ロープと足跡

天川裕司

ロープと足跡

タイトル:(仮)ロープと足跡



▼登場人物

●田島輝美(たしま てるみ):女性。35歳。独身OL。

●城戸照雄(しろと てるお):男性。36歳。独身サラリーマン。

●河野理香子(かわの りかこ):女性。35歳。美人。照雄の彼女。

●岡野友紀(おかの とものり):男性。45歳。貿易会社で働く。高所恐怖症。

●警察:男性。一般的なイメージでOKです。


▼場所設定

●貿易会社:事件が起きた会社。7階建ての割と大きなビル社屋。6階~屋上までは工事中。

●街中:仕事帰りの道やレジャー先など一般的なイメージでOKです。


NAは田島輝美でよろしくお願い致します。

(イントロ+メインシナリオ+解説:ト書き・記号含む=3618字)



イントロ〜


皆さんこんにちは。

ところで突然ですが、皆さんは何らかの事件の

第一発見者になった事はありますか?

できればそんなのには絶対なりたくないですよね。

でもその機会はある日突然やってきたりするものです。

その時に注意しなきゃならないのは、

第一発見者であるあなたが犯人じゃないか?

なんて疑われたりしないかという事。

今回はその第一発見者になってしまった、

ある女性と男性にまつわる意味怖のお話。



メインシナリオ〜


私の名前は田島輝美(たしま てるみ)。

今年35歳になる独身OL。


私が働いているのは都内の某IT企業で、

もうそこで働いて10年が経つ。


そんなある日の仕事帰り。


輝美「ふぅ、遅くなっちゃったなぁ」


残業疲れですっかり日も暮れて、ため息つきながら

いつもの帰り道を歩いていた時。

向こうから1人の男性が歩いてきた。


輝美「あの人もきっと残業してたのかな。お互い大変だね」


そんな事を思いつつ、すれ違おうとした時…


バタン!!(上から人が落ちて来た音)


輝美「きゃあ!!」


照雄「うおっ!!」


いきなり上から人が降ってきたのだ。


輝美「な、なに…え?えぇ!?」


一瞬、訳がわからない。


照雄「こ、こ、これって…も、もしかして…」


私達2人とも腰が抜けたように地面にしゃがみ込みながら、

今目の前に横たわる中年男性を見て…


「もしかして、自殺…!?」


とおそらく同時に思った。


ト書き〈事情聴取〉


それからすぐに警察が来て捜査。


照雄「い、いきなりだったんです、う、上から落ちてきて…」


輝美「もう、何が何だか分かりませんでした…!」


私達はとりあえず事情聴取を受け、

その時の様子を何度も詳しく聞かれた。

入れ代わり立ち代わり違う刑事さんが同じ事を聞いてくる。


その時の衝撃というか恐怖は、

それからも私達の心から拭い去れなかった。


照雄「た、大変でしたね…大丈夫ですか?」


私とすれ違おうとしたその男性の名前は

城戸照雄さんと言った。

私と同じく都内のIT企業で働いている。


それから捜査が進み、落ちてきた男性の身元が分かったらしい。

ニュースにもなったが、名前は岡野友紀さんと言い、

ちょうど私と城戸さんがすれ違おうとした時

隣にあったオフィスビルで働いていたとの事。


そのオフィスビルは貿易会社でかなり大きい。


輝美「ええ、あなたも大変でしたね…」


私と城戸さんはこれを機会にちょっとした知り合いになった。

ありえないショッキングな出来事に立ち会った事が

何となく2人の絆のようになったのか。


ト書き〈数日後〉


それから数日後。

どうやら岡野さんは自●だったらしい。


最近仕事に忙しく、また他にも何かで悩み

身を投げたのか?…なんて言われていた。


でも同時に、

「本当に自●かどうか怪しい。もしかしたら他殺かも」

という線も警察の捜査の上では浮かんでいたらしい。


岡野さんは極度の高所恐怖症だったとの事で、

幾ら自●にしてもそんなビル社屋の屋上から身を投げるなど、

そんな方法を取るだろうかと。


またそのビルは7階建てで、6階から屋上までの階段は

事故当時、工事していたらしい。

だから6階から階段を上って屋上までは

誰も行けなくなっていたとの事。


更にエレベーターもメンテナンスで動かなかった事から、

社員は事故発生時から遡って1週間、

みんな階段を使って上り下りしていたらしい。

どうしても屋上へ行く場合は会社側の許可が必要だった。


そんな状況で屋上の手すりには、

何かでこすられたような跡があった。

岡野さんはその手すりの付近から落ちたとの事。


警察は更に入念に捜査を開始していた。


ト書き〈数日後〉


それから更に数日後。


理香子「あどうもこんにちは♪」


輝美「あ、どうも♪」


照雄「実は彼女、今僕と付き合ってる人で、理香子さんって言います。どうぞこれからもよろしくね」


照雄さんとはあれから少し仲良くなって

会社が近かったのもあり、ちょくちょくランチなんかへ

行く仲になっていた。


でもある日、急に彼は今自分が付き合ってる彼女を私に紹介し、

「これからは3人で会いましょうね」

みたいな事を言ってきた。


正直、照雄さんは私から見てハンサムで、

ちょっと「良いなぁ」なんて思ってたんだ。

だから少し拍子抜け。


「彼女いたんだ」(輝美の心の声)


