異世界にクラス転移されたら、最初から勝ち組で最強でした
月海月
第1話 突然の異世界召喚
「私達の世界『オプティム』にお越しいただき、勇者の皆様、歓迎いたします」
「まさか、この者達が我らの世界を救う勇者か‼」
「何とも勇壮なお姿だ‼」
(……何これ、全く状況が読み込めない‼ 俺達の身に一体何が起きたんだ⁉)
普通の高校生、広樹大智は、自分たちに一体何が起こったのかを振り返った。
〇〇高校の2年A組の27人の生徒は、数分前まで普段通り教室で数学の授業を受けていた。しかし突然、教室の床から魔法陣のような模様が現れ、そこから放たれた謎の眩しい光に包まれ、意識を失った。
暫くして目を覚ますと、彼らは王宮のような室内の石造りの床の上に倒れていました。声のする方を向くと、そこには高級なピンク色のドレスを着た10代後半の王女らしき美しい金髪の女性が立っていました。
その他にも、中世の風貌をした大臣らしき中年男性の貴族、ローブを身にまとう魔法使い、西洋の剣を腰に帯びた甲冑の騎士らしき近衛兵が40人以上も、『二年A組』の生徒たちを期待に満ちた眼差しで見つめていた。彼らの姿はまるで物語の中から飛び出してきたかのようだった。
「へっ⁉」
「此処、何処だ⁉」
「俺達教室で授業やっていた筈⁉」
同じ学年の全員が、この謎の出来事と現在の状況を理解できずに動揺している中、王女らしい美女が歩み寄り、自己紹介を始めた。
「異世界の皆さま、初めまして。私は【聖王国アルマティア】の第一王女であり、『王国軍第一騎士団団長』の『フィーネス・アルマティア』と申します。
皆さまが動揺するのも無理はありません。ここは皆さまがお住まいだった世界とは異なる世界なのです
現在、私たちの国は【新魔王軍】と呼ばれる、魔族と魔に堕ちた3種の亜人、獣人族・竜人族・エルフ族で構成された軍によって、滅亡の危機に瀕しています。
国王である私の父も直接戦地に赴き、魔王軍と戦い続けてきましたが、四天王の一人との戦いで命を落としました。
しかし、父はその最期に私に、城の地下に封印されたある物を使ってくれと頼んでくれました。
すると、フィーネス姫は、神聖な装飾が施された一冊の本を取り出した。
「これは『勇者召喚の魔導書』と呼ばれる、この世界で禁忌指定された古代の魔導具の一種です。
私たちはその本に記されていた古代魔術を用いて、皆さまを召喚致しました。
ですがご安心ください、新魔族軍を率いる災厄の王【《魔王》】を討伐してくれた際には、皆さまを元の世界に帰還させることを約束します」
(まさか!? これはライトノベルや漫画、アニメで有名な【《異世界召喚》】というもので、世界を救うために俺たちを召喚したということか⁉️)
「ま…マジかよ‼」
「そんなの…急に言われても……」
「父さんと母さんが心配しているかも……」
「い、嫌だ‼ 家に帰らせてお願い‼」
「これは夢だ‼ 俺は今、机の上で居眠りして……‼」
「やった、やった‼ 夢にまでみた異世界だ‼」
フィーネス姫の説明を聞いた大智は驚愕するが、同級生の中には、未だに信じられない者、戦ってくれと頼まれて戸惑う者、父親や母親に心配されているのかもしれないと考えている者、家に帰りたいと泣きながら懇願する者、今起きている出来事が全て夢だと思い込む者、異世界に来たことにテンションを上げる者、その他大勢のクラスメイトがこの異常な状況にざわついていた。
「早速で恐縮ですが、皆様のステータスとスキルを鑑定させていただきます…鑑定士よっ!」
「はっ!!」
王女に呼応して、両手に水晶玉を抱えたフードを被った老人が現れた。
老人はすぐに生徒を一人ずつ鑑定し始め、水晶からウィンドウのような画面が表示された。
金髪陽キャで野球部の男子『金田 一雄』
Lv1(最大Lv1000)
攻撃力S+ 防御力B 知力E 体力D 俊敏さS 魔力C 運B
★5【
物理攻撃が有効の相手をたった一撃で倒す
背低めで大人しい美術部の女子『小波 絵美』
Lv1(最大Lv1000)
攻撃力B 防御力C 知力A 体力E 俊敏さD 魔力S+ 運S
★4【
描いた絵をモンスターとして具現化させて使役する
小太りで優しい料理部の男子『田山 健司』
Lv1(最大Lv1000)
攻撃力C 防御力E 知力B 体力A 俊敏さD 魔力B 運S+
★4【
倒した相手からレア度の高いアイテムを落とさせる
黒髪ポニーテールで凛々しい剣道部の女子『蒼崎 美沙』
Lv1(最大Lv1000)
攻撃力S 防御力C 知力A 体力D 俊敏さS+ 魔力A 運B
★5【
リヴァイアサンの魂が宿る武具を生成する
茶髪ツインテールギャルで帰宅部の女子『安藤 喜代』
Lv1(最大Lv1000)
攻撃力A+ 防御力S 知力C 体力B 俊敏さB 魔力C 運A
★4【
神聖属性の力が宿った炎を生み出し、敵の悪意に反応して炎の強さが増していく
黒髪天パで動物が大好きな飼育部の男子『桐島 塔矢』
Lv1(最大Lv1000)
攻撃力S+ 防御力S 知力B 体力A 俊敏さC 魔力D 運B
★5【
体の一部を様々な神獣の部位に変換する
一人ずつ鑑定されて、目の前のウィンドウ画面に表示されていく皆のステータスとスキルは、まさに神に授かったと確信するほど優れたものばかりだった。
王女様によれば、この世界の人々の最大レベルは500までが限界であり、ステータスの中でもレベルA以上は存在しないこと、スキルのランクも★4以上は存在しないようだ。
このような高い最大レベルやステータス、スキルは異世界の住人に特有のものであり、さっきまで転移されたことに動揺していた者たちも、自らがどのようなステータスやスキルを持っているのかを知ると、「俺達にも凄まじい力が備わっているのか‼️」と大いに興奮していた。
しかし、大智はある不安に苦しんでいた。
彼は、元の世界で大人気の異世界ものジャンルの一つ『クラス転移モノ』と同じ展開が続いていることに不安を感じていた。冒頭では、主人公の鑑定が最後に回ってきて、表示される『ステータス』は非常に低く、『スキル』は役立たずのものだと周囲に認識されるのが通例だ。その後は、生存困難な地域か
彼がそう考える理由は、自分の番がいつまで経っても来ないことに対する被害妄想のようだ。
(いや、まだ大丈夫だ…。未だに鑑定されていない同級生たちは半分以上残っている‼️ 私の番がきっとやってくるはずだ!!)
