クラスごと異世界に召喚されたら、ひとりだけバイオロイドでした
蟹蔵部
第1章 召喚されたらバイオロイドでした
第1話 種族がバイオロイドってなってるんですが間違ってませんか?
「ようこそ勇者様がた!」
そう大声で告げるのは、豪奢なローブを着た中年のおっさん。おっさんの他には、金属製の胸当てと剣を装備した男が20人ほどいて、こちらを取り囲んでいる。
一体何が起こってるんだ?
ついさっきまで、高校で数学の授業を受けていたはず。それが気付いたら、石造りの大広間でクラス全員が突っ立っていた。あ、数学の先生はいない。
俺たちは誰一人声を上げることも出来ず、呆然としていた。いやー、本当にびっくりした時って思考が固まるんだな。
「まずは〈ステータスオープン〉と唱えてください!」
ステータスオープン? なんだか嫌な感じがするな。
『〈オープン〉は除き、〈ステータス〉だけ唱えることを推奨』
そう、それだ。なんで〈オープン〉しないとダメなんだ。オープンってことは開示するってことだ。おそらくステータスとは個人情報だろう。それをこんな見知らぬおっさんに開示したくない。
(〈ステータス〉!)
意思を込めて、脳内で〈ステータス〉とだけ唱えてみた。
――――――――――――――――――――
名前:シンゲン・シオノ
年齢:17
種族:バイオロイド
魔法:なし
スキル:なし
――――――――――――――――――――
おっふ。え、ちょっとステータスさん? 種族がバイオロイドってなってるんですが間違ってませんか?
周りで〈ステータスオープン〉をしているクラスメイトたちは、案の定、誰でも見える形でステータスが表示されている。
こっそり盗み見てみたところ、全員種族は人間だった。バイオロイドのクラスメイトは俺以外いない。うん、当たり前だよね。
加えて、俺には無い魔法やスキルがあった。
魔法でいえば、火魔法や水魔法などの属性っぽい魔法、補助魔法や結界魔法などのちょっと変わり種。有名処の回復魔法もあった。
一方スキルは、剣術や槍術などの武器系、索敵や気配察知、身体強化などの補助系って言えば良いのかな? なんとなく肉体に関するものがスキルみたいだ。
翻って俺のステータスは、魔法もスキルも無し。
うーん。これはあまりよろしくない予想が立つな。
『アクティブステルスを起動し、離脱を推奨』
あとコレ。最初はスルーしたんだけど、脳内に響くこの声はなんだ。
『補助電脳の管理人格です。名称、未定。学習の効率化のため、命名を推奨』
否応なくバイオロイド疑惑を確定させにくるのを止めなさい。まあ、名前を付けろって言われるなら付けるけどさ。
声の高さからして女性っぽい感じだ。彼女ができる前に、まさか女性の名前を考えるとはな。
『うーん……。「シオン」なんてどうだ?』
『命名「シオン」を了承。学習意欲が20%向上しました』
学習の効率化って、そんな「やる気アップ!」みたいな精神的なものだったの? 変な名前にしなくて良かったぁ。「シオノ」に点を1つ足して「シオン」っていう名前の由来は一生黙ってよう。
『よし、シオン。相談タイムだ』
『思考加速剤を注入。加速倍率は300倍です』
おいぃ!? 何いきなり注入してるの!?
『資源不足のため、持続時間は1秒です』
ふぅ、落ち着けー。1秒ってことは、300倍したら5分か。長くもなく短くもない微妙な時間だな。
まずは情報の整理だ。
高校で授業を受けていたら、何らかの方法で拉致られて、ここに連れてこられた。どう見ても日本じゃないし、尋常な出来事でもない。
『地球との差異を確認。推定、異世界』
そうだよな。足元にもなんか魔法陣っぽいのがあるし。それで首謀者は、豪奢なローブを着たおっさんが有力か。
で、俺たちに〈ステータスオープン〉を唱えさせて、何かを物色している。
『有用な能力を探している可能性が高いです』
まあそれしかないよな。そして背後に見える大量の『鉄の輪っか』。どうみてもやばいです。それが無くても無許可で拉致してるだけで十分やばい。
で、そんな中に、種族バイオロイドで魔法もスキルも持っていないやつがいたらどうなると思う?
『推定。無能力を理由に廃棄、または、調査のため解剖』
物騒だな。特に後半。いやでも、自分じゃ良く分からんがバイオロイドなんて種族だからな。マッドな科学者なんかがいたら、目の色を変えて飛びついてくるだろう。
『アクティブステルスを起動し、離脱することを再度推奨します』
よし、シオンの言う通り逃げよう。
作戦を立てるぞ。
『残り思考加速時間は1分です』
ちょっぱやでな!
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