でもそうやってはっきり自分の彼女を紹介すると言う事は、

遊び人じゃない証拠。


彼女に隠れて私と浮気する…

なんて素振りも1つも無かった事から、

照雄さんの誠実さが少し伝わってきた。


それから私も安心して2人と会うようになり、

ランチやディナーへ行くようになった。


ト書き〈オチ〉


そして数日後。

警察の捜査はまだ続いている。


その日、私は照雄さんと理香子さんと一緒に

レジャーへ行く予定になっていた。

照雄さんが車を出してくれて3人で行く予定。


待ち合わせ場所まで行く途中、

私は携帯のニュースを見ていた。

するとそこに…


(ニュースの文面:セリフの形で〉


「警察が科学捜査用ライトで調べたところによれば、6階から屋上までの階段に足跡が見つかったとの事で…」


と報道されていた。

その足跡はおそらく革靴とヒール。

この段階で岡野さんが働いていた

その会社の社員が疑われる事になった。


(ドライブ)


理香子「お待たせ〜♪じゃあ行きましょっか」


それから私達は山へドライブに。

2人とも気さくで明るくてとても楽しい。


途中で休憩しようと、私達は山道の途中で車から降り

外の空気を吸った。


その時また3人で談笑し、

2人は何となく思い出話を語り始めていた。


それを聞いて少し驚いた。


理香子さんはなんと、

岡野さんが働いていたあの会社の社員だったらしい。

今でも働いていると言う。


しかも理香子さんは…


理香子「私、正直言って、あの人が亡くなってホッとしてるの。実はね、私あの人にセクハラされたり、何度も言い寄られたりしてて、ほんと迷惑してたから」


輝美「え?そうだったんですか」


照雄さんもそれを聞いて驚いていた。

そして…


照雄「確かにあの人、評判良くなかったからなぁ」


と言った。


その後の捜査で、手すりについたあのこすられたような跡は

ロープによるものだと分かった。



解説〜


なんとも壮絶な場面に出くわした輝美と城戸。

その後しばらくはその衝撃が残るでしょうね。


自●した中年男性は貿易会社で働いていた

岡野友紀という社員でした。


でも本当に自●だったのでしょうか?


まず靴跡。

事故発生時、岡野が働いていた貿易会社の6階から屋上までは

工事の為、階段を上れない状況になっていました。


でも足跡鑑定から、6階から屋上までのその階段に

革靴とヒールの足跡があるのが判りました。


もし革靴だけなら岡野が残したもの、

とする事が出来るかもしれませんが、

ヒールの跡も一緒に残っていたとなると

話は全く違ってきます。


自●するのに、わざわざ女性が同伴する事はないでしょう。


つまり男性と女性がその場にいたと言う事は事実で、

「その革靴の足跡が一体誰のものなのか?」

という事が疑問になるわけです。


実はこの時、岡野は抱え上げられて階段を上っていました。

そう、抱えていたのは城戸と理香子。

だから革靴の足跡は城戸のもので、岡野のものではありません。


女性1人の力で男性を抱え上げるのは無理なので

城戸が手伝っていたのです。


理香子の話からも分かるように、

岡野は余程嫌われるタイプの人間だったのでしょう。


そして岡野は高所恐怖症。


自●の真相は他殺で、

岡野は体を緩くロープで手すりにくくりつけられ、

目覚めたと同時に驚き、その拍子に体が動いて

屋上から地面へ真っ逆さま…と言う計画のもと

殺されていました。


理香子は残業で残っていた岡野の元に

いちど帰ったフリしてまた戻ってきた上、

殺害するその直前に

岡野に睡眠薬でも飲ませていたのでしょう。


それから城戸と協働して岡野を屋上まで抱えて運び

自●に見せかけるその細工を施していました。

もちろんその後、ロープは理香子が回収。


城戸はストーリー冒頭で

別の会社で働いているように見えましたが、

それ以前に働いていたのは岡野と理香子が今働いているその会社。


その事が分かるヒントが

ラストの城戸のセリフにありました。


「確かにあの人、評判良くなかったからなぁ」


別の会社で働いているのに、

なぜ岡野の日頃の様子が分かるのでしょう?


おそらくその貿易会社で働いていた時、

城戸も岡野から散々な目に遭っていたのかもしれませんね。


そして理香子へのハラスメントを理由に

ついに堪忍袋の緒が切れて、

今回の殺害計画に至ったのでしょう。


岡野が落ちてくる時は岡野が目覚めた時。つまり偶然。

そんな計画があったからこそ

城戸は事件現場のビル社屋の近くにいた訳です。


事を終えて裏口から出てきたのでしょう。

理香子も一緒にその裏口から出て、

既にその時は帰路についています。


そのビル前の道を歩いていた時、

まさにその偶然で岡野がその場に落ちてきました。

だから驚いたように見せかけたのも全て演技。


さて、その真相に気づき始めていた輝美。

その後、どうなったのでしょう?


山道の途中で車を停めてそこで降りる…

というのが、その目的じゃなければ良いのですが。



動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=QRgpYYPxiSM

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ロープと足跡 天川裕司 @tenkawayuji

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