不死の旅

mafuyu.

第1話 出会い

死ぬ時に未練となるような思いは僕にはあるのだろうか。

 これはただの僕と死にたい不死身の物語である。


「おい、早く起きるのだ!明示!」そう言って僕、不知火明示の上に乗りを起こしてきたのは、見た目では中学生ほどの女の子だ。名前はフラン。とは言ってもこれは僕が付けたもので、本当の名はしらない。本人も覚えていない。彼女は、もう何十年も前に死んでいるのだ。

 僕とフランが出会ったのは今から2ヶ月ほど前のことだ。春休みに、ある男から逃げているところ然出会った。

その男は除霊師である。名をロズと名乗っていたが本名かは分からない。彼女を庇う僕に「その子は幽霊だよ。無理やり祓う除霊師もいるけど僕は平和的に祓いたいんだけどね、話しかけただけで逃げられたから追っていたのさ。」と言った。

その男に聞いた話をまとめよう。死ぬ時に強い未練があるとその未練を果たすための能力を得て、実態がある霊としてこの世に残る。しかし生前の記憶をなくしてしまうらしく、何を果たすべきの能力なのかを覚えていないらしい。

霊を祓う方法は、未練を果たさせる、強制的に祓うの

2つだそうだ。ロズは平和的な未練を果たさせるのを基本にしているらしい。最も能力を使い悪事を働く霊もいるそうで、そういった霊を強制的に祓っているそうだ。

詳しい話を聞いた後、ロズは目にも止まらぬ速さで僕の横にいた彼女を、どこから出したかもわからない刀で切った。

 もちろん動揺したが彼女は治ったのだ。そう、彼女は不死身であったのだ。おそらく死に際に死にたくないと強く思って霊になったとロズは話した。だがなぜ死にたくなかったかを覚えていない彼女はもう死にたくないとは思っていない。そして死ねずに長い年月を過ごすうちに彼女は殺して欲しいと思うようになった。もう死にたくないと思っているから死なないことで未練は果たせないし、不死身だから殺せない。

「霊は長くいればいるほど霊力が高まるんだ。本人は望んでいないかもしれないがその力があるだけでいろいろと厄介なことになったりするからね。上から依頼されて僕が来たというわけさ。」

だが僕にも方法はわからないと続けた。そしてロズは僕をみて不思議そうにし、そして言葉を発する。

「君は、なぜかはわからないがとんでもない霊力がある、いやあ、こりゃとんでもないな。霊がやってきそうなものだけど今までは大丈夫だったのかい?」全く身に覚えがなかった。霊なんて存在今でも信じられないくらいだぞ。

「ふむ、なんとかしてやりたいけど人間なのは変わらなさそうだしどうしようもないか、それに僕もずっとここにいるわけではないしね。」

「そして君はそんな霊力をしていたら僕たちみたいな除霊師に襲われかねないよ。僕たちの祓う基準は実害の次は霊力だからね、ふむ。」少し考えるようにして僕をみてロズは言う。

「僕の方から君を指定対応外として組織に報告する、その代わりと言ってはなんだが、その子の面倒をみてはくれないか、君の元にはおそらく霊がよる。だが僕がずっといて守ることはできない。だから能力は不死身にしても霊力の高いこの子なら守れるかもしれないしね。それに、」ロズは続ける。

「不死身を殺すなんていうのは普通はできない。できるなら、この世の常識から離れた霊の能力だけだ。この子のためにも2人でいるのは悪くないと思うが、どうだい?」

 そうして僕はそれを受け入れたわけだ。なぜ放っておけない気がしたからだ。

 と、まあ説明してみたらトンデモ展開に目が回りそうになる。だがこれが全て事実なのは今の僕からしても驚きだが紛れもない真実だ。

 そしてこの2ヶ月の間にもう1人、

「いつまで寝ているの。そんなのだからいつまで経ってもミジンコ以下なのよ。死になさい。」

 この毒舌の赤髪の子はナキという。この2ヶ月で、まあ色々あって仲間になったんだ。ん?色々って?それはまた今度話すとしよう。

 ともあれ、今はこの3人で旅をしている。いろんな場所で霊に関する情報を仕入れ、その霊が不死身を殺せるような能力であるかを確かめる。

 そして未練を果たす手伝いをする。これはそういう人を見ると放っておけない僕の問題だろう。しかし2人とも何も言わず手伝ってくれる。

 霊が未練を果たして消えていく。少し悲しいが消えていく霊がとても幸せそうな顔をするのが僕は好きだった。

 さて、こうして始まった物語がどういう結末を迎えるのか。僕にもわからないし誰にもわからない。しかし僕たちは旅を続ける。その語りを始めようか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

不死の旅 mafuyu. @mafuyu21low

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る