プログラマン (旧タイトル)異世界にクラス転移されたら、最初から勝ち組で最強でした

月海月

第0章 クラス転移編

第1話 突然の異世界召喚

「私達の世界『オプティム』にようこそお越しいただきました。勇者の皆様、歓迎いたします」


 その声は、まるでどこからともなく響いてくるようだった。目が覚めると、そこは豪華絢爛な王宮。きらびやかなシャンデリアが煌めき、厚手の絨毯が足裏に吸い付く。


「この者達が我らの世界を救う勇者か‼」

「何とも勇壮なお姿だ‼」


 王女様らしき女性の声に続き、騎士たちが一斉にこちらを見上げる。その視線はまる で、動物園の動物を見るような好奇心と期待感を孕んでいた。


「……はぁ? 現実か夢か、それとも悪夢か。一体何が起こってるんだ?」


 平凡な高校生、広樹大智は、目の前の光景に言葉を失った。ほんの数分前まで、数学の先生が黒板に数字を書き殴っていたはずの教室が、いつの間にか豪華絢爛な王宮へと変わっていたのだ。


「おいおい、冗談だろ…」


友だちの顔を見れば、みんな同じようにパニックになっている。


「ここどこだよ!」

「俺たち、なんでこんなところにいるんだ!」


そんな彼らの不安をよそに、王女様らしき女性が優雅に歩み寄ってきた。


「異世界の皆様、ようこそ。私はこの国『アマルティア王国』の第一王女、フィーネス・アルマティアです。皆様が驚かれていることと思います。ご安心ください。これは夢でも幻でもありません。あなた方は、この世界を救うために召喚された勇者なのです」


 フィーネスは、まるで演説をするように堂々と話し始めた。しかし、生徒たちは彼女の言葉を信じようとしていなかった。


「え、勇者? 俺らが?」

「冗答でしょ。数学のテスト前なのに…」


「はいはい、わかったよ。でもさ、なんで俺たちをこんなところに連れてきたんだよ」


クラスのムードメーカーがそう言うと、他の生徒たちもそれに同調し始めた。


「そうだよね! 俺たちはただ普通の高校生なんだよ!」

「こんなところに来たくなかった!」


しかし、フィーネスは動じない。


「ごもっともです。しかし、この世界は今、大きな危機に瀕しているのです。邪悪な魔王軍が国を侵攻し、人々は苦しんでいます。あなた方こそが、この危機を救うために選ばれた勇者なのです」


フィーネスの言葉に、生徒たちはさらに混乱を深めた。


(勇者? 魔王軍? はぁ? 一体全体、どういうことだよ…)


 大智は、頭の中がぐるぐる回転しているように感じた。まるで、洗濯機に詰め込まれた猫のように。


「ところで、皆さんのステータスを鑑定させていただきます」


「ステータスって、ゲームみたいだな」

「RPGの主人公みたいじゃん」


 フィーネスの言葉に、生徒たちは再びざわめき始めていると、両手に水晶玉を抱えたフードを被った老人が現れた。鑑定士は、水晶の玉を一人ひとりの額に当てると、その人物のステータスが透明なパネルに表示された。ステータスとは、その人物の能力値を示すもので、攻撃力、防御力、知力、体力、俊敏さ、魔力、運の7つの項目で構成されている。


金髪陽キャで野球部の男子『金田 一雄』

Lv1(最大Lv1000)

・攻撃力: S+

・防御力: B

・知力: E

・体力: D

・俊敏さ: S

・魔力: C

・運: B

一撃必殺ワンキルストライク】(★5攻撃系超技能スーパーアタック・スキル

Lv1(最大Lv10)

物理攻撃が有効の相手をたった一撃で倒す


背低めで大人しい美術部の女子『小波 絵美』

Lv1(最大Lv1000)

・攻撃力: B

・防御力: C

・知力: A

・体力: E

・俊敏さ: D

・魔力: S+

・運: S

絵画現界アート・リアライザー】(★4召喚系超技能スーパーサモン・スキル)Lv1(最大Lv10)

描いた絵をモンスターとして具現化させて使役する


小太りで優しい料理部の男子『田山 健司』

Lv1(最大Lv1000)

・攻撃力: C

・防御力: E

・知力: B

・体力: A

・俊敏さ: D

・魔力: B

・運: S+

高級品落としハイパー・レアドロップ】(★4幸運系超技能スーパーラック・スキル)Lv1(最大Lv10)

倒した相手からレア度の高いアイテムを落とさせる


黒髪ポニーテールで凛々しい剣道部の女子『蒼崎 美沙』

Lv1(最大Lv1000)

・攻撃力: S

・防御力: C

・知力: A

・体力: D

・俊敏さ: S+

・魔力: A

・運: B

海龍ノ霊具アストラルウェポン・リヴァイアサン】(★5創造系超技能スーパークリエイト・スキル)Lv1(最大Lv10)

リヴァイアサンの魂が宿る武具を生成する

 

