第01話
「嶋野さん、僕とお付き合いしてください」
「ごめんなさい」
「どうしても無理ですか?」
「無理ですね。あなたは私のどこが好きなんですか?」
「ぜ、全部です」
「そうですか。ごめんなさい」
「わかりました」
そういって私に告白した男子生徒は校庭に戻ると
「やっぱりダメだったか」
友達の男子が告白してきた子に声をかける
「でも、一言だけ話せたから少しは脈あったなのかも」
私が気まぐれで聞いた質問でさえ、そうゆうとらえ方をされてしまう。
私はこの中学3年間で何度も告白されている。
先輩、後輩、高校生の人までたくさん告白されてきた。
もちろんどれも断ってきた。
恋愛になんか興味はないし、この人!!って思わない人と付き合うわけがない。
しかし、現実は面倒くさくて勝手に告白してきているくせに断ると悪いのは断った方になってしまう。
それでもっとめんどくさいのがその告白してきた男子のことを好きな女子が私に嫌がらせをしてきたり変な噂を流したりすることもある。
正直そうゆうの全部めんどくさくなって私は人と距離をとるようになった。
距離を取れば人と関わることもなくめんどうなことに巻き込まれないと思っていたのに、告白の回数は減ることがなくその後も何度も断ってきた。
「愛ちゃんも大変だね」
「本当に迷惑。なんで話したこともない人に告白しようと思うのかわかんない」
「まぁ今では愛ちゃんに告白するのがゲーム感覚になっている男子もいるよね」
「はぁ。男子って本当にくだらない」
「まぁまぁ」
人と距離を取るようになって友達はいないけど、さくらだけは私と変わらず対等で接してくれる。
中学3年間で唯一よかった点はさくらと一緒にいれていることぐらいで、他は特にいいことはない。
「でも恋愛って正直わからないよね。私も好きな子とかよくわからないんだよね」
さくらも男子からは告白はされている。
でもさくらは断り方がうまいのか、日頃の行いがいいのか変な妬みや噂は耳にしない。
中にはさくらのことを悪く言う人もいるのかもしれないけど一部だろう。
元々お母さんとお父さんは海外に仕事にいっていてお祖母ちゃんと暮らしているのもあるのか
「夫婦」っていうのが人よりもイメージがつきにくいんだと思う。
だから「恋愛」もだけど「結婚」とかに対して深く考えてこなかったんだと思う。
周りの女の子たちはカップルとか夫婦という言葉をよく使っているから普通の女の子にとっては憧れが強いんだろう。
でもそれは普通の人たちの感覚であって嶋野愛の感覚にはないことだ。
「いつか愛ちゃんも彼氏できるかな」
「どうだろう。さくらの方が彼氏いそうだよね」
「私ね~。なんか想像つきにくいけど高校生の間にそうゆう人に出会えたらいいなとは思う」
「私も自分がこの人!!って思う人と付き合えたらいいなとは思う」
可能性は低いとは思うけど。。と心の中で思っていたが口には出さなかった
「お祖母ちゃんただいま」
「愛ちゃんおかえり」
家に帰るとお祖母ちゃんは夜ご飯を作ってくれていた
お母さんとお父さんが家にいない分、お祖母ちゃんが私の親代わりになってくれている
「お祖母ちゃん手伝うことある?」
「そういえば、今日買い物言ってきたんだけどお味噌を買い忘れてきたから買ってきてくれるかい」
「味噌ね!わかった。他に欲しいものはない?」
「愛ちゃんが好きなお菓子買ってきていいよ」
「私もう中学3年生だよ。お菓子とか毎日食べなくていいから」
「ごめんなさい。お祖母ちゃんからしたら愛ちゃんはいつまでも可愛い子供なんだよ」
「はいはい。じゃぁいってくるね」
私は近くのスーパーに買い物に行く
「うちの味噌はこれだったかな」
家で使っている味噌を手に取る
味噌をレジに持っていこうとするとちらっと横目に駄菓子コーナーがあった
