薬の錬金術師。
千紫万紅
1 プロローグ
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私の名前はカレン・ブラックバーン、今世界中で脚光を浴びるイクスの天才錬金術師様である。
自分で天才とか言うのもアレだが、実際そうなんだから特に問題はない。
さて、私のどこらへんが天才なのか。
まず始めに語っておかなければいけないのは、私が生業とする錬金術師という職業についてだろう。
この錬金術師という職業は、なりたいからなれるというような簡単な職業ではない。
錬金術師になる為には国家の承認を得なければならず、承認を得る為には難関だと言われる試験に合格しなければならないのだ。
もしこの試験に合格せず錬成を行おうものなら、断頭台の上でこの世界と永遠にさよならする事になるので、錬金術師になりたい者達は皆それはそれは必死に勉強する。
そんな難しい試験に私は史上最年少の八歳で合格した上に、その後の活躍も目覚しいもので。
今や私は英雄なんて大層な二つ名で呼ばれ、世界中の人々から称賛を浴びてしまっている。
べつに私自身そう呼ばれる事を望んだわけじゃないし、英雄と称賛されても全然嬉しくないので止めてもらいたいが誰も止めてくれそうになくて。
実はちょっと困っていたりするのだが、その話はちょっと横に置いておいて。
……さて。
そもそもの話になるのだが、何故私が英雄と世界中の人々に呼ばれてしまっているのか?
その答えは至極簡単で、私が錬金術によって世界を救う薬を作り出してしまったからである。
どんな薬を作り出したのかはまた今度語るとして、そろそろ本題に移ろう。
いや、本題と言っても大した事はない。
ちょっとばかし不味い状況に、私が陥ってしまっているだけで。
その不味い状況とはいったいなんぞや?
と、聞かれたとしたら。
まずはこの世界の事について語らねばならない。
この世界の住人は皆【魔力】と呼ばれる不思議な力を身体の中に持っていて、それを消費して【魔法】というモノが使えたりするらしい。
だが私は生まれつき魔力を持たずして生まれたらしく、魔法というモノが一切使えなかった。
なぜそんな風に生まれたのはわからないが、それによって私の人生は大きく変わってしまった。
魔力という不思議な力が無いせいで幼い私は親元から引き離されて、国外に追放されたのである。
どうして罪も無い幼子を国外追放にしたのかと簡単に説明すれば、私が生まれた国【アルス】は魔力至上主義国家で魔法が使えない者には無価値という烙印を押して国外に追放するような国だったのである。
なので私は幼くして国外に追放された。
――そう、ここ【イクス】に。
ここ【イクス】という国は魔力を持たない錬金術師達の国で、魔力至上主義国家の【アルス】とは正反対。
国内での魔法の使用を全面的に禁止していて、使用が発覚すれば罪に問われ国外に追放される。
――そんな国で。
晴天の霹靂とは正にこの事だろうか?
いつものように錬成をしていたら。
私の身体には全くといっていい程存在していなかった魔力が、突然溢れだしてきた。
それはもう隠し通せないくらいに。
「嘘、でしょ……」
どうしてこんな事になったのかと、いくら考えてみてもその答えは出ない。
一度くらいその魔法とやらを使ってみたい。
幼心にそう思った事はあるが、本当に使ってみたいなんて思った事はなかったのに。
だが今はをぼんやりと感傷に浸っているような暇は私にはない。
私の身体から止めどなく溢れ出す魔力を、国が所有する特別な魔道具が感知して。
違反者がここにいると、耳障りな警鐘を街中に鳴り響かせて知らせているのだから――。
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