第2話 茶屋の魅力

翌日、清二は再び桜井茶屋を訪れることに決めた。朝の陽射しが眩しく、清々しい風が函館の街を吹き抜けていた。清二は前日に感じた茶屋の魅力と、薫との会話を思い返しながら、足早に向かった。


「おはようございます。」清二は暖簾をくぐりながら挨拶した。


「おはようございます、山田さん。」薫はにこやかに迎え入れた。


「今日は少しゆっくりさせてもらおうかと思って。」清二は席に着きながら、昨日と同じようにお茶を頼んだ。


薫は慣れた手つきでお茶を点て始めた。静かに流れる水音と、茶器のぶつかる音が心地よい。清二はその様子を見ながら、ふと質問した。


「薫さん、この茶屋はどんな歴史があるんですか?」


薫は一瞬考え込んだ後、静かに語り始めた。「この桜井茶屋は、私の祖父の代から続いております。初めは小さな茶屋でしたが、次第に多くの方々に愛されるようになりました。」


清二は薫の話に耳を傾けながら、ノートを取り出してメモを取った。「それは素晴らしいですね。今では地元の人々にとって、欠かせない場所になっているんでしょう。」


「ええ、皆様に支えられてここまで来ました。」薫は少し照れたように微笑んだ。


「お茶の道具や茶器も、かなりこだわりがあるように見えますね。」清二は周りを見渡しながら尋ねた。


「そうですね。祖父の代から受け継いできたものも多く、今も大切に使っています。」薫は丁寧に茶器を扱いながら答えた。


清二はその一つ一つの道具に込められた歴史と愛情を感じ取り、ますます興味を引かれた。彼はカメラを取り出し、茶屋の風景や薫の点てるお茶の様子を撮影し始めた。


「写真を撮らせてもらってもいいですか?」清二は許可を求めた。


「もちろんです。どうぞご自由に。」薫は快く承諾した。


清二は慎重にアングルを調整しながら、薫が茶を点てる瞬間や、茶器の細部を撮影した。彼のカメラには、薫の真剣な表情や茶室の落ち着いた雰囲気が鮮やかに写し出された。


「ありがとうございます。とても美しい写真が撮れました。」清二は感謝の意を込めて言った。


「それは良かったです。少しでもお役に立てれば嬉しいです。」薫は穏やかに微笑んだ。


その後、清二は薫とさらに話を続け、茶道の心得や茶屋の日常についても聞いた。薫は内気ながらも丁寧に答え、清二との会話を楽しむ様子が見て取れた。


「清二さんは、東京ではどんな生活をしているんですか?」薫は興味津々で尋ねた。


「僕は新聞社で記者をしています。色々な場所に取材に行ったり、記事を書いたりしています。」清二は自分の仕事について語った。


「それは素敵なお仕事ですね。たくさんの人と出会い、色々な話を聞けるんですね。」薫は感心した様子で言った。


「そうですね。それがこの仕事の魅力です。」清二は嬉しそうに答えた。


二人の会話は次第に親密になり、お互いの生活や夢について語り合うようになった。薫は清二の情熱と知識に触れ、自分ももっと多くのことを知りたいと感じ始めた。


「また来てもいいですか?」清二は帰り際に尋ねた。


「もちろん、お待ちしております。」薫は笑顔で答えた。


こうして清二と薫の間には、少しずつ信頼と友情が芽生え始めていた。清二はこの茶屋と薫との出会いが、自分の取材にとって大きな意味を持つことを確信し、次の訪問を心待ちにするのだった。

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