自動ドアが開く数秒、喧騒が流れ出してくる。

 転がってきた銀色の玉は、青年の靴に当たって止まった。

 なんてことはないパチンコ店の日常だ。左手で玉を掴み、台に流し込む中で、時折、一つ二つと零れ落ちるのだ。店の外まで出てきてしまうのは、かなり珍しいと言えるだろうが。

 自分のようだ、と彼は思った。

 十月の空は青く、高い。店舗入り口の前で煙草を咥え、火を点ける。そうして煙をふかしつつ、青年は心の中で問い掛けた。誰に対してだろうか? 分からない。彼自身も決めていなかったのかもしれない。


 ―――なあ、アンタ。

 ―――神様の悪戯って、信じるかい?


 店の中にいる客の大半は、普段は拝みもしない神様に祈っていることだろう。それもまた、パチンコ店の日常で、この国の風景の一部だ。

 そして、彼は。


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