第9話 恋愛天使総進撃‼︎(caution)
「何だよ、こんなところに呼び出して…」
「なぁに…簡単な事ですよ…先輩」
「桐子さんへのアプローチをやめてください」
「無理だ‼︎」
「…仕方ないにゃあ〜、
穏便に済ませたかったんですが…」
「ヌイグルミしゃぶり……」
「‼︎…今…なんて……」
「いえいえ、なんでもございません!
まぁさか雄々しくワイルドな先輩に限って
寝る時にヌイグルミをしゃぶってないと
落ち着かないなんて事ない
と思いますのでお気になさらず…」
「……フッ、フン!その程度で…」
「借金の返済…」
「⁈」
「モテる男というのは辛いですなぁ、
学生とはいえ交際費もバカにならんでしょ?
かと言って両手で数え切れんほどの人から
金を借りちゃあいけませんよぉ〜」
「ウルセェな‼︎
お前が肩代わりでもすんのかよ‼︎」
「するわけないでしょ、
桐子さんを諦めん限り…」
「ホラッ、そうくるだろ……⁈」
「……そうです、
桐子さんを諦めん限り…ですよ…」
「……嘘じゃねぇダロォな」
「嘘は申しませんよ…もっとも反故にするようなら報いは受けてもらいますが…」
「………」
「貴方も覚えてないでしょうが、
合計で7桁に届く目前だとか…」
「ホントに肩代わりしてくれんだよな」
「ワタクシ、嘘つかない、ですよ」
「………わかった…諦めよう」
「ありがとうございます…」
名護はまた一つの恋を握りつぶした。
彼は自分が外道である事を
誰よりも深く知っていた。
だが、愛する友の為には
道を踏み外してでも
成さねばならなぬことであった。
「次は……この娘か…」
そして、彼はまた1人恋の邪魔者を消すべく
学校の廊下をハードボイルドに歩んでいった。
“葵”
それが彼がもみ消すべき
恋の火種の名であった…
一方その頃、狙われた本人はというと
「「「惚けてますなぁ〜」」」
「えっ、何?何か言った?」
「ちょっとお聞きになって団吉さん、
どうやらあてくし達の声が
聞こえていらっしゃらない
ご様子でしてよ」
「なんで貴婦人風の口調
なのかわからないけど、
そのようでございますねぇ」
「もぉ〜、2人とも何話してたのぉ」
「ともあれ諸君!このままではいけないわよ‼︎
アオちゃんの彼と再び熱いキッスを
交わすという目標を
果たす為には休む事は許されなくてよ‼︎」
「あくまで貴婦人口調なんじゃな…」
「ですから、次の矢を放ちますわよ!」
「オイ、また要らない事しようとしてんじゃないぞ」
「大丈夫よ、学んでないわけないじゃなぁ〜い。
お邪魔虫を追い払って2人の時間を
ロマンチックする!
それを通してパートナーシップ!
そしてゆくゆくは
プリーズキッスウォンチューよ‼︎」
「今度は横文字かよ…
まぁ、反省してるみたい
だからいいんだけども…」
「………」
葵が何やら唇をくにゃくにゃと曲げながら
モジモジし始めた。
「緊張しているわね…ヤングガール…」
「えっ…う…うん!」
「ブレイブをハブするのよアオちゃん!
最初に比べれば遥かに会話できるように
なったじゃあない!」
「そっ…そうだよね……がん、ばります‼︎」
葵が強く決意した翌日、
次の矢と称される作戦が始まった。
まぁ、作戦と言ったって下校の時に一緒に帰る程度のもんだのだが、
そっちの方が都合がいいという判断すればこうなるのは必然だった。
やり方もこの前と同じ、交差点で康介が通るのを待ち伏せ
偶然を装って接触させるといった感じだ。
ただ一つ違うの葉子も団吉も一切手助けしないというところだ。
「目標、接近中‼︎
会敵まであと30秒前!」
すっかり偵察も板についたコウモリのコーちゃんがそう告げると
人に化けた葉子が葵の背後から肩に手を置いて勇気づける。
「アオちゃん、今のアナタなら大丈夫、
自信を持って行きなさい」
「うん!ありがとう」
その言葉を聞いた葉子はポンっと葵の肩を叩き、
彼女の前進を後押しした。
それに応えるように葵は前より自信を持った様子で
一歩ずつ前へ前へと進んでいった。
「!…やぁ!」
「…や、やぁ」
「この前はありがとう…」
「いやいや、それにしても驚いたねぇ
あんなんがいきなり出てきたらそりゃ倒れるよ…」
「そっそうだね……………あ、あのっ」
「?どうしたの?」
「…おっ……重くなかった?」
「全然そんな事なかったよ、大丈夫」
葉子は親しげに語らう2人を見て、
上手くいってる上手くいってるといった様子で
満足げに去ろうとしていた。
やや浮かれ気味でクルッと身を翻し、
そのまま前歩き出そうとすると
ドンッと何かにぶつかった。
そのまま後ろに跳ね飛ばされた葉子は
大きな尻餅をついしまった。
「イッツゥ……」
「あぁ、すいません」
「いえこちらこそっ!………」
「立てますか?」
「あっ、ありがとう、ございます……」
差し伸べられた彼の手を取り、
ゆっくりと立ち上がった。
スマートな容貌とは裏腹に
力強さを感じさせる大きな掌に
葉子は不覚にもグッときてしまった。
そして、彼女はついに決意する。
「このオス、絶対にモノにしてみせる‼︎」
…………………(キリトリ線)…………………
空いている方の手も
差し伸べられている手の方に伸ばし
両手で包み込む。
すると彼の方もやや驚いたような
表情を浮かべたのが見てとれた。
そのまま全体重を彼の腕に委ねるようにして
ゆっくりと立ち上がる。
それでもグイッと引き寄せる男の子の
力強さにキュンときてしまう。
それなら負けじと葉子もグイッと前に引き寄せる。
「わ、わぁ!」
同じ方向に力がかかったので
今度は男の子の方が体勢を崩す。
ドッサァ!
