......いや殺した......ソニア達を殺しただとっ!
ふざけるな......
「貴様ぁぁぁーー元はと言えば、お前がぁぁぁぁーー」
『いちいち言葉にしなくても解ります。私がこの世界で選んだ勇者の犠牲になった……だから、取り返しただけだ! そう言いうのね? だからと言って何十人も殺して良い訳? しかもその中の1人は教皇よ! 私の教えを心から信じ幼い頃から正しく生きた存在……そんな存在を殺して良い訳が無い』
「なら、ライトは……」
『勇者ライトは確かに貴方の幼馴染を含み酷い事をしました。ですが殺しはしてない。そして今は贖罪の道を歩み、何千何万の人を救い続けています……貴方も含み数十人を不幸にしたかも知れませんが……今はしっかり勇者をしています。 それに対して貴方はなんですか? 3人を救う為に何人の人間を不幸にしましたか? いえ、はっきり言います。何人殺しましたか? どちらが悪なのかは子供でも分かる事です』
「イシュタス貴方が女神だと言うなら、何故俺の祈りに応えなかった! 俺がソニア達の事で苦しんでいる時に手を差し伸べれば俺は貴方を手を汚さず、貴方を信仰しこんな事にはならなかっただろうが」
『私は女神……そんな一人一人の事など見てられない……世界にとって4人の不幸など大したことじゃないわ……敬虔な存在ならいざ知らず只の信者ですら無い者の祈りなど聞くことは無いわ』
「なら、今回も放っておけクソ女神が!」
『そうはいかない……大罪人リヒト、貴方が奪った物は『私の奇跡』そして奪った命は敬虔な存在なのだから……』
「お前は自分の罪は認めないのか……お前の勇者がした事を……」
『そう……それは謝るわ……だけど、それとこれは違う……奪った奇跡の力を回収……それと神罰として殺させて貰う。これは覆られないわ。とういうか元から弱った体だもの、神罰を別にしても奇跡の力を抜くだけで死んじゃうわ』
縋るしかない......女神と言うなら慈悲の心もあるだろう。
「……助けて下さい! もし助けてくれたらなんでもします! 魔王とも戦います! ライトの手伝いもしますから」
『駄目ね! 貴方の罪はもう取り消せないし償えないわ』
「そうか……なら俺も殺せ……殺してくれ……」
三人が居ない世界なら......俺も生きていたくない......
『殺したら救いになるじゃない? それじゃ足りないわ! 三人が居ない世界で一人寂しく生きる事。それが貴方の償いだわ……それじゃぁね大罪人リヒト、苦しみながら地獄の様な世界で生きるといいわ』
殺してやるーーっ。
せめて殴らないと気が治まらない
俺が殴りかかろうとした瞬間、光は闇に変わり俺は意識を失った。
◆◆◆
目が覚めた……悪い夢だったのか……寒いな。
なんだ、俺日焼けしながら眠っちゃったのか……
「風邪ひいちゃうから帰ろう、ソニア……ケイト……リタ……」
なんで冷たいんだよ……
「おい……ソニア、ケイト……リタぁぁぁぁーー」
うあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーっ!
幾ら俺が叫んでも冷たくなった彼女達が答えることは無かった。
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