茶髪ツインテールギャルで帰宅部の女子『安藤 喜代』

Lv1(最大Lv1000)

・攻撃力: A+

・防御力: S

・知力: C

・体力: B

・俊敏さ: B

・魔力: C

・運: A

攻撃力A+ 防御力S 知力C 体力B 俊敏さB 魔力C 運A

裁きの聖炎フレイム・ジャッジメント】(★4属性系超技能スーパーエレメント・スキル)Lv1(最大Lv10)

神聖属性の力が宿った炎を生み出し、敵の悪意に反応して炎の強さが増していく


黒髪天パで動物が大好きな飼育部の男子『桐島 塔矢』

Lv1(最大Lv1000)

・攻撃力: S+

・防御力: S

・知力: B

・体力: A

・俊敏さ: C

・魔力: D

・運: B

神獣変化メタモル・ディヴァインビースト】(★5変化系超技能スーパーチェンジ・スキル)Lv1(最大Lv10)

体の一部を様々な神獣の部位に変換する


「え、俺の攻撃力、C!? どんだけ弱いんだよ!」

「逆に、魔法使いの奴、魔力がS+だって!ズルい!」


生徒たちの間では、自分のステータスについて様々な声が飛び交っていた。


 だがその裏腹に、大智はある不安に苛まれていた。


 彼は、元の世界で大人気の異世界ものジャンルの一つ『クラス転移モノ』と同じ展開が続いていることに不安を感じていた。


 冒頭では、主人公が鑑定される番が最後で、表示された『ステータス』は非常に低く、『スキル』は役立たずのものだと周囲に認識される。その後は、生存困難な地域か迷宮ダンジョンに強制的に追放されるというのがお約束の展開とされている。


 彼がそんな風に思考する理由は、自分の番がいつまで経っても来ないことに対する被害妄想のようだ。


 (いや、まだ大丈夫だ…。未だに鑑定されていない同級生たちは半分以上残っている‼️ 私の番がきっとやってくるはずだ!!)





□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■




「それでは最後の方、ステータスとスキルを鑑定しますので、どうぞ前に来て下され」

「……はい」


 遂に大智の番が来た。呼ばれた大智は不安そうな声で応え、鑑定士の前に歩んだ。


 なぜ彼が不安そうなのかというと、最悪なことに、同級生の中で鑑定を受けるのが最後になってしまったからだ。


 緊張しながら鑑定を受けると、自分のステータスが表示された。


「……え?」


『広樹大智』

 Lv1(最大Lv1000)

・攻撃力: E

・防御力: E

・知力: B

・体力: E

・俊敏さ: E

・魔力: E

・運: E


 大智のステータスは、他の生徒と比べて圧倒的に低かった。まるで、ゲームの初期キャラクターのような状態だ。


「おいおい、冗談だろ…」


大智は、自分の無力さを痛感した。


「こ、このステータスは⁉」


 大智の視界は真っ白になった。まさか、自分がこんなにも無力な存在だったなんて。今までの人生、運動神経は良い方だと思っていたが、まさか他の能力がこれほど低いとは。頭の中は真っ白で、これからどうすればいいのか、全く見当もつかない。まるで、砂漠に置き去りにされた一滴の水のようだった。


「……お待ち下さい!! 皆様…この者のスキルをご覧下さい!!」


鑑定士の声が、遠くから聞こえてくるようだ。


★6【全てを統率する者パーフェクト・グランド・マスター

 自己が味方と認識した対象全てのステータスの数値を最大限まで引き上げ、スキルを最大レベルまで強化し、遠隔通信を可能にする能力を持つ強化系究極技能アルティメットブースト・スキル


「何ていうことだ!!」

「まさかこんなことが!!」


王宮全体が騒然となった。まるで、蜂の巣を突いたような騒ぎだ。


「広樹大智様…女神様があなたに授けたこのスキルについて今からご説明致しますので、よく聞いて下さい」


フィーネス姫の言葉が、大智の耳に届いた。しかし、彼の頭の中は、まだ混乱していた。


「このスキルは240年前、今よりも遥かに強い『旧魔王軍』によって、旧アルマティア王国は滅亡の危機に瀕していました。しかし、突如現れた1人の英雄の協力で、『旧魔族軍』を打ち破りました。それがあなたと同じスキル、『全てを統率する者パーフェクト・グランド・マスター』です!」


「嘘だろ!! アイツが!?」

「あんなに低いステータスでも、スキルの力で帳消しになっちゃうじゃねーか!!」


 同級生たちは、一斉に大智の方を指さし、騒ぎ始めた。まるで、自分が怪物でも見たかのように。


(まさか、こんな冴えない俺が……)


大智は、自分の運命の変わりように、まだ現実感がなかった。しかし、周囲の反応を見る限り、これは紛れもない事実なのだ。


「ちょっと待て!! こんな陰キャが最強なわけねーだろ!! 最強はこの俺だ!!」


一人の同級生が、そう叫んだ。その声は、どこかヒステリックに聞こえた

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