バフッ、ムニィィィ
仰向けに倒れ込んだ彼の上に
覆い被さるようにして葉子が倒れた。
逞しい雄っぱいと柔らかなおっぱいが重なり合って、
心地良い暖かさを服越しに感じる。
おまけに2人の足が絡む形で倒れたせいで、
双方の股座には太ももが当たっているという
それはそれはエッチなことになっていた。
すっかりその気になってしまった葉子が
この状態を利用しないてはなかった!
ムニュゥゥ、プルン
ムニュゥゥゥゥ
間髪入れず、立ち上がろうとするフリをしながら
胸を押し付けながら左右に揺らし始めた。
それだけならまだしも足をモゾモゾと動かし、
相手のご機嫌を伺う。
さぁさぁ、女の子のおっぱいよ…
嫌というほど意識して私の発情期のお相手になってねぇ〜
そんなあんまりにもあんまりな
事を思い浮かべながら
葉子はアピールを続けた。
相手の顔を見ると恥ずかしいのか、
顔をこちらから逸らしてはいたが、
頬は赤く染まり困惑の中に喜びのような表情が
あるのがわかった。
嬉しい癖して恥ずかしがっちゃってぇ…
そそるじゃないのぉ〜
もはやオヤジのような心境で男の子に
セクハラをしていると彼もヤラレテばかりでは
いられなくなったようだ。
ガバッ
腕を前に伸ばし、葉子の背中で組まれた腕は
やや強引に彼女を引き寄せ、
再び体を密着させた。
おぉ、やる気になってきたんじゃない?
ちょっと大胆すぎるけどこっちとしてみれば
シメシメってところよ…
葉子はそう考えながら
やや白々しく
「どうかしましたか?」
と聞いてみた。
すると葉子の脇の下に
親指と人差し指の間の部分を
差し込み体を持ち上げると
ギョッとした表情のまま
顔からお腹に至るまで上体を
ギョロリと舐め回すように
見回した後、こう言った
…………………(キリトリ線)…………………
「……葉子?…まさか、葉子か⁈」
その声には葉子にも聞き覚えがあった。
「…まさか、名護?、
化け猫の名護妙吉かぁ⁈」
「ちょっと!それは秘密なんですから
デカい声ださんで下さいよ‼︎」
「なぁに言ってんの、
アンタの声の方がデカいわよ。」」
そういうと同時に葉子は
実に素っ気なく立ち上がった。
「おぉ、そうですな失敬失敬…」
名護の方も邪魔な葉子が退いたので、
ゆっくりと立ち上がり
背中のホコリをはたいた。
「何だってアンタがここに居んのよ?
一年くらい見てなかったから森に居ない
とは思ってたけど…」
葉子が腰に手をやりながら尋ねた。
「それはコッチのセリフですよ、
なんだって貴女がこんな街ん中に
降りてきてるんですか?」
「そりゃあ、女の子の恋路を
オールレンジでサポートするために
決まってるじゃないのぉ…アンタは?」
「そりゃあ、大事な大事な男友達の
恋の為に鬼となってるんですぅ、
せっかく僕のオスとしての魅力のお陰で
葵ちゃんを瞬殺できたと思ってたのに……」
「…?、ちょっと待って?
今、葵ちゃんって言った?」
「?言いましたけど何か?」
「……アタシ…その娘と康介君の
恋の応援してるんだけど…」
「…あぁ、私はその康介君と
葵ちゃんの破局を狙ってここにあるんですわ」
「は?なんで、そんな事してんのよ?
アオちゃんは康介君とくっつきたいのよ⁈」
「だって、康介君は桐子さんという
憧れの先輩がいるんですよ?」
「………え?」
「え」
「え゛ぇぇぇぇぇ‼︎」
ちゅ〜どく 〜優麗の正体見たり〜 @Mrkyu
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