U-15野球日本代表のエースだけど高校でも嫌々野球やらされていたら、いつの間にか周りの美女たちに好かれてた
ユキオ。
第1話 野球辞めました
『U-15野球ワールドカップ決勝! アメリカを破り、見事日本が優勝を成し遂げました! そして歓喜の輪の中心にいるのは、なんと決勝でノーヒットノーランを達成した
優勝を決めた瞬間……湧き上がる歓声の中、ナインがマウンドに駆け寄り人差し指を空に突き上げながら喜びを分かち合う。
「よっしゃああああああああ!!!!!」
俺……奥村 太陽もチームメイトと抱き合い、涙を流しながら大声で喜びを爆発させた。
ついに……ついに……
野球辞めれるぞおおおおおおお!!!!!!!
***
「太陽、本当によかったの?
U-15世界野球大会決勝、つまり中学野球の最後の試合が終わり一週間。
リビングでごろごろしながら漫画を読んでいた俺に母さんが話しかけてきた。
「いいんだよ、俺はもう野球辞めるから」
先ほど甲子園で10度の優勝経験をもつ高校野球界の超名門、大阪桐栄高校の監督さんから連絡があり「最後の頼みだ、うちの高校にきてくれないか」と誘われたが、二つ返事で断った。
なんでわざわざ野球するために神奈川から大阪まで行かないといけないのか、寮生活とか規則厳しいって聞くし自由がなさそう。
それに強豪校とかっていまだに坊主強制なんだよな……そういう坊主至上主義的なところも好きじゃない!
まあ、強豪であろうがなかろうがもう野球はもう勘弁だけど。
……というか野球という言葉を聞くだけで拒否反応が出てくるぜ。
なぜ俺がこれほどまで野球嫌いになってしまったかというと、地獄の中学3年間が原因だ。
小3でなんと無しに始めた少年野球。
ここまでは本当に楽しかったが、大人たちにお前には才能があると上手く乗せられて中学にあがるとリトルシニア(中学生を対象とした硬式野球チーム)に入ってしまい、これが失敗の始まりだ。
まず練習が地獄だった。
鬼のような走り込みに筋トレ、さらには食トレと称して練習の合間に大量の飯を食わされた。
マジで何回吐いたかわからんくらい吐いた。
そして、休みがない。
毎週土日や長期休みは必ず練習や試合で丸一日が潰れた。
そのせいで友達とも遊べなかったし、好きだった女の子から告白されて付き合えたこともあったけど、結局一回もデートできずに「野球と私、どっちが大事なの!?」と引っ叩かれてフラれた。
本当に身も心もボロボロで、青春のカケラもない日々だった。
でも、その地獄からやっと解放された。
俺が所属していた
監督も俺が嫌々野球をやっていたのがわかっていたようで、県内でも無名の
監督の話によるとここの野球部は教師になってまだ2年目の女性教師が監督をやるようなレベルらしい。
この高校なら俺の名前を知ってる奴もいないだろうから、目をつけられて勧誘されることもないはずだとのこと。
本当は野球部のない高校に行きたいくらいだったけど流石にそんな高校は近くにないし、家からもわりかし近いこの浅羽高校に進学を決めるか。
舞原監督も人の心があったんだな……まあ、あの仕打ちは一生忘れないけど。
「あ、暇だしあれ片付けとくか」
俺はある事を思い出すと、起き上がりダンボールを持って二階にある自分の部屋へと向かった。
部屋に入るとそこには野球で獲得した数々のメダルやトロフィーが目に入った。
「う……やっぱりこれ見ると嫌でも野球を思い出すな。目に毒だ、さっさと片付けよう」
U-15世界大会優勝の金メダル、大会MVPの選手に送られるトロフィー、シニア全国大会優勝メダルなど……両手でも持ちきれないほどのそれらを一つ一つダンボールへとしまっていく。
他の人から見れば輝かしい価値のあるものかもしれないが、俺にとっては黒歴史なだけのただのガラクタに過ぎなかった。
「……あ」
部屋の整理をしていると、写真たてに入った一枚の写真が目に入った。
それは、グローブとボールを持っている俺と、仲の良かった女の子……
確か七希が小6の時に引っ越すことになって、思い出に撮った写真だっけ。
当時はあいつが引っ越すことになって寂しかったけど、今思えばよかったのかもしれない。
七希がそのまま中学も一緒だったら多分俺と同じ真浜シニアに入っていただろう。(リトルシニアは女子も加入することができる)
あいつにあんな辛い思いはしてほしくないからな。
……この写真だけは、飾っておこう。
野球に関する唯一の楽しかった思い出。
俺はそれだけは忘れないように、しまわずに残しておいた。
そして、約半年後……俺は入学することになる浅羽高校で思いがけない出会いをすることになる。
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