誕生日に願いを叶えてくれる美少女?天使が来たので感度1000倍の女の子を――

えん@雑記

短編

「ふふん! 私は美少女天使さ。さぁ君の願いを言いたまえ」



 正直夢でも見てるようだ。

 そりゃそうだろう、俺が誕生日に自分自身のご褒美。といっては夜の22時に298円のケーキを食べようとしたら、知らない女性……たぶん30代? 胸は無く頭に輪をつけ魔法少女が持つようなステッキを持ち、背中には小さな羽を付けたコスプレ女が俺に向かってドヤっているからだ。


 とっさに手元にあるスマートフォンを手に取り110番を押した。


 婦警の声で「こちら警察です。事件ですか? 事故ですか?」と聞いてくる。俺が両方です。と、言う前にスマートフォンが爆破した。



「うあっちいい!」

「君! いきなりの通報はいただけいな」

「あったりまえだろ! どこの女だ。俺はまだ誘拐で捕まりたくないっていうの! わかるか? メンヘラ女、いくら成人していても社会的には俺がわるくなるの! ああもう俺のスマホが」

「しゃらーっぷ!」



 俺の手元には、先月ローンが完済した60回払いのスマートフォンが黒くなっている。



「くそが! バッテリーの劣化かよ!」



 これだったら後二万たしてもう少し新しい物をかえ……。



「ティンクルティンクルマジカルチャージ壊した電子電話を修理♪」

「その歳でその言葉………………正気か?」

「いいから! 電子電話見なさいよ」

「はぁ? こんな黒焦げの……なおってる!?」



 爆破したはずのスマホが直っているのだ。

 新品と交換のマジックでもしたのか? と思っているとお気にいりの動画やブラウザのログインも俺のアカウントになっている。

 夢でもみているのか? コスプレメンヘラ女を見ると俺をみてはドヤ顔だ。



「これで天使って事わかったかしら?」

「…………本物か?」

「偽物と一言でもいったかしら? さぁ願い事を言うのよ!」



 カメラを探してもそのようなのは無い。

 女っけの無い部屋に女のいい匂いがする、玄関も開いた記憶はない。8畳の部屋には俺とメンヘラとおもった女だけだ。



「じゃあ、帰ってくれ」

「しゃらっぷ! 君ねぇ天使族がわざわざ願いを叶えに来たのよ!? 帰ってくれって何帰ってくれって」

「…………本音は?」

「私だってこんなクソみたいな人間の前に来て願い何て叶えたくないわよ。でも今月の善意ノルマが足りないのと、相談した上司が抽選で選ばれた貴方の願いを叶えたら帳消しだって言うから、クソみたいな人種の願いをかなえるだなんて本当はぜえったい、いやよ」



 なるほど。

 顔は笑顔であるが、メンヘ……いや社畜天使の本音を聞けば俺の心も落ち着く。


 俺は立ち上がり、天使女の前に手を差し出すと、女のほうも握手をしてくれた。


 俺は再び床に座ると、目の前の天使は消毒液っぽいスプレーで手を洗いハンカチで入念に拭きはじめた、イラっとはするがこの哀れな仲間社畜に怒るきもうせた。



「一応何で俺なんだ?」

「本日が誕生日で、願いを世界平和とか他人のために使わなく、夢も希望も彼女もいない人間が65535人、その中で上司がサイコロを振って出た数字が貴方なの。幸運に思いなさい」



 なんだか、あと1人足したら0人になりそうな人数だ。

 しかし、急に言われてもだ。



「仮にだ。大金が欲しいと言ったら……いやこれは願いじゃなくてな」

「そうね過去の例から言うと10億願った人は10億もらって、その代わり1億失った人が10人いたわね」



 何だこの天使。

 少し嫌な予感がする。



「…………仮にだ。体を鍛えたい。と言ったら……?」

「願い事を言った人を時の部屋につれてって10万年ほど体を鍛えてもらったわ、現代に戻してあげたけど、あーしかいわなかったような」

「…………悪魔じゃねえか!」

「天使だっていってるのよ!」



 俺が叫ぶと、壁ドンが来た。

 夜の22時に叫ぶものではない。



「ええっと、願い事早く言ってもらえるかしら?」

「まて。前例をもう少し聞いてからだな」

「小うるさい人間ねぇ」



 当たり前だ。

 俺はこう見えても自分の幸せに他人を不幸にする勇気はない。

 勇気がないからこそ選ばれたのかもしれないが。



「か、かりに恋人や結婚をだな」

「その手の願い言う人多いのよね。まぁいいけど……恋人だったら上司の天使がサイコロを振って、幸せな未来を確定された女性の所にいって恋人が変わりましたって通告。結婚も同じね」

「俺との結婚や彼女が罰ゲームじゃねえかあ!」



 うるせえぞお!!!

 と、壁ドンが二連打で来る。



「ご、ごめんなさいっ! …………す、少し静かに話そうか」

「君がうるさいだけなんですけどー」

「わかった」



 どうやっても俺が願いをかなえると他の人間が不幸になるらしい。

 願い事を言う気にはならいが、願い事を言わないとコイツは消えない。


 別に今の生活に満足はしてないが不満足もこんなものだろう。と諦めている俺はこいつに、いやこいつらに一泡吹かせてやりたい。



「わかった。願い事が決まった!」

「本当!? やっとこの豚臭い部屋から出れるのね。私が魔法を唱えるからその後に」



 最後までイラっとする奴だ。



「ティンクルティンクルマジカルチャージ――」

「目の前の女を感度1000倍にして人間に転生させ結婚するまで続け!」

「おお、上司よ契約者の願いを叶えたまえ――は? ちょっ!? まっ――」



 部屋の中が白くなった。



 ――

 ――――――



「あれ?」



 俺は辺りを見回す。

 時間を見ると夜の22時だ。

 テーブルの上には帰りに買った298のケーキだ。



「目の前に誰かいたような……? なわけがないか。まぁいいか……ケーキを」



 ピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポンピンポン――



 うっるせええ! だれだこんな時間にインターホンを鳴らす奴は。



「はいはいはいはいはい! 誰ですかっ!」

「…………こちら警察です」

「は?」



 俺は慌ててノゾキアナをのぞき込むと、制服を着た婦警が立っているではないが。本物を見た事ないが警察手帳を律義に見せている。



「は、はい! 今開けます」



 俺が開けると、30代ぐらいの婦警さんは俺の顔を見ては眉をひそめている。うーん……。



「チェンジで」

「はぁ? ふざっ……落ち着け私、やっと見つけたのよ」

「ええっと……何の用で」

「さ、先ほど電話で呼ばれましたけど!」

「人違いでは?」



 警察に電話をかけた記憶はない。

 少し待ってもらってスマートフォンの履歴を見せた。



「…………」

「…………」



 そこには数十分前に警察に電話した後がある。

 おかしい……冤罪だ。



「機械の故障ですかね?」

「とにかく、部屋の中を確認させてもらいます。後これに記入を」

「はぁ……えっ!? あのこれ婚姻届と書いてあるんですけ――」



 俺の手が婦警さんにあたった。



「ひゃん!」

「ひゃん!?」



 妙に色っぽい声で俺は一歩後ろに下がる。

 涙目になる婦警は相変わらず俺をにらんでいるも、深呼吸して笑顔になった。怖い。



「こいつが結婚すれば呪いはとける、こいつが結婚すれば呪いはとける、こいつが結婚すれば――」

「あ、あの……よくわかりませんが俺は彼女もいませんけど……」

「知ってます! ですから私が妻になります!」



 いやいやいやいやいやいや。メンヘラもここまでは言わない。

 それに初対面な女に……あれ? 初対面だよな。

 初対面に思えない婦警とこれから娘が生まれるまで最初の出会いがこれだった。


 

 

  

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