第17話 幸せな夜

ホテルに帰って来た。


「リヒト様、書簡が届いていますよ」


書簡? 誰からだ……


手に取ってみると、憲兵隊隊長からだった。


『全員鉱山送りにするのでご安心下さい。 もう2度と社会に戻る事はありません』


俺が憲兵所から歩いて帰ってくる前に素早く手続きがされ、先回りしたと言う事か?


ほぼ即決で決めなければ、この速さは無い。


真相は、勇者と国や教会に忖度した。


そんな所だろう。


俺には関係ない。


俺は擁護したが、国や教会がそうしたのなら仕方が無い事だ。


「ありがとう……悪いけどこれ捨てておいて貰えるかな」


「はい」


俺は書簡を破り、受付の男性に渡した。


◆◆◆


「ただいまぁ~」


「お帰り、リヒト!どう楽しめた」


「お帰りリヒトくん」


リヒトくん?


ケイトは何故『くん』をつけるのだろうか。


ああっ、もしかして『お姉ちゃん』だからか。


「リヒトお兄ちゃんお帰りなさい」


「楽しかったよ! オークマンと飲むのは楽しいからね、だけど俺はやっぱり三人と一緒に居る方が楽しいや。街を出て、安全な場所まで行ったら、今度は四人で飲もうよ」


襲撃された事は心配しそうだから内緒で良いよな。


「お酒かぁ、此処暫く飲んでいないから楽しみ!」


「そうだな、この面子なら良い酒が飲めそうだ」


「私はお酒は苦手だけど、この仲間で飲むなら楽しそうだね! まぁ私は食べるの専門だけどね」


「楽しいに決まっているよ! 大好きな者同士で飲むんだから。それじゃ決定だね」


この街じゃ敵ばかりだから呑気にお酒なんか飲めない。


安全な場所まで逃げてからだな。


旅行気分で楽しみながら、永住の地を探しあちこち見て回るのも悪くないな。


「それはそうと……今日もしない?」


「うんうん、お姉ちゃんに任せて! 凄――く気持ち良くしてあげるからね」


「お兄ちゃん、リタが奉仕してあ、げ、る」


「え~と……」


三人がまるで牝豹の様に腰をくねらせながら近づいてくる。


大好きな幼馴染のセクシーな姿に抵抗なんて出来るわけなく、俺はそのまま、ベッドに押し倒された。


「それじゃ、俺も頑張るか……」


「うん、頑張ってね! 私も頑張るからね」


「まだまだ、夜は始まったばかりだしね」


「うんうん、それじゃ……えい」


めくるめく夜が始まる。


◆◆◆


ソニア達には、凄い傷や火傷がある。


それはローソクの明かりでも目立つ位に酷い。


だが、それは俺には関係ない。


小さな頃からの思い出。


楽しい事や悲しい事、いつも一緒に過ごしてきた。


『思い出』それを共有できる人間は彼女達しかいない。


「リヒト、きもひぃ良い?」


「どうだ……気持ち良いだろう?」


「それじゃ、私はこっち、どうかな、お兄ちゃん」


「ああっ、凄く良い! だったら俺も……」


他の人間は解らない。


大切な思い出を共有できる『幼馴染』


それ以上に大切に思える相手なんて俺には考えられないんだ。


思えば、こうなる前は、ソニアとはキス以上の事はした事が無かった。


手を握っても、キスをしてもお互いがドキドキして顔を赤らめていたっけな。


ケイトは姉の様な存在だし、リタは妹みたいな存在だから手を握った事位しかない。


それでも異性を意識してドキドキしたもんだ。


それが、俺を貪るように求めてくる。


それは凄く嬉しいし『愛』を感じる。


その反面『思い出を育む時間』を奪われたみたいで寂しいものがある。


「「「リヒト」」」


恍惚な笑みを浮かべながら俺を求めて来る大切な幼馴染の三人。


凄くエロくてセクシーで可愛い。


これで文句を言っちゃいけない。


贅沢をいっちゃいけないな。


『俺は充分幸せだ』












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