□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■
「それでは最後の方、ステータスとスキルを鑑定しますので、どうぞ前に来て下され」
「……はい」
やっと自分が鑑定される番が来て、呼ばれた大智は不安そうな声で応え、鑑定士の前に歩んだ。
なぜ彼が不安そうなのかというと、最悪なことに、同級生の中で鑑定を受けるのが最後になってしまったからだ。
「…………………………!!」
鑑定士によって調べられていく大智のステータスとスキル、鑑定が終わると、水晶の窓から彼のステータスが表示された。
『広樹大智』
Lv1(最大Lv1000)
攻撃力E 防御力E 知力B 体力E 俊敏さE 魔力E 運E
大智の予想は的中していた。彼のステータスは、知力以外は全てEランクというまさかの結果だった。
「こ、このステータスは⁉」
「いくら何でもこれは……」
「平民よりもかなり低いぞ⁉」
「こりゃ戦闘は期待出来ないな」
貴族や近衛兵たちは、大智のステータスの数値を確認すると、その低さに非常に落胆した。
「いくら何でも低すぎるでしょ」
「おいおい、そんなこと言うな。可哀想だろ」
「俺より弱いんだから」
「足手まとい確定だな」
同じくステータスを確認した同級生たちは、彼を馬鹿にし、笑ったり、勝ち誇ったりしていた。
(いくら何でも、知力以外の能力値が全てFなんて信じられるか⁉ 今までの人生、もしくは前世で何か悪いことでもしたのかな!? )
大智は自らのステータスの低さにがっくりと落ち込み、深い絶望に沈むほどのショックを受けていると……
「……お待ち下さい!! 皆様…この者のスキルをご覧下さい!!」
鑑定士が大智の技能を確認すると、驚きの表情を浮かべ始め、姫様や貴族、そして近衛兵全員に急いでスキルが表示されるウィンドウを見せた。
★6【
自己が味方と認識した他の対象全てのステータスの数値を最上級まで引き上げ、スキルを最高レベルまで強化し、遠隔通信を可能にする能力を持つ
『………うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!』
「「「「「「!?」」」」」」
「何ていうことだ!!」
「まさかこんなことが!!」
「あの伝説のスキルを持つ勇者が現れようとは!!」
「女神は我々を見捨てていなかったようだ!!」
「これで魔族軍に勝てるぞ!!」
「希望が見えてきたぞ!!」
大智のステータス画面に表示されたスキルを調べた貴族や近衛兵たちは、沈黙した後、一斉に王宮全体が騒然となり、同級生たちも突然の出来事に困惑していた。
「広樹大智様…女神様があなたに授けたこのスキルについて今からご説明致しますので、よく聞いて下さい」
「は…はい?」
大智がなぜ貴族たちがこのスキルに興奮しているのか疑問に思っていた時、フィーネス姫が声をかけてきた。
「このスキルは240年前、今よりも遥かに強い『旧魔王軍』によって、旧アルマティア王国は滅亡の危機に瀕していました。
しかし、突如現れた1人の英雄の協力で、『旧魔族軍』を打ち破りました。
それがあなたと同じスキル、『
(マジか!? この強化系スキルがこの異世界で最強なのか!? しかも過去の英雄と同等のスキルだなんて信じられない!? )
「嘘だろ!! アイツが!?」
「あんなに低いステータスでも、スキルの力で帳消しになっちゃうじゃねーか!!」
「頼りがいがあるな!!」
「始めから最強だなんて羨ましい!!」
「いいなー!! 私もそんなのだったら良かったのにー!!」
「これならすぐに魔王倒して元の世界に帰れるかもしれねー!!」
「笑って馬鹿にしてすみませんでした!!」
大智が最強であることを知った同級生たちは彼に称賛し、羨ましがったり、馬鹿にしたことを謝罪した。
(まさか、こんな冴えない俺が……『異世界にクラス転移されたら、最初から勝ち組で最強でした』なんて…こんなにも生まれてきたことに感謝する日が来るなんて、神様、ありがとうございま……)
「ちょっと待て!! こんな陰キャが最強なわけねーだろ!! 最強はこの俺だ!!」
感激している最中、一人の同級生が『俺が最強』だと名乗り出てきた。
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