11 騎士達の誓い

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 昨日の土砂降りがまるで嘘のように、どこまでも晴れ渡る青い空の下で。


「ではでは! 待ちに待った! アルスの中心、王都に転移しに行きましょうか!」


「あー、くっそだりぃ、行きたくねぇ……」


「貴女ってほんと見た目と性格違いすぎ、残念ねぇ……?」

 

「うっさい! ハゲ!」


「ちょっと、誰がハゲよ!」


 出会ってからまだ数日程度なのに。

 早朝からカレンとエディの二人は、騒がしく軽口を叩きあっていた。


「もういいよ、ここで。王都とか絶対にめんどいからここに住もう! これ名案じゃね?」


「えっ、ちょ? なにを言ってるの!? 王都に行かないでどうするのよ!」


「いやだってさーここも一応アルスじゃん? 私アルスに行けって言われただけだし? アルスなら別にどこだっていいし! それにここ長閑で空気もいいし、住み心地とっても良さそうだよ?」


「それは……まあそうだけど! 貴女をこんな辺鄙な所で住ますわけに行かないでしょ! 英雄を虐げてるって他国にボロクソ言われるじゃない!」


「実は私、田舎暮らしにちょーっと憧れていたんだよね? 自給自足スローライフいえーい!」


「イヤイヤイヤイヤ! それ、ほんとーに困るから! 絶対にやめて?」


「ほら、あそこの丘の上とかにさ家でも建てたら……結構良さそうじゃない?」


「ちょっとまって!? それだけは絶対にダメだって! 貴女には王都で住んで貰わないと困るの!」


「……私は特に困らないよ?」


「こっちが困るのよ! それに明後日には歓迎の宴が開かれる予定だし……」


「そんなめんどくさそうな宴、私は出席を拒否する! ほーれ、特例特権!」


 ーージャラリ。


「こんのっ、クソガキ……」


「あはは、エディ? 男がでてるよー? 大丈夫そ? んー?」


 カレンは上目遣いでエディを見上げ、挑発するようににっこりと微笑む。


 そんなカレンの様子にエディは。


「っあぁ、もう! ほんと……この子はいったい何様のつもりなのよ!?」


「世界中の人々から英雄と称賛されている、イクスの錬金術師様のつもりかな?」


「……思ってたんと、色々違いすぎる」


「それよく言われるー! 意外性あるでしょ、てへっ?」

 

 そんなやり取りをしながら。

 カレンはエディに引きずられるようにして、転移装置の前までやってきた。


 そして、装置の起動を待つ。


「やっぱりさ、王都なんて行きたくないんだけど。悪い予感しかしないし……」


「貴女ね? 何回も話したでしょう! 国際問題になるのよ! 貴女がこんな辺鄙な田舎で暮らすのは!」


「えー、田舎暮らしがどんなに素晴らしいか、野山を駆け回りながら世界に向けて発信してあげるから全然大丈夫だよー?」


「それ……全然大丈夫じゃないからね!?」


 と、二人が押し問答をしている間に。


 転移装置がゆっくりと起動を始める。

 アルスの転移装置はイクスとは違い街中にあって、ただの移動手段でしかない。


 隣同士、元は一つの国だったのに。

 今はもう、なにもかもが違っていた。


 けれど転移装置を起動する為の術式は同じ。

 赤い魔方陣が幾重にも浮かび上がり空中で停止すると、赤い魔方陣は再び折り重なる。

 

 そして目も開けていられない程の光にその場は包まれて、転移装置独特の浮遊感を感じた次の瞬間。


 ……目を開けばそこは屋外で。


「えっ……うわ、外!?」


 カレンは目を丸くして驚いた。

 イクスじゃ転移装置が置かれているのは屋内で、屋外に置いておくだなんてありえない。


 だがこんなにだだっ広い場所が首都の中にあるだなんて、やはりアルスは広いなと興味津々でお上りさんのように見物していたら。

 

「カレン」


「え? なに、エディ……」


 エディに声を掛けられ、振り向けば。


 エディを始めとしてここまで同行してきた騎士達が一斉に地面に傅いて、カレンを見上げ。 


「カレン・ブラックバーン様、ようこそ我が国の王都ウルプスへ! これから全身全霊をかけ、この命に代えましても貴女様をお守りさせて頂きます」


 そう宣言した。


 そんな中エディは、カレンと目を合わせて優しく微笑むから。

 大事な存在だと言われているようで。


 胸が苦しくなった。

 

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