異世界ゲテモノメシ

pcラマ

第1話 空腹

小学生の頃、将来の夢を語る時間があった。皆が、パティシエなどなりたい職業を言っていたが、俺は「会社員になって、普通に結婚して、普通に幸せになりたいです。」といった。

皆、そんなのつまんない、などと言ったが、普通の幸せほどかけがえのないものはない。

そう思っていた。

だが、俺は思いもしなかった。

自分の人生がそれ以下になろうとは。




20歳になった誕生日、俺は死んだ。




…死んだ後は、結局意識はなくなりそのまま暗い闇に堕ちていくのだろうと思っていたが、実際は緑の広がる神秘的な空間で目を覚ましたのだった。





「…ああ、迷える人の子よ、貴様は選ばれました。」


人生で初めて酒に酔った後、外に出た後、まばゆい光に包まれた。…と思ったら、広がる庭園の中で羽の生えた女性に抱かれていた。


いや、(意味深)ではない。

驚いて顔を上げたのでお互いの唇が合わさってしまうかと思われたが、彼女は華麗に避けた。

少し残念である。

彼女は、白いベールにつつまれたような格好で、白い髪で肩にはつかず、耳より少し長いぐらいであり、いろいろと白づくめである。


「選ばれし貴方を、異世界にお送りいたしましょう。」


「…は?」


突然の出来事に、口をパクパクとするしかなかった。


「選ばれたって…、え?」


「一つだけ、異世界に行くために能力を授けましょう。…能力だけでなく物でもよいです。一つだけ、なんでも差し上げましょう…。」


「いや、あの…、」


一体なんだ、この状況は。ここはどこだ。この女性は一体誰なんだ。

急に異世界だなんだといわれても困る。

さっきまでの生活はどうなる、てか、俺が選ばれたって何


頭に疑問符が6つはついていたが、今俺を抱いている女性は、にこやかに笑うだけで何も言わない。


…能力か、物…。ほしいもの…金としか言えんが、でも一つだけというなら金をもらうのは少し惜しい。

異世界ものでよく見るのは、チート能力で女の子からのウハウハだとか、ゴミ能力だと思ったらとんだぶっこわれ能力でした、みたいなやつだからもらえるものならもらいたい。だが、あまり複雑なものは苦手だ。もっと単純なものがいい。


「じゃあ、世界で一番の魔力量がほしい。」


「かしこまりました。」


「では、あなたを異世界にお送りします。良い異世界ライフを!」


そんなことばで、俺はあっさりと異世界へと送られるのであった。

…まあ、選ばれたといってもこんなものか。

だが少し楽しみな自分がいる。…普通が良い、そういったが、でも、もし「特別」になれるチャンスがあれば俺はそれに期待するし、縋り付いてしまう。…まあ人間とはそういうものだ。


だから人間は愚かなのだろう…。



あの能力の選択がそもそも大間違いだったことに気づきもしなかったのだ…。






異世界に送られてから、約三日が経った。目が覚めたのは荒野であり、送ったやつは俺を殺す気満々じゃないかと滂沱の汗を流したが、結局町に入るまで魔物に出会うことはなかった。荒野じゃあ、たとえ怪物であろうと生きるのは難しいらしい。

そして、町についたのが今日である。

「さすがに、腹が減った…。」


だが一文無しである。神様は能力だけを与え、他には何もくれなかったらしい…。ただ一ついうなら、言葉が理解できるというだけだ。

まあ、それだけでも随分と助かるが。

さて、食料をどうするか。魔法でなんとかしたいところだが、魔法の使い方がよくわからない。

異世界ものでよくあるステータス表示。やってみようとして「ステータスオープン!」とかっこつけて言ったはいいものの、何も出ず一人顔を赤らめる羽目になった。


なんとか水だけは雨が降った時に口の中に収めた。…その後腹を下したのは語るまでもない。トイレ以外で用を足したのは幼少期ぶりだった…。


三日食わずに過ごすというのは…いやもう死にそう。

腹減りすぎて死にそう…。無料で何か食えないだろうか。

いやないか…。


大衆食堂にでも行って成り行きに任せるか?いや、異世界に行って三日で盗賊の仲間入りは御免だ。


あああー、どうするどうする、腹が減った!


そんな風にうねっている時、目の前にきのこの怪物が現れた。

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