さっきお祖母ちゃんにあんなことをいったものの、実際に駄菓子コーナーを目にするとついみたくなる。
「わぁこれ懐かしい」
駄菓子コーナーには小学生の時によく食べていたお菓子が並んでいた。
懐かしのお菓子をみつけると残りが1つしか箱に入っていなかった。
「駄菓子」「残り一つ」私はこの誘惑に負けて手を伸ばしてしまった。
「あっ」
私が駄菓子に手を伸ばそうとすると同時に横から手が伸びてきて振り返ると、そこには小学生?中学生?ぐらいの女の子が立っていた。
私は伸ばした手を引っ込めて女の子にそのお菓子を渡した
「いいの?」
「いいよ」
「ありがとう」
女の子は可愛い顔でお礼を言ってくれた。
「真紀、今日は母さんとお菓子は買わないって約束しただろ」
すると女の子のお兄ちゃんがすぐにきた。
「だってこのお菓子好きなんだもん」
「ってお前も中学1年生だろ」
「いいじゃん。このお菓子好きなんだから」
可愛いなと2人のやり取りをみているとお兄ちゃんと目が合った
「えっと。。。」
お兄ちゃんは何か?みたいな顔をしている
「お兄ちゃん、このお姉ちゃんが私にお菓子を譲ってくれたの?」
「この駄菓子を?」
ふと考えてみると同年代の女子が駄菓子をとろうとしていたで引かれるんじゃないかと心配したが
「妹がすいません」
お兄ちゃんは普通に謝ってくれた
「いえいえ、私も興味本位で手に取ろうとしただけなので」
「それならよかった。真紀、母さんに頼まれたものはとってきたからレジにいこう。それとそのお菓子買うのはいいけど母さんには内緒にしておくように」
「わかった」
「ではこれで」
兄妹はレジに向かった。
私は自然とそれを見送っているとお兄ちゃんがふとこっちを振り返り歩いてきた
突然の出来事で私は少し身構えていると
お兄ちゃんは一つの駄菓子を手に取った
「これ、俺のおすすめの駄菓子なんです。多分俺と同じぐらいの年だと思うんですけど、たまにこうゆう駄菓子が食べたくなる時ってありますよね。よかったら食べてみてください」
私は言われるがままに駄菓子を受け取った
「ありがとうございます」
その駄菓子は私が今まで食べたことがなかったもので普段は手に取らないものだった
結局私は駄菓子も一緒に買って帰宅した
「ただいま。お祖母ちゃんお味噌買ってきたよ」
「ありがとう。あら愛ちゃんお菓子買ってきたのね」
袋の中の駄菓子を見つけたお祖母ちゃんは優しく微笑んだ。
私はこのお祖母ちゃんの笑顔が好きだったりする。
「美味しい」
私は夜ご飯前に気になっていた駄菓子を口にした。
味はとても美味しかった。
人と距離を置いているとどうしても自分中心になってしまうが、こうやって自分が普段手に取らないものを教えてもらうのはいいなと少し思った。
それにしても私は一人っ子だからお兄ちゃんみたいな感覚はわからないけど、あの男の人は優しなと思った。あと妹が普通にめちゃくちゃ可愛かった。
「さくら、私高校生になったらもう少し人と関われたらいいなと思う」
「どうしたの急に?」
「昨日可愛い兄妹に出会えたんだけど、そのお兄ちゃんからおすすめのお菓子を教えてもらって食べてみたらすごくおいしかったの。なんか自分では絶対に選ばないやつで、人と関わるってこうゆうこともあるのかなと思ったら少しいいなって思ったかな」
「愛ちゃんがそんないうの珍しいね。そのお菓子私にも教えて」
「いいよ~」
人が変わるきっかけは本当に何気ないことだったりすると思う。
私にとって考えるきっかけは「駄菓子」だった。
でもそれで変われるのなら理由なんてどうでもいいんだと思う。
少しだけ高校生が楽しみになった。
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