第2回短歌・俳句コンテスト【俳句二十句部門】~二本松藩士らに捧ぐ~【解説編】

篠川翠

春の句(その1)

 コンテストの規定上、二十句部門は1エピソードしかつけられないことになっております。

 私の場合、現代句ではなく「文語調」が基本なので、やはりバックボーンの解説は欠かせないかなあ……と。

 そんなわけで、それぞれの句について解説を加えてみたいと思います。

 まあ、「俳句解説」エッセイとして気楽にお楽しみ下さいませ。


 ***


〈菜の花や旅人たびとの足を照らしをる〉


 これは、今年の春に二本松に取材兼花見に行ってきた際の実景からです。場所としては、二本松城(霞ヶ城)裏門の方にある、「西谷にしだに」の光景より。

 近年人気上昇中のスポットだということですが、私が訪れたときは一面に菜の花が咲き乱れていました。

 何でも、丹羽にわ光重みつしげ公が二本松にやってくるまでは、奥州街道はこちらの霞ヶ城裏門の方を通っていたのだそうです。それが、光重公の命令により、奥州街道は城の様子が伺えない松岡町や本町方面(現在のJR東北本線沿い)を通るように、街道の「付け替え」が行われました。

 ですが、古の旅人らは昔の「奥州街道」の菜の花畑や城の山桜、そして遠くには安達太良連峰の雪嶺を見て楽しんだのではないでしょうか。

 そんな想像からの一コマです。


 ***


昔日せきじつの子らも摘みけむ紫雲英れんげそう


 これも、実景からの句です。

 同じ日、霞ヶ城を散策していて「蓮華草」があちこちに咲いていたのが印象的でした。

 レンゲはよく俳句の題材にも使われると思うのですが、どういうわけか、私の周りでは「レンゲ畑」を見たことがありません。

 私もレンゲの花を見たのは、久しぶりでしょうか。

 女の子が「花冠」を作る際のアイテムとしても重宝しますが、昔の子どもらも、「おままごと」の素材?やその他諸々の子供の野遊びのツールとして、摘んだのではないでしょうか。

 そんな想像からの一コマです。


 ***


〈かたかごや俯向く顔の愛しけり〉


「かたかご」とは、「片栗かたくり」の古名です。薄紫色の花で、文字通り「俯向くように」咲くのが特徴。

 俳句の世界では「安易な比喩」はだめらしいのですが、見ようによっては、「乙女が恥じらっている」ようにも見える花です。霞ヶ城の敷地内にある、「るり池」のほとりに咲いていました。

 花言葉は、「初恋」。正に、花言葉のような愛らしさを秘めた花です。


 ※余談ですが、お料理で使う「片栗粉」は、本来はこの片栗の根を精製してデンプン質だけを取り出したもの。

 今では、じゃがいもデンプンで代用されていますが……。

 山菜としても、美